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ヨハ十エド 3
「はあぁー!楽しかったぁー!!」
満足そうに叫んで、地面にどさりと倒れこむ、青緑色の髪をした少年。
その少年と同じようなタイミングで、もう一人の、赤い制服を身に纏う少年も地面に倒れた。
二人の笑顔はよく似たもので、これまでにあった出来事を本当に楽しんでやっていたのだと理解させるには十分だった。
そんな二人を立ったまま睨む、一人の少年。何かを言いたげに二人を見下ろしながら、何かとても不満そうに顔を歪めていた。
それに気付いた青緑の少年が、立っているままの銀髪の少年に目を移した。
「おーいエド、お前なんで立ったままなんだ?座れよー」
「……うるさいお気楽馬鹿コンビ。」
顔をぷいっと背ける。そのまま溜息をついた。
馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、まさかここまでデュエル馬鹿だったとは。迂闊だったとエドは思う。
青緑の少年、ヨハンと、赤い制服の少年、十代にデュエルをやろうとせがまれて、一回くらいならとさっさと折れた結果がこれだ。よく考えれば先刻までやっていたデュエルに、自分はずっと出場していた。
一回だと思っていた考えは甘く、いや甘すぎた訳で、最初にヨハン、十代の順で対戦、何とか勝利を収めたが、この二人のデュエルの腕はそこら辺のプロよりもよっぽど強いと感じる。実際、追い詰められていた。勝利を収めたのは自分の実力だと思っているが、運がよかったから、と言うことも十分にあり得るのだ。
しかもヨハンは負けると、「もう一回!もう一回だけやろう!」と、言い寄ってくる。その結果、「じゃあ俺も!」と十代が割って入り、結局は最初に逆戻り。
まぁ簡単に言って、エドは純粋に疲れていた。何故こんなにぶっ続けでデュエルを、しかもずっと同じ人間とばかりやっているんだと、デュエルをしながら虚ろに考えていた。
「エド、疲れてるんだよ。ずっとデュエルしてたから。」
十代が気付いたように、ヨハンに向き直る。ヨハンはそれを聞くと、納得したように頷いた。
「あー!そっかそっか!悪いなエドー」
「……わかってくれたなら別に良い。」
そう言って、歩き出そうとする。
「どこ行くんだ?」
「疲れたから船に戻って寝る。」
じゃあな、と進もうとしたら、二人に同時に足を掴まれて、エドは漫画のようなありえない転び方をした。
流石に本気で悪いと思ったのだろうか、十代とヨハンは驚いたような顔をした後、すぐに二人同時に立ちあがり、転んだまま起き上がらないエドに駆け寄った。
「ご、ごめんエド!大丈夫か?!」
「生きてるか?!生きてるか?!うわー本当にごめん!!」
「……お前らは僕に何か恨みでも持っているのか?」
くぐもった低い声が聞こえた。
「いや、疲れて寝たいんなら、ここで一緒に昼寝しようぜって思って…。」
「それで咄嗟に足を…。」
「なら口で言え!!一瞬本気で足がなくなったかと思ったぞ!!」
二人を見て怒鳴り声を上げるエドに、ヨハンと十代はしゅんとしながら『ごめんなさい』と謝る。
キッと吊り上げていた眉を少しずつ元に戻しながら、はぁとエドは再び溜息をつく。
十代とヨハンの間に座ると、地面に体を倒す。二人がキョトンとしていると、エドは二人を交互に睨みながら、
「僕はもうここで寝る。絶対起こすな。起こしたら思い切り殴る。十発殴る。」
短く、簡潔に念を押すと、エドは目を瞑って、そのまま小さく寝息をたててしゃべらなくなった。
少しの間、二人はポカンとしたままだったが、互いに目を見合わせて、似たような笑顔を浮かべた。
エドの隣にそれぞれ寝転ぶと、小さな声で、嬉しそうな声で、
「エドって良い奴だよな。」
「そうだな。」
十代とヨハンも、それぞれ目を瞑った。
何気ない事なのに、何故か、とても嬉しかった。
――――――――
なんかキャラの性格とかが全体的に迷子だが気にしない。しかもぐだぐだ
エドは「一緒に昼寝しよう」って言われたのが実は嬉しかった。だとかわいい。
十代とヨハンは何だかんだでエドが大好き。なのが理想。
特に意味のないはなし
「万丈目ーっ!!」
後ろから自分を呼ぶ叫び声が聞こえ、万丈目準は驚いて振り向く。
だが、誰も居ない。訝しげに思った万丈目だが、すぐにきっと空耳だと思い、目線を元に戻す。
その瞬間、後ろから走ってくるような足音が聞こえた。
万丈目が振り返るよりも先に、背中にドスンと大きな衝撃が走った。
「ぐえぇ!!」
「おっ、と!」
急に後ろから抱きついてきた少年に、万丈目はカエルの潰れたような声を出す。そしてその少年、遊城十代は、勢い余ってかバランスを崩し、万丈目と共に地面に派手に倒れた。
どちらもうつ伏せの状態だが、決定的に違うのは万丈目が十代の下敷きになっているという事だった。
「うあ~いってぇ。」
「……貴様より痛いのは俺の方だ。」
恨めしそうに下から十代を睨む。額を打ってしまったのか、ほんのりと赤くなっている。それを見た十代は、慌てて「ごめん!」と万丈目に謝った。
「さっさとどけ!」と叫ばれて、自分が万丈目の上に乗っかっていることにようやく気付いたようで、素早く万丈目の上から退く。少しふらつきながら立ち上がる万丈目に、十代は眉を下げる。
「ごめん、万丈目…。転ばせるつもりはなかったんだけど…。」
「転ばせるつもりだったのなら今すぐ殴っているところだ。」
服に付いた土埃を手で払いながら、「で?」と十代に向き直る。
当の十代は「え?」と返した。
「え?じゃないだろう。俺に用があったんだろうが。」
「よう…?いや、特に無いけど。」
「…………は?」
「…………え?」
意味がわからないというような万丈目の表情に対して、十代も「何が?」と言う感じの表情だった。
数秒間の沈黙が流れる。
今すぐこの馬鹿と叫んで殴りかかりたいところだが、拳をぐっと握って衝動を抑え込む。眉をぴくぴくと動かしながら、万丈目はゆっくりと十代に問いかけた。
「…貴様は、用がないのに意味も無くタックルしてきたのか?」
「いやぁ、特に何も考えてなかったんだよなぁ。『あ!万丈目だ!』って思って、つい。」
「つい。」と言った瞬間に、万丈目は十代の頭をぼかりと殴る。もちろん、グーでだ。
「いてっ!何すんだよ!」
「やかましい!意味も無く引き止めるな!」
「意味があったら良いのか?じゃあ一緒に昼飯食べに行こうぜ。」
「そういう問題じゃないっ!!」
ああもう!そう叫ぶと、万丈目はくるりと十代に背を向けて、さっさとどこかへ歩き去ろうとする。
「どこ行くんだよー。」そう言って後ろをついて行く十代に、「ついて来るな!」と怒鳴るが、十代は気にせず後ろをついて行く。
万丈目は頭をがしがし掻きながら、しかしそれ以上は何も言わなかった。
――――――――
あるとき、十万十が無性に恋しくなるのだ。
はつこいというものは に
ブルー寮の食堂の一席で、帝王と呼ばれていた男は黙々と食事をしていた。
だからと言って、飯にがっついているわけではない。言葉の通り、ただただ黙ったまま食べているだけだ。それでいて、食べるスピードは速くない。
彼の横顔は整っていて、食べている姿も様になるくらいの男前だ。現に、通りかかるブルー女子は亮をちらちらと忙しなく見たり、他の女子と何かきゃあきゃあと小声で騒いでいる。
それでも、彼に声をかける者はいない。それは彼が『帝王』とまで呼ばれた実力を持っているエリートであることもあるが、普通に座っているだけでも、その辺の人間にはない威圧が感じられる。決して恐ろしいものではないのだが、なにか、近付きがたいものがあった。
周りの生徒よりも1.5倍はゆっくりと食べている亮に、一人だけ、気楽に声をかける生徒がいた。
「やあ、亮。隣良いかな?」
「……吹雪。」
少し嬉しく思いながら、こくりと小さく頷くと、亮に負けず劣らずの整った顔をした男子生徒は、にっこりと笑って亮の隣の椅子に腰を下ろす。
吹雪の手には、小さい紙袋が握られている。その紙袋から、一つのパンを取りだし、口に入れる。
デュエル・アカデミア定番の、ドローパンだ。
もきゅもきゅと口を動かしながら、みるみると顔を険しくさせる吹雪を見て、亮はなんとなく察した。
「……最悪だよ、にんじんだった。」
「やはりか。お前の表情は分かりやすいな。」
「うぅ…亮、食べない?」
「すまないが、いらん。」
次からは半分に割ってから食べよう、と、吹雪は食べかけたパンを包み直す。
表情豊かでわかりやすい親友に、亮は小さく笑みを零す。
その親友は、すぐに二つ目のパンに取り掛かり始めた。いったい何個パンを買って来たんだと思い、紙袋を覗く。まだ10個ほどのパンが入っていて、「こんなにたくさん食べるのか」と目で伝える。
「…言っておくけど、全部が全部僕が買ったわけじゃないからね。」
「あぁ…そうなのか。」
「トメさんがサービスしてくれたのさ。まったく、人気者は辛いね!」
ふざけた口調ながらも、苦笑している。流石にこんなに購入する予定なんて無かっただろうから、全てをどうやって処分するか本気で考えているのかもしれない。
吹雪が、二つ目のパンを半分に割る。普通ならば中身が見えるのだが、そのパンには中身が存在しなかった。
吹雪はそれを見て「亮!」と少し嬉しそうに呼ぶ。
「具なしパンだよ!君、好きだったじゃないか?」
有無を言わさずに、手に押し付けられる。
「ありがとう」と、とりあえず礼を言って、パンを口に運ぶ。
具が入ってないパンのどこが良いんだろうなぁと考えながらも、口には出さない。まぁ、確かに食べても当たりハズレはないだろう。そんなことを思いながら、吹雪は三つめのパンの袋を開けていた。
既に食堂にいる生徒は僅かになり、そのほとんどが片付けを始めている。
悠長に食事をしているのは、きっと亮と吹雪くらいだろう。
「あ。」
黙々と具なしパンの味を楽しんでいる亮を見て、吹雪は不意に声を上げる。
どうした、と声を掛けようと、顔を上げた。
吹雪の指が伸びて来て、亮の頬にとん、と軽く触り、すぐに離れて行く。
一瞬で、亮の思考が停止した。
「パンくず、ついてたよ。君ってたまに子供っぽい所あるよね。」
可愛いなぁ、とくすくす笑う吹雪の姿が、亮には見えていなかった。
一緒に過ごすことなんて、一日の半分以上もあった。その大半は話すばかりで、触れたことなんて一度も無かったから。
急に無言で動かなくなった亮を見て、吹雪は訝しげに言葉をかける。
「亮?どうしたのさ。大丈夫かい?」
「……………あ、あぁ、大丈夫だ。何でもない。」
完全に動揺しているが、吹雪は気付いていない様子で、じゃあそろそろ教室に戻ろうか、と椅子から立ち上がる。亮も遅れて立ち上がり、先刻まで食べていた料理の食器を片付けに行く。吹雪が「外で待ってる」と、早々に食堂から出て行った。
食器を片付けた後、亮は自分の頬に触れてみる。内心、心臓が動悸を止めない。自分でも驚くほどに動揺している。相当重症なのだと、鈍い自分でもわかるくらい重症なのだと感じた。
小さく溜息をついた後、亮は頬に触れながら改めて実感した。
(…俺は、あいつに……吹雪に、惚れているんだな。)
――――――――
なにこの乙女なカイザー(爆
無駄に長くなってしまったにも拘らず、書きたかったのは後半の事だけなんだよ!もっとプラン立てろよ自分!
亮→吹とか、だらだらと続いて何の進展も無さそうですよね!だがそこがキュンキュンする
遊戯お誕生日
君は誰?君は何処?
いつの記憶なのかはわからない。でも、すごく楽しかったのは覚えている。
ロニと、自分。一緒に旅をして、色々な人に出会っていた。
遺跡のでっかいレンズから女の子が出てきたり、ロニが見知らぬ少女に関節技を決められていたり、両親であるスタンとルーティが使っていた『ソーディアン』の誕生の瞬間を見ていたり――
登場人物は実にさまざまだ。聖女と呼ばれた少女に、10年後の世界の住人、1000年前の天才科学者だったり……
嫌な場面も何度かあった。だけど、周りに居た、自分の仲間たちとの思い出の方が、よっぽどよっぽど強く印象に残っていた。夢の中だということも忘れて、現実にあったことなんじゃないかと思ったりした。
だけど、その夢に一つだけ、ぽっかりと大きな穴が開いていた。
何かが足りない、何かがない、そんな、心に隙間があるような感覚。
夢の中の仲間達と火を囲んでいる時、隣に大きな穴が開いていた。
これはなんだろう?そう思って手を伸ばしてみる。
触れた。ちゃんと人の形をしているようだ。
『……急に何だ?』
大きな穴が、怪訝そうにこちらに話しかけてきて、思わず手を引っ込めた。
そこでいつも目が覚める。
ベッドの上でぼーっと宙を見つめながら、カイルは頭の中で記憶を巡らせていた。
あれは誰だろう?オレの知ってる人だろうか?どうしてあの人だけ見えないのかな?あれは誰なのかな?
何故か、他の仲間は覚えている。会ったこともない、見たこともないのだが、何故か身近に感じられる他の仲間の事は、鮮明に覚えていたのに。
もう一人、居た気がする。
(何に?どこに?)
気がするんじゃない。確かに「居た」んだ。
(じゃあ、何処に行ってしまったの?)
その人は、みんなにとって、自分にとって、とてもとても大切な人だったのに。
(何故、ここに居ないの?どうして思い出せないの?)
顔が思い出せない。それどころか、性格も、名前さえも思い出せない。
ただ、記憶があったのは、
怪しげな骨の仮面のようなもので顔を隠して、漆黒の服を身に纏って―――
『……カイル』
―
ぱちりと目を覚ましたら、窓の外ではぽつぽつと雨が降っていた。
今日は父であるスタンと共に裏山に行く予定だったのだが、これでは行けるはずがない。
ベッドの隣にある小さな棚に目を移すと、怪しげな骨の仮面が目に入った。
スタンが何故か行商人から買ってきた、何の骨なのかもわからない仮面。
それを見た瞬間、心臓の辺りがきりりと痛んだ。
「夢の中の大切な人は、この仮面を被っていた」確信は持てないが、確信した。
夢の中で自分を呼ぶ声。
ひたすらに、ひたすらに追い求めているのに。
追いつけない。届かない。彼が、消えてしまう。
「―――――……っ!!」
彼の名前を呼びたい。名前がわからない。呼びたい。忘れてしまった彼の名を。
カイルは毛布に顔を埋めた。胸が苦しくて、苦しくて、寂しくて悲しくてしょうがない。
もう一度、会いたい。顔を見たい、声を聞きたい、話したい、……笑って欲しい。
涙が止まらなくて、止める気もなく、毛布をきつく握りしめながら、頭の中で、何度も何度も、彼を呼んだ。
見知らぬ愛しい大切なひとを。
――――――――
もしもリアラに力が残っていたら、ハロルドにもナナリーにも会えるけど、ジューダスには絶対に会えないじゃないですか。18年前に戻ればリオンはいるけど、それはあくまで「リオン」であって、自分達の求めている「ジューダス」という人物はいない訳ですよ。
そうかんがえれば、一番残酷な結末だったのはやっぱりジューダスですよね…。