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2026年06月13日
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悪口は人がいないところで【P4:主(→完)+花】
2014年06月13日
切れている唇の端からじんわりと血の味がする。沁みる。痛い。男前の顔が台無し。というのはまあ冗談として。
目の前には俺同様、顔の至るところを赤く腫らした男子生徒が二人。ああ俺がやったんだ、そう二人も。喧嘩なんてめっぽう弱いこの俺が。
何にも見えなかったし、聞こえなかった。
俺を羽交い絞めにして押さえつけてる陽介の声すら、さっきまでの俺には届いてなかった。
全身が痛いし、動悸も激しい。脳にはもやもやとした何かが残っていて、胸の中は激しい怒りが渦巻いてるだけだった。
俺を押さえる陽介の力は優しかったのに、振り払おうとか、抵抗しようとか、そんなこと全然考えられなくて、寧ろ力が入らないくらいだ。
頭が痛いし心臓も痛い。
「お前ッ、頭おかしいんじゃねーの?!」
「んだと!!」
すかさず反論してくれた陽介に内心ホッとした。ああ、持つべきものは友達だなぁ。
しかしまあ、頭がおかしいか。そう思われてもおかしくないのかもしれない。
「テメーら、二人で一人をボコるとかそっちこそ頭おかしーだろ!!」
「何言ってんだよ、そいつが先に手ェ出してきたんだ!!」
「俺たちはちょっと話してただけだっつの!」
眉を顰めながら困惑した表情を作る陽介に、とても申し訳がないと思う。庇ってくれているというのに、俺から手を出したという発言は覆せない真実であった。
俺は周りから見たらただの優男だろうし、力があるのはテレビの中だけ。本当なら暴力だってあんまり好きじゃない。スポーツはできるけど力は人並みだったから、殴り合いの喧嘩なんて勝てっこない。
彼らもさぞ困惑しただろう。
でも俺は、俺だけに非があったなんて思わない。
「……お前らが、さ」
腹に力が入らなくって息が抜けるような低い声が出る。自分は今相当暗い顔をしているんだろうなあ。笑いたくなったけど笑えない。
「あの子のこと、悪く言うから」
「あの子…って、俺たちは巽完二のこと話してただけだぜ?!」
だから、それが俺にとっての地雷だっていってるじゃん。
俺は何人たりとも、彼を傷付けるやつを絶対に許さない。それが男でも女でも、お年寄りでも子供でも先生でも警察でも。
誰も彼の本質を知らないからそんな軽率に傷付けることができる。お前ら、あの子がどんなに良い子か知らないだろ。どんなにお母さん想いな子か知らないだろ。どんなに優しい子か知らないだろ。どんなに繊細か知らないだろ。知らないくせに、知らないくせに、知ろうともしないくせに。よくそうやって簡単に好き放題言えるな。
そう、俺は盲目だ。「巽完二」という人間の本質に触れて、愛しさを募らせて、拗らせた故の結果なのだ。彼も俺に懐いてくれている。嬉しいことだ。俺は彼の信頼に応えたいだけで、彼を守ってやりたいだけなのだ。
「次さあ、どっかで完二の悪口言ってたら、今度こそ殺す」
でも知ってる。別に完二は俺に守ってほしいわけじゃない。だからこの行為は完全に自己満足で、例え完二が気にしないと言っても俺は絶対に許さない。俺は完二が好きなのだ、人間として。彼の素直で純粋な人間性に一種の憧れを持ってたりもしていた。
好きなひとを否定されたり悪く言われると怒ってしまうのは人間の心理だろう。
何度も言うが、盲目なのだ、俺は。
男子生徒二人は、やっぱお前頭おかしいよ、と吐き捨てるとそそくさとその場から逃げていった。
白いシャツに俺の血だか相手の血だかわからないやつがぽつぽつと模様を作っていた。制服のボタンを閉めちゃえば問題ないと思いながら、差し出してくれている陽介の手に掴まって立ち上がった。彼は何とも言えない表情をしていた。本当に申し訳ないとは思う。
「ごめんな」
「謝んなよ。悔しかったんだろ?じゃあ…いいじゃん。感情に任せんのはワリーことじゃねーよ」
「なあ陽介」
「ん?」
「今日のことさ、完二には何にも喋んないでね」
完二が憧れるクールでかっこいい俺のイメージを壊しかねないから。
陽介は呆れたみたいな溜息を吐いて、わかったよと一言だけ呟いた。
――――――――
喧嘩は弱いけど完二のこととなると殴る蹴る何でもしちゃう番長
沸点が低いとか高いとかじゃなくて「特定のこと」に限定される
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