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無題
戦場にて
西の戦場。テノスへ行くには、この戦場を通らなければならない。
全体がピリピリしている。殺気立っているのが、空気を通して伝わってくるくらいだ。少しでも油断すると、きっとすぐに殺されてしまうのだろう。
今現在進行形で傭兵の職に就いているリカルドは、戦場の事を一番知っているし、経験も豊富だ。危険だということも、既に身を持って理解している。
だからこそ、リカルドの言葉に従わなければならないときだ。
一行は、慎重且つ素早く、戦場を移動する。先頭は、言わずもがなリカルドだ。
「ルカもイリアも、俺の後ろにいとけよ。俺が守るからな。」
「あ、うん。ありがとう、スパーダ。」
「あらぁ、まぁたカッコつけちゃって~。」
気を付けろと言われながらも、ここまでピリピリしていると逆に盛り上げたくなってしまう。イリアのからかいに乗ってしまったスパーダが「カッコつけてねぇし!!」と叫んだところ、見事に三人はリカルドに怒られた(ルカはとばっちりという何とも哀れな理由だったが)。
アンジュが窘めて少しはリカルドの緊張も緩まったようだが、未だにリカルドの顔は険しいままだ。
「リカルドさんの言う通り、ここは一応戦場なのよ?天に昇りたくなかったら、きちんと静かにしましょうね。」
というアンジュの言葉で、一行は漸く無言になった。
その沈黙が、異常に騒がしいこのパーティにとっては非常に重いものだった。
エルマーナは黙っているのが苦手だ。暇でしょうがない。ぼーっと空を見上げる。早くこっから出れへんかなぁ、と気楽に考えていた。
戦場では、この油断が命取りだと、言われていた筈なのだが。
「―――全員、伏せろ!」
意識を飛ばしていたせいで、反応が遅れた。たくさんの崩れた瓦礫の陰から、ライフルを持った軍人の男が姿を現し、こちらに銃口を向けている。ビクリと体を強張らせてしまい、動かない。
人間、一番の恐怖に達した時、体が動かなくなってしまうというのは本当のことだったんだ、という悠長なことを考えている場合ではなかった。
まずい、撃たれる―――!!
「―――チッ!」
短い舌打ちが聞こえたかと思うと、リカルドは素早く立ち上がると、エルマーナの小さい体を抱えて倒れる。間一髪で、撃たれた弾はリカルドの肩をすれすれで通り抜けた。
イリアが拳銃を取り出し、伏せたまま軍人の男に弾を撃ちこむ。弾は肩に当たり、怯んだ男の体に、スパーダが剣を突き刺した。男はその場に崩れ、動かなくなる。
リカルドが体を起こす。土がついて汚れてしまった黒いジャケットよりも、エルマーナが無事かどうかを確認する。呆然とリカルドにしがみついているエルマーナは、顔に少し土の汚れが付いているだけで、怪我はないようだった。
安心と同時に、怒りが込み上げてくる。
「………戦場では、油断が命取りだと言った筈だが?」
「………ゴメンナサイ………。」
怒りが顔に表れているリカルドに、エルマーナは素直に謝る。心なしか、声は震えているように聞こえた。
それはもう大声で説教してやりたいところなのだが、アンジュに「もう、無事だったんだから良かったじゃないですか。」と窘められたのと、俯いたままのエルマーナを見て、自然に怒りが収まってくる。
溜息をつくと、目の前のエルマーナの頭を撫でながら、「無事でよかった。」と小さく呟く。
エルマーナを立ち上がらせると、再び一行は進み始めた。
エルマーナは、リカルドに腕を引かれながら。
「…なぁ、おっちゃん。」
「なんだ。」
「うちな、さっきのこと、生まれて初めてごっつ怖い思ってなぁ。体が動かなかったんや。」
「…そうか。」
「…ホンマごめんな。うち、次から気ぃつけるから。」
「そうしてくれると助かる。」
「せやなぁ、おっちゃんいんとうちさっき死んどったからなぁ。もう怖い思いはこりごりやわぁ。」
「……だが…。」
「ん?」
「またお前が危なくなったら、俺が助けてやるから安心しろ。」
「……おおきに、おっちゃん。」
――――――――
リカルドさんだったらエルくらい軽々と持ち上げられるよね。
リカエル好きすぎ病ですどうしよう。
泣かないで
宿で取った部屋で、ルカは涙を堪えながらシーツの端を掴んでいた。
真正面には、困ったような、焦ったようなスパーダの姿。
最初は、少しからかって遊んでいただけなのだ。だが、全身から弄りがいがあるオーラを噴出しているルカに、ついついやりすぎてしまった。スパーダも最初こそ笑っていたが、ルカが無言になっていくにつれ、スパーダも黙ってしまう。ルカの大きな目には、大量の涙が溜まっている。絶対泣くまいと我慢しているのだが、ほぼ隠し切れていない。
今までイリアとからかっているときには、ルカはすぐに泣いて走ってどこかに行ってしまう(そしてそれを聞きつけたアンジュに盛大に怒られる)。普段と違うリアクションに、スパーダもどうしていいかわからなかった。
「…お、おい、ルカ?」
「…………。」
無言で目を逸らされてしまった。地味にショックだ。
同室のリカルドに助けを求めるような視線を向ける。しかしリカルドは「自業自得だ」というような目でスパーダを一瞥した後、部屋からさっさと出て行ってしまった。
しんと静まり返った部屋で、ルカとスパーダの重い沈黙が流れる。
これは謝らなければ、そのうちこいつはアンジュにチクる、という考えと共に、スパーダはルカの腕を掴んだ。
「おい、ルカ…悪かったって…。」
「…………。」
「…確かにちょっとやりすぎた。だってお前からかうの楽しすぎるんだもんよ。」
「…それ、本当に謝ってるの…?」
「あぁ?!謝ってるだろーが!」
ついつい大声を出してしまった。ハッと気付いた時にはもう遅く、ルカはビクッと肩を大きく震わせた後、抑えきれなかったのだろう、目から涙をぼろぼろと零し始めた。
「……スパーダなんて嫌いだ……。怖いし、すぐ怒るし……。」
そう呟くと、ルカはスパーダに背中を向ける。
別に怒っている訳ではないのだが、確かに何回かは睨んだことがあった。しかしそれは怒ってる睨みではなく、それもからかいの一種なのだ。ルカには完全に『怒ってる』と解釈されているようだが。
自分に背中を向けて静かに泣いているルカがいる。「嫌い」と言われたことがショックだった。自分はルカを泣かせたい訳ではないのに。どうして自分はこうなのか。
スパーダは後ろからルカの腕を引っ張り、そのまま後ろから抱き締める格好になった。ルカは引っ張られても抵抗さえしないが、顔をスパーダに向けようとはしない。
それにまた心が痛む。後ろからルカの肩に顔を埋めると、小さい声で呟いた。
「………ルカ、ごめんな。泣かないでくれよ。」
「…………。」
「嫌いには…ならないでくれよ…。」
頭に、掌が置かれる感触がした。顔は上げられない。なぜなら、そうルカにお願いしている時、自分は相当泣きたい気持だったからだ。ルカに嫌われたらどうしよう。そう考えると、不意に悲しくなる。きっと自分は、泣きそうな顔をしている。
ルカの掌の感触が暖かい。「…謝ってくれてありがとう、ごめんね」という、ルカの呟きも聞こえた。
どうしてお前が謝るんだと、そう思った。そんなルカの甘く優しい性格に苦笑して、後ろからルカの身体を思いきり抱きしめた。
――――――――
何気初スパルカ話。スパルカは良いなぁ可愛くて。
スパーダはルカが大好きなので、嫌われたら死んじゃいます(妄想
なぁ、なぁ
「…………。」
「なぁってば、おっちゃーん。」
「………何だ、ラルモ。」
負けたというように溜息をつき、リカルドは武器の手入れをしている手を止め、後ろの方で頻りに自分を呼ぶ少女を振り返った。
エルマーナは、そんなリカルドを見て、にっこりと笑う。
「呼んでみただけや!」
「………」
先刻から続いている、この意味の無いやり取りに、リカルドはそろそろ疲れてきていた。
呼ばれたと思ったら、呼んでみただけと答えられ、再び武器の手入れをし始めると、さっきと同じように呼ばれる。振り返ると、再び「呼んでみただけ」。
何だ、このガキは何がしたいんだ……。リカルドの心中はそんな感じだった。
そんなリカルドの思いを知ってか知らずか、エルマーナは只管に呼び続ける。
何だか、心底嬉しそうに。
「何やおっちゃん、振り向くときなぁ、めっちゃ男前やねん。」
「………はぁ?」
「せやからなぁ、いっぱい振り向いて欲しいな~って思ってん。」
「…………そうか。」
そう言われて、そんな悪い気はしなかったリカルドである。
あと少しくらいなら付き合ってやろう、と思い、無言で武器の手入れを始めた。
再び、呼ばれる。今回は、無言で振り向く。
エルマーナはリカルドの顔を見て、にっこりと微笑んだ。
――――――――
リカエルは(俺の)ロマン。
出会いかたの問題
彼の前世は、僕の前世、アスラの愛剣デュランダル。
彼は僕の友人だ。
僕は彼が大好きだし、あっちも僕のことを好いてくれてる……はず。
でも、時々考える。
僕と彼が出会った理由は「前世繋がり」だ。一緒に旅をしている理由も同じようなものだし。
彼と出会えたことに関しては、僕は自分の前世に感謝をしたい。けど、それと同時に複雑な心境にもなったりする。どうしてか?
前世の関係が無かったら、僕たちは全くの他人だったから。仮に前世があったとしても、本当に出会えていたかどうかなんてわからなかったし。
彼は僕のことを「守る」って言ってくれた。それは、過去にデュランダルがアスラを守れなかったから。守るどころか、自身がアスラを殺してしまったから。
きっと僕がアスラじゃなかったら、そんなことは言わないと思う。僕がアスラじゃなかったら、彼とこんな会話をすることもなかったと思うと、不意に怖くなった。
「ねえ、スパーダ。」
「あ?」
「僕達って、前世の縁で出会ったんだよね。」
「あぁ、そーだなぁ。前世が無かったら、出会ってなかったかもなぁ。」
「……君は、もしも僕がアスラじゃなくても……。」
こんなことを聞くと、彼を困らせてしまうということは分かっていた。
「…どこかで会ってたら、友達になってくれてた?」
「――……。」
ああ、しまった、黙らせてしまった。返答に困る質問をしてしまった。
こんなこと聞かれても、「当たり前だ」なんて言えるはず無いのに。
それでも、彼はいつもの人をからかう邪悪な笑顔じゃない、優しい顔でニッと笑った。
「…ったりめーだろ、馬鹿。」
そういって、僕の頭をわしゃわしゃと撫でてくれる。
そうだったね、忘れていた。
君は、優しい人だった。
――――――――
よくわからないスパルカ(?)話。
いつだったか何かを読んでた時にこういうのがあったんです。