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2026年06月13日
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悪口は人がいないところで【P4:主(→完)+花】
2014年06月13日
切れている唇の端からじんわりと血の味がする。沁みる。痛い。男前の顔が台無し。というのはまあ冗談として。
目の前には俺同様、顔の至るところを赤く腫らした男子生徒が二人。ああ俺がやったんだ、そう二人も。喧嘩なんてめっぽう弱いこの俺が。
何にも見えなかったし、聞こえなかった。
俺を羽交い絞めにして押さえつけてる陽介の声すら、さっきまでの俺には届いてなかった。
全身が痛いし、動悸も激しい。脳にはもやもやとした何かが残っていて、胸の中は激しい怒りが渦巻いてるだけだった。
俺を押さえる陽介の力は優しかったのに、振り払おうとか、抵抗しようとか、そんなこと全然考えられなくて、寧ろ力が入らないくらいだ。
頭が痛いし心臓も痛い。
「お前ッ、頭おかしいんじゃねーの?!」
「んだと!!」
すかさず反論してくれた陽介に内心ホッとした。ああ、持つべきものは友達だなぁ。
しかしまあ、頭がおかしいか。そう思われてもおかしくないのかもしれない。
「テメーら、二人で一人をボコるとかそっちこそ頭おかしーだろ!!」
「何言ってんだよ、そいつが先に手ェ出してきたんだ!!」
「俺たちはちょっと話してただけだっつの!」
眉を顰めながら困惑した表情を作る陽介に、とても申し訳がないと思う。庇ってくれているというのに、俺から手を出したという発言は覆せない真実であった。
俺は周りから見たらただの優男だろうし、力があるのはテレビの中だけ。本当なら暴力だってあんまり好きじゃない。スポーツはできるけど力は人並みだったから、殴り合いの喧嘩なんて勝てっこない。
彼らもさぞ困惑しただろう。
でも俺は、俺だけに非があったなんて思わない。
「……お前らが、さ」
腹に力が入らなくって息が抜けるような低い声が出る。自分は今相当暗い顔をしているんだろうなあ。笑いたくなったけど笑えない。
「あの子のこと、悪く言うから」
「あの子…って、俺たちは巽完二のこと話してただけだぜ?!」
だから、それが俺にとっての地雷だっていってるじゃん。
俺は何人たりとも、彼を傷付けるやつを絶対に許さない。それが男でも女でも、お年寄りでも子供でも先生でも警察でも。
誰も彼の本質を知らないからそんな軽率に傷付けることができる。お前ら、あの子がどんなに良い子か知らないだろ。どんなにお母さん想いな子か知らないだろ。どんなに優しい子か知らないだろ。どんなに繊細か知らないだろ。知らないくせに、知らないくせに、知ろうともしないくせに。よくそうやって簡単に好き放題言えるな。
そう、俺は盲目だ。「巽完二」という人間の本質に触れて、愛しさを募らせて、拗らせた故の結果なのだ。彼も俺に懐いてくれている。嬉しいことだ。俺は彼の信頼に応えたいだけで、彼を守ってやりたいだけなのだ。
「次さあ、どっかで完二の悪口言ってたら、今度こそ殺す」
でも知ってる。別に完二は俺に守ってほしいわけじゃない。だからこの行為は完全に自己満足で、例え完二が気にしないと言っても俺は絶対に許さない。俺は完二が好きなのだ、人間として。彼の素直で純粋な人間性に一種の憧れを持ってたりもしていた。
好きなひとを否定されたり悪く言われると怒ってしまうのは人間の心理だろう。
何度も言うが、盲目なのだ、俺は。
男子生徒二人は、やっぱお前頭おかしいよ、と吐き捨てるとそそくさとその場から逃げていった。
白いシャツに俺の血だか相手の血だかわからないやつがぽつぽつと模様を作っていた。制服のボタンを閉めちゃえば問題ないと思いながら、差し出してくれている陽介の手に掴まって立ち上がった。彼は何とも言えない表情をしていた。本当に申し訳ないとは思う。
「ごめんな」
「謝んなよ。悔しかったんだろ?じゃあ…いいじゃん。感情に任せんのはワリーことじゃねーよ」
「なあ陽介」
「ん?」
「今日のことさ、完二には何にも喋んないでね」
完二が憧れるクールでかっこいい俺のイメージを壊しかねないから。
陽介は呆れたみたいな溜息を吐いて、わかったよと一言だけ呟いた。
――――――――
喧嘩は弱いけど完二のこととなると殴る蹴る何でもしちゃう番長
沸点が低いとか高いとかじゃなくて「特定のこと」に限定される
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めも
2013年12月30日
・都会に帰っちゃった番長がひさ乃さんに言われたことを思い出して仲間たちにお手紙を出す話
主完
・完二が番長にご飯を作ってあげる話
主完
後輩(P4:主→完)
2013年04月17日
自分が年下好きなのかと気付いたのは、部活見学をしたときだ。
文化部はどちらにしようか迷った挙げ句、見学したときに楽しかった演劇部……ではなく、吹奏楽部に入ることにした。
演劇部の小沢は少し口うるさいが、文句なしに良い子だし可愛い。しかしどちらかというと吹奏楽部で少しだけ仲良くなった綾音の方が気になっていた。だから吹奏楽部にした。その時は自分にロリコンの気があるのではと悩んだが、純粋に可愛さを求めるのなら年下の方が良いのだ。自分より一つ下というだけで、なんだかこう、堪らない気持ちになったりしないだろうか。俺だけなのだろうか。
道理で同年代に興味が惹かれないわけだ。天城は美人だし里中も男勝りと言われるがそれにしてはレベルが高い。そんな子達に囲まれながらも、俺は「先輩」の言葉一つで何処へだって行けちゃうのだ。
りせに甘えられながら「先輩」と、直斗に頼られるときに「先輩」と、完二に慕われながら「先輩」と、呼ばれる喜びと溢れる愛しさは何にも代え難い感情だ。
「ちょいまちちょいまち。おかしい」
「何が」
「女の子じゃないの混ざってる」
陽介はそう言った。が、俺は間違ってるつもりはなかった。
「俺が一番最初に『先輩』って呼ばれることに喜びを感じるキッカケになったのは、完二だからね」
彼は俺が稲葉に来て初めてできた後輩だ。
完二に出会う前からも、道行く一年には先輩と呼ばれていたし、都会でも呼ばれる機会は多かったが、その時は別に何も思わなかった。彼らを特別後輩だと思っていなかったのだ。
それが、完二に出会ってからはどうだ。いつも薄い眉を眉間に皺寄せしてるくせに、俺の姿を見ると顔を輝かせながらちょこちょこと寄ってきて、控えめに後を付いてくるのだ。後ろを振り向くとあどけなく笑いながら、先輩、どっか行くんスか、俺も付いてって良いですか、なんて聞いてくる。
これが後輩というものなのか。後輩、後輩。何て良い響きだ。ああ、この子は俺の後輩なのかと気付いた時点で、完全に俺は後輩という可愛い存在の虜になってしまったのだ。
「都会では完二みたいな子はいなかったから、こんな子がこんな俺を慕ってくれてるのが本当に嬉しいんだ」
「ふぅん」
「先輩って呼ばれるのは誰彼関係なくときめくけど、完二に先輩って呼ばれるのが、一番好き」
「じゃ、俺も呼んでやろうか?せーんぱい!」
「………あっ、俺の脳内裁判の結果、お前のは無しだって判決が」
「ひでぇ!」
陽介がけらけらと笑う。そのあと、今の話って、後輩談義ってよりもお前の完二自慢じゃねーか、と言った。
自慢をしても良いというのなら、喜んでするんだけど。
「要は、俺の後輩可愛いんです!もう堪んないんです!って言いたいんだろ?」
その通りだよ。
小さいながらに一生懸命夢に向かって頑張る綾音も、少しずつ笑顔を見せてくれるようになった尚紀も、女の子らしくて魅力的なりせも、ふとした合間に見せる可愛らしさがある直斗も、俺の後輩はみんなみんな愛らしく可愛い。
その中でも、特に思い入れが強いのが完二。良い子で優しくて、強くて健気。初めての後輩がこんなに出来た子だとは。
そんなことを考えていたら、無性に声が聞きたくなった。
「電話しよう」
携帯を取り出して、とりあえず電話。話題はあとからで良いや。
三回くらいのコール音のあと、もしもし、と少し眠そうな声がした。
「もしもしー、完二ー」
『あっ、先輩!』
そうだよこれだよ。本家本元だよ。
耳の奥が幸せ。先輩、そう呼ばれることに喜びを隠せない。
陽介が噴き出した。
「おま、顔ゆっるゆる…!」
顔も口元もにやけて元に戻りませんでした。
「完二、もっかい先輩って呼んで…」
『へ…せ、先輩?』
「もっかい!」
『先輩』
「ワンモア!」
「相棒ちょっと落ち着こうか!」
20130409
――――――――
後輩(主に完二)が大好きな番長
一年生はみんな可愛い!!!
どっちもどっちだよねって(P4:主完)
2013年02月14日
自分が警官に目をつけられる存在だというのは重々承知していた。
面構えは悪いし染めた金髪は目立つし、なにより彼らの頭には過去の俺の行動がこびりついている。
例えば俺が愛屋に入るだけで食い逃げをするのではと睨んでくるし、ただ道を歩いてるだけでも職質をされる。別になにもしてないけど、あいつらは俺を見ると、俺が何かやらかすんじゃないかと思わずにはいられないらしい。まったく迷惑な話なのだが、いい加減慣れてしまった。適当に相手をして、適当に受け答えして。疑われたままというのは正直辛いけど、下手に突っ掛かって変な言い掛かりをつけられてまたサツの世話になるのだけはゴメンだった。
今日だってただお袋のおつかいでちょっと出ただけだったのに、例の殺人事件で賑わっていた商店街には、ピリピリとした警官もたくさん歩いていた。
名前を呼ばれて、ああまたかなんて思いながら溜め息をつく。俺なんかに構ってねぇで職務を全うしろよ、とか思う。殺人事件を、警察なんかに任せておけないとか言いながら追いかけてるのは俺らなんだけれど。
早くおわんねぇかな、なんて警官の口から無駄に漏れる単語を聞きながらぼんやり思っていた。
「すみません」
警官の声みたいに耳から抜けていく声ではなく、頭に直接響くようなその声音には聞き覚えがあった。
「あ…」
「彼が、何かしたんでしょうか」
そう、それは俺の先輩で、彼は俺と目が合うとにこりと笑った。
しかし俺は、先輩からなにか不思議な違和感を感じた。いつも通り物腰柔らかで、優しげに目を細めているにも関わらず、何とも言えない、漠然とした違和感を感じた。
「何だ、君は。コイツの知り合いか」
あ、やべえ。
今更ながらに思う。彼は、俺とつるむには明らかに不自然な人だった。
人当たりの良い性格に、優しい声に、かっこいい容姿で、頭だって俺より何百倍も良い。不自然なのだ。人間として完璧とも言える素質を持ったこの人と、欠陥が多い俺が、顔見知りだなんて。
このままでは。このままでは、先輩まで変な目で見られてしまう。俺の知り合いだと、変に疑り深い目で見られてしまう。
それだけは絶対に嫌だった。
いけないのだ。俺が先輩の面汚しになっては、そんなことになってしまったら、俺は申し訳なさと罪悪感で死んでしまう。
「し、知り合いじゃねえ」
首を振って彼を否定した。それからあっちへ行けと目配せをしたつもりだったのに、目を再び合わせた先輩は酷く傷付いた顔をしていた。
頭が良い先輩なら、俺の意図をすぐに理解してくれると思っていた。
アンタのためを思ってのことだったけど、先輩の顔を見たら俺はなんだかとてつもなく悪いことをした気分になったのだ。
「…その子、貴方達が思っているようなことは、絶対しない子ですから」
先輩はそんなことを言った。その言い草は明らかに彼と俺が知り合いであることを証明していた。なんて余計なことを、と少し苛立ったのだが、先輩は首を振った。
「知り合いじゃないです」
「彼がそう言ってるんだから、俺と彼は知り合いじゃあないです」
「でも、俺は彼の味方ですよ」
それから先輩は警官に二言三言、何かを言って俺の腕を引っ張った。警官は少しばつの悪そうな顔でこっちを見ていたが、先輩が会釈をすると歩き去ってしまった。
俺と先輩だけが商店街のど真ん中に取り残されて、昔よりも静かになってしまったそこでカラスの羽ばたく音を聴いた。
先輩を見る。だんだんと俺はムカついてきて、彼を相手に怒鳴ってしまった。
「アンタ、何でさっさと行かねぇんだ!」
「知り合いだってばれたら、アンタだってサツの目についちまうんだぞ!」
「迷惑、掛けたくなかったのに!」
俺はこんなことを言いながら、先輩を怒鳴るなんて筋違いも良いとこだとわかっていた。この人は、庇ってくれたのだ。こんな俺を。本来は礼を言わなくてはならないと言うのに、何をしているんだ俺は。
俺はただ、先輩にとばっちりが飛ぶことだけを避けたくて、頭の良い先輩なら状況判断だって的確だろうと思って、だからあのときこの場を離れてほしかったのに。
先輩の、俺の腕を握る力が強くなる。
「お前は、自分勝手だねえ」
低く低く呟かれた言葉に、一瞬心臓が止まった。初めて聞く声だった。
どうやら、怒っているみたいだ。
「お前さ、俺が、いつ頼んだ?」
「警察に目ぇつけられんの嫌だから会っても他人の振りをしろだなんて、いつ頼んだ?」
「迷惑だとか、誰が言った?お前、俺のことそんなに矮小で狭量でチンケな人間だと思ってんの?」
先輩は普段から、子供に言い聞かせるような優しい声と言葉で人を諭す。
それが、今の彼は怒気を声に含ませながら、イライラした口調で俺に食って掛かってる。少しだけその姿に狼狽したが、何故先輩が怒っているのかわからない俺は、その彼の態度にも腹が立ったのである。
俺は俺なりに先輩に迷惑をかけないように必死だったというのに、何でアンタはそんなに怒ってるんだ。
「お前は馬鹿だね。そうやって俺の気持ちも考えず、勝手に俺のためだなんて言い訳をする」
「んだと!」
「頼んでもないのに、迷惑を掛けたくないとか言って、勝手に一人で突っ走る。お前の悪い癖だ」
その言い方はないんじゃないかと思う。悪い頭を振り絞って出した考えだったのだ。これ以上どんな反応を俺に求めてんだ。
もっと簡単に言ってくれないと、わかんねぇじゃねえか。
よくわからない怒りが所在なく頭をぐるぐる回り、次第にはなんだか泣きたくなってきた。
先輩の手のひらから力が抜けていく。指先の痕が赤く残っていた。先輩は俺の手を両手で包んで、少し暗い表情を落とす顔に近付ける。
「……もっとさ、」
「もっと信頼してよ。俺のこと、割れ物みたいに思うのやめてよ。迷惑かけるのが怖かった?俺が傷付いちゃうって怖かった?それでまた離れちゃうのが怖かった?馬鹿だなあ、馬鹿だなあ完二は」
「言ったはずだよ、迷惑なんかじゃないって。みくびるなって、言ったはずだよ。優しいお前を知ってるから、本当は真面目で良い子だって知ってるから」
先輩は悲しそうにつらつらと言葉を紡ぐ。あ、この顔はさっき、俺が先輩を他人だと遠ざけようとしたときにもしていた。
「……ごめんね。お前は俺を守ろうとしただけだよね。お前らしい、不器用な方法だよ」
いつも通り、優しい声音。それを聞いたら、俺はやっぱりとてつもなく悪いことをしたんじゃないかって気分になる。アンタは悪いことを何一つしてないのに、結局はそうやって謝ってしまうから。
「俺ァ、ただ…先輩に、とばっちり飛ぶの、ヤで、俺のせいで、アンタが、傷付くの、ヤで……」
それに比べて俺ときたら、つらつらと言い訳ばかりだ。改めて声に出したらなんだか情けなくて、自分でもわかるくらい震えていて、ああなんだかもう、泣きたい。
先輩は笑った。
「お前の気遣い、ありがたいよ。でもよく覚えておいて。俺はお前に頼ってほしいよ。お前に遠ざけられるのが、一番傷付く」
「…すみません、した」
「うん、わかればよろしい」
それに俺は、お前が変に疑われて、傷付いてる姿を見るのも嫌なんだよ。何も知らない他人が見かけだけでお前を判断してるのがとても気に食わない。
そんな先輩の言葉を聞いて、俺は先程先輩に感じた違和感の正体に気付く。この人は、怒ってくれていたのだ。俺を疑う警官に対して。
何だか嬉しくて、ほわ、とどこかが暖かくなったみたいな感覚がした。
先輩は俺の手をとったまま、ご飯に行こうと誘ってきた。人が少ないと言ってもいつ誰が通るかわからない道のど真ん中で、俺と手を繋いで歩こうだなんて考える物好きはこの人くらいしかいないだろう。
この人は、世間体を全く気にしなかった。
そんなところが、この人の懐のデカさとか、人格を形成してるんだと思う。
「あの、俺、お袋のおつかい、あるんス」
「そうなの?じゃあ終わったら、一緒にご飯食べに行こう」
先輩は、こんな俺と一緒に居たいと思ってくれている。
面倒事をたくさん背負ってる、俺を好きだと言ってくれている。
不思議で、物好きで、変な人だと思うけど、優しくて、かっこよくて、やっぱり誰よりも憧れる先輩だった。
おつかい、俺も付いていくよと先輩は言った。俺の手を握ったまま歩き出されて、これは別の意味で警官に止められそうだとひやひやした。
これで完璧に先輩は俺のツレで、有り得ないくらいアンバランスな組み合わせが商店街のど真ん中で手を繋いでいるという、端から見たら異様な光景が出来上がった。変な噂がたってしまうのも時間の問題だろうなと思う。
先輩にやっかみがいくのはやっぱり嫌だけど、この人が俺と一緒に居たいと言うのだから、俺はその期待に精一杯応えようと思うのだった。
(いやでも、流石に手ェ繋ぐのはハズいんで勘弁してもらえねっスか)
(これくらいいいじゃない、また俺を蔑ろにする気?次は許さないよ?)
(いやあの、ホントスンマセンっした…!)
20130214
――――――――
毎日ちょっとずつ書いてたから文章の繋ぎとか背景の移り変わりとか、おかしかったらすみません
当初は番長に警官を殴らせて二人で逃げようぜ的な、ちょっと血の気の多い番長にしようとしたんですが、うちの番長は一応喧嘩が弱い設定なのでさすがにやめにしました。喧嘩が強い番長も憧れるけどね…!
何回も言いますがうちの番長は完二にデロ甘です。完二を疑うやつ傷付けるやつ変な目で見るやつ全部から俺が守ってやるからね!っていう
(P4:主完)
2013年02月07日
素直で優しい性格が好きだと思った。
「お前は本当にいいこだね」
褒められるのに慣れてなくて、しどろもどろになりながら、いいこってやめてください、と小さく呟く姿が好きだと思った。
普段はまるで百獣の王みたいに周りを圧倒しているのに、俺の前になるとたちまち借りてきた猫のようになる、分かりやすく単純な態度が好きだと思った。
「それでいて、とてもかわいいこだ」
かかかか、かわいくなんてねぇ、と、赤面しながらこっちに凄む姿はそれは可愛らしかった。純情で、嘘なんて高等なものつけなくて。そんなところも好きだった。
少し伸ばしたら届く、彼の頭に手を置いて、軽く撫でる。完二は無意識だろうか、腰を少し曲げて俺が撫でやすいようにしていた。不機嫌そうに寄せた眉は作っているだけで、本当は微塵も嫌だなんて感じてないことは知っている。本当に嫌ならば、俺はとっくに突き飛ばされてその辺に惨めに転がっていただろう。
俺には甘いところも好きだ。
触った髪の毛は色素が薄く、ほんのり金色に光る。抜かれたり染め直されたりを繰り返されて結構傷んでいた。パサパサとした乾いた感触も、好きだった。
「完二、屈んで。もっと」
俺の真意を汲みかねているような、不思議そうな顔で、でも彼は俺の言うことにはそれはもう疑うこともなく従順に従うのだ。
俺よりも低くなった頭は、頭頂部がよく見えていた。後ろに撫で付けている髪の毛のせいでつむじらしきものは見えない。両手で形を確かめるように撫でると、いよいよ完二は少しばかり困惑した表情になる。
お前は馬鹿なんだから、変に勘ぐったり考えたりしても意味ないのに。それでも必死に俺のことを理解しようとする、健気な姿は好きだ。
おでこにキスをする。広くて、俺は可愛いと思う。
完二はびっくりして、屈んだまま俺から離れた。後ろに体重をかけたせいで足が縺れて尻餅をついた。「あだっ」なんて色気も何もない声を漏らす。
その外見に似合わず随分可愛い反応をする。まあ、似合わないだなんて、思っていないけど。
「せ、せ、せんぱい」
「駄目だよ完二」
逃げたら。
そのまま俺も膝をついて、頬を手のひらで包む。いつもよりも高めの温度が伝わる。その様子が目に見えてわかるくらい、彼の頬は真っ赤だった。
照れ屋なところも、可愛くて好き。
いつも真ん中に寄って、彼に目付きの悪いイメージを持たせる眉も、今ばかりはへにゃへにゃと波打っていた。困ってるなあ。困った顔も大層可愛かった。
彼の全部が可愛くて、愛しくて、好きで、何もかもが堪らなくなってしまう。
額にキスをして、鼻先にキスをして、頬にキスをして、瞼にキスをする。完二はきつく目を閉じていた。
「先輩、」
もう十分っス、と完二は切羽詰まったみたいな声を必死に絞り出したけど、俺はまだまだ全然、少しも満足していなかった。俺は彼に愛を贈ることを満足としていた。見返りなんて考えたこともなく、ただただ俺は、彼を俺が満足するまで甘やかして愛しているのだ。
ねえ、俺が満足するまで付き合ってよ。こう言うと、まるで俺が彼を自分が満たされるために使っているように聞こえる。
決してそんなことはないのだけど、俺は頭はよかったが語彙が極端に少なかった。お前が良いんだとか洒落たことを言えればいいんだけど。
「完二、好きだよ」
「…はあ」
「大好き」
「…あの」
「超愛してる」
「…なんか、どんどん安っぽくなっていきますね」
彼はちょっと噴き出すみたいに笑った。でも彼は安っぽい言葉を享受してくれる。変に着飾るよりも、シンプルなものが好きみたいだった。謙虚なところも好きだ。
そのまま、微笑みを浮かべる唇にキスをした。俺たちのキスはいつも浅くてとても短かった。完二は緊張しているのか、それとも照れているのか、はたまた嫌なのか(もしそうだとしたらとても悲しいけれど)、いつも唇を開けてくれなかった。きゅっと結んだ唇に、俺が口付けを落とすだけ。こればっかりは、少しだけ寂しかった。
「完二、口をあけてくれない?」
ダメ元でそう聞いた。
完二はいつもお願いしたら無言で頷いてくれた。照れ屋さんな完二は多分このお願いを聞き入れるのは難しいと思う。でも、せっかく、せっかく今最高に良い雰囲気なんだから、したいと思う。とびきり濃厚なやつ。
これからも付き合っていくんだし、慣れていかないと、なんてナチュラルに思う。俺たちの関係なんていつ壊れてもおかしくないと言うのに。自然と眉が下がってしまった。
「………わ」
やっとで完二が発した言葉は、可哀想なくらいに小さくて、すぐにでも消え入りそうだった。
「わかり、ました」
えっ。
「だから、あの、わかりました、って」
「あ、あの、何が」
「………く、くち、開けます」
「えっ」
「だっ、だだだだから口開けてやるっつってんだコラァ!!な、な、何度も言わせんな!!」
最早自棄になっているかのように完二が俺に凄んだ。おでこから顔から耳から首筋まで、まっかっか。彼なりに色々考えて、恥ずかしいけど俺を甘やかすことを決めたようだった。
ああ、やっぱり、すきだなあと思う。
震える指に自分のを絡めて、一気に彼との距離を近付ける。指にまで伝わる完二の鼓動の大きさと早さに、このままキスすれば破裂しちゃうんじゃあと思う。
目の前の瞳が所在無さげにおろおろと泳いでいて、俺と目を合わせまいと必死だ。
ちゅ、と唇を合わせたら、でもやっぱり完二は口を開かなかった。
首を傾げる俺に、完二は困ったみたいに言った。
「ど、どのタイミングで開けばいんスか」
ああもう、本当にコイツは。
「そうゆうこと言わないでくれる。可愛いから」
「な、」
何言ってんだ、とでも言おうとして開いた口を、その言葉ごと食べた。
おいしいとか、そんな味覚的な感覚はおかしいかもしれないけど、とても甘く感じた。多分俺の今の気分からなるものなのではないかと思う。
ぎゅうと目を瞑る完二が可愛かった。ときせつ苦しそうに口の隙間から息を吐くのが酷く艶っぽかった。
そんな、俺の予想を遥かに上回る反応の良さも大好きだった。
そのまま自分ごと彼の体を後ろに倒す。
真ん丸に開いた目が潤んだまま俺を見ていた。俺は彼をもっとどうにかしてやりたいと思った。
「ね、完二」
「俺の好きなお前を、もっと見せてよ」
彼の返事を聞くより先に、俺は半開きの口にキスをした。
20130126
――――――――
ここはどこなのだろうかということを考えながら書いてました。ちゃんと考えておけとあれほど
あまあま~な主完を目指したけど無理だった。どうしても番長が変態臭くなる