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お前は俺で
ファラに起こされるまで、ずっと寝てるつもりだった。いや、多分腹が減ったら勝手に起きてたかもな。
起きたのは、もう太陽が沈みそうな時間。
さすがに寝すぎた。立ち上がるのがだるい。
でも、もう保存してる肉も底をついて来てるから、今日は狩りに出かけなきゃな。
めんどくさいけど、仕方ない。俺は、重い腰を上げた。
森の中は、太陽の光があまり当たらないから、もう既に真っ暗だった。夜になる前に、帰らなくては。
この森は奥まで来るとほんとに迷う。昔、迷ったことがあるからちょっとしたトラウマだ。
その時は何とか帰ったけど。…あれ、どうやって帰ってこれたんだっけ。
木の揺れる音しか聞こえない静寂。今でも気味が悪いと感じるのは健在だ。あの木の陰からなんか出てくるんじゃないかと思うと、今でも正直心臓が止まる勢いだ。
そんなことを考えていると、頭の上にぽつりと何かが降ってきた。まさか、と思ったけど、そのまさかだ。頭だけじゃない、腕にも顔にも、ぽつぽつと雫が落ちてくる。どんどん強くなってきた。これではびしょびしょになってしまうではないか。もう既にびしょびしょだけど。
それでも、何か獲物を捕まえなくては。俺は走って魔物を探す。
そのとき、目の前に小さな影が見えた。
しゃがみ込んで、蹲って、顔が見えないそれは、小さい男の子だ。
俺と同じ真っ赤な髪が、暗闇でも異常に目立っている。そのおかげで発見できたといっても間違いじゃない。
「……どうしたんだ?お前。」
その子はビクッとしてから、ゆっくり顔を上げる。暗くて、そのうえ雨で霞んでいたために、顔ははっきり見えなかったけど。
「と、う……さん……?」
「…父、さん?」
俺の父さんは、十年前に、死んだ。
そのことを思い出して、少し動揺したけど、今はこの子を何とかしなければ。
「こんな森の中ではぐれたのか?」
そう聞いたら、急にその子は目から涙をぼろぼろとこぼした。…んだと思う。暗くてよく見えない。
どうしたと聞いても、何も答えず、ただ下向いて泣いてるだけのその子に、俺は困惑するしかなかった。この場にファラがいたら、何とかしてくれたのに、と思いながら。
…不意に、俺もここで迷子になった時のことを思い出した。
誰かに助けてもらった気がする。そのとき、その誰かに何かを言われたような…。
俺はその子の手を握って、立たせてやる。
「男の子は、簡単に泣いちゃ駄目だって、俺の父さんが言ってたんだ。だからもう泣くなよ。」
父さんは泣いてる俺に、いつも同じことを言っていた。
…父さん以外からも言われたような記憶があるけど。
その子は一瞬、きょとんとしていたけど、すぐにしっかり頷いたから、俺も満足した。
「よし、俺が送ってやるよ。うちどこだ?」
「あ、ラシュアン…。」
「ラシュアン?俺もそこに住んでるんだぜ。なら簡単だな。」
手を引っ張ると、その子は素直についてくる。きっと、長い間ここにいたんだろうな。手がすごく冷たくなっている。風も冷たいから、何とかその子に風が当たらないよう、気を配ってみたけど。
すぐにラシュアンについた。…あれ、でも、俺の知ってるラシュアンよりも、少し、違う…?
昔の、ラシュアンのような…。
空を見ると、真っ暗だった。まずい、何も獲物を取って無い!
雨は運よく弱くなってる。俺は再び森に入ろうとした。すると、その子に引き留められる。
「あ…アンタは、うちに帰らないのか…?」
「俺は、今日の晩飯取りに行かなきゃなんねーからな。またな。」
後ろを振り向くと、その子が俺に手を振っていた。俺も振り返す。
………このやり取り、いつだったかやった覚えがあるのは何故だろう。それに、あの子の声、どことなく昔の俺に似ていたような…。
難しいことは考えるのは苦手だ。きっと気のせいだろうと思って、俺は考えるのをやめて、魔物を探しに走った。
――――――――
リンクしています。エターニアのスキットにあったやつ。
いろいろと不思議ですが。リッドは『昔』としか言ってなかったので、その辺は全部適当。
俺はお前で
木の上は探せないからといって、木の上に隠れるのを禁止させられた。
そんなの、おもしろくない。
だったら、せめて探しにくい所に隠れてやろうと、森の奥まで来てしまった。
ここまで奥に入ったのは初めてだったから、ひとの気配がない、草や、木の揺れる音しか聞こえなくて、正直気味が悪かった。
さすがにキールもこんな奥までは探しにこない気がして、さっきの場所に戻ろうとした。
…したんだ、けど。
自分がどこから来たのかが、わからなくて。たくさんの同じような木、どこまでも変わらない道、どこを歩いているのかわからなくて、あれ、ここはさっき見たような。
(……ここ、どこ?)
辺りは暗くなってきた。もう、夕方なのだろうか。ファラや、他の奴の声も聞こえない。俺がいないから、先に帰ってしまったのだろうか。
途方に暮れた俺の頭に、ぽつりと、何かが落ちてきた。頭だけじゃない、顔にも、手にも、ぽつぽつと水の跡がついていく。次第にそれは強くなってきて、その場に佇むことしかできなかった俺はすぐにびしょびしょになった。
歩かなければ。でも、怖い。暗闇が怖い。
冷たい。寒くなってきた。歩かなきゃ。歩きたくない。怖いよ。
俺はその場にしゃがみ込んだ。膝に顔をうずめて、とにかく待った。
誰かが探しに来てくれるかもって、思って。父さんが来てくれるかもって、思って。
……父、さん……。
不意に、前から足音みたいな音が聞こえた。
ぬかるんだ土を踏んで、ぐちゃぐちゃという音が耳ざわりだったけど。
顔をあげたい。誰の顔かみたい。だけど、顔を上げるのが怖くて。
「……どうしたんだ?お前。」
声を掛けられたから、普通の人だって、安心した。
顔を恐る恐る上げる。顔を伏せていたから気付かなかったけど、もう辺りは真っ暗で。その人の顔は、暗いのと、雨で霞んで、見えなかった。
でも、暗闇でもわかる、真っ赤な髪の色で、俺はつい――
「と、う……さん……?」
「…父、さん?こんな森の中ではぐれたのか?」
父さんなわけがなかった。だって、父さんは一年前に―――
急に、目から涙が出てきた。目の前の人は驚いたみたいで、「どうした?」としきりに聞いてきた。でも俺は、何だかよくわからなくて、ずっと泣いてた。
そうしたら、その人は俺の手を握って、立たせてくれた。とても温かい。赤い髪のその人は、暗くてよくわからなかったけど、多分、笑ったんだと思う。
「男の子は、簡単に泣いちゃ駄目だって、俺の父さんが言ってたんだ。だからもう泣くなよ。」
それは、俺の父さんも言っていた言葉だ。急に元気が出てきたから、俺は頷いた。
「よし、俺が送ってやるよ。うちどこだ?」
「あ、ラシュアン…。」
「ラシュアン?俺もそこに住んでるんだぜ。なら簡単だな。」
その人の言う通り、五分もしないでラシュアンについた。
俺がとりあえずファラの家に行こうとしたら、その人はまた森に入っていこうとしてた。
「あ…アンタは、うちに帰らないのか…?」
「俺は、今日の晩飯取りに行かなきゃなんねーからな。またな。」
その人が腰に剣を挿していたのに、今気付いた。手を振ったら、振り返してくれた。その後ろ姿がとてもかっこよくて、俺は見えなくなるまでずっと見つめてた。
ファラのうちに入ったら、ファラが泣きながら俺に抱きついてきた。どうやらずっと心配してくれていたらしい。俺は、あの人に助けられたことを話した、ファラは「じゃあ明日お礼を言いに行こうね。」と言っていた。
どこに住んでるかを、聞くのを忘れたけど。
あの赤い髪、どことなく父さんに似ていたなと、思った。
俺も大人になったら、あんな風になれるかな。
そう思って、俺はあの人が握ってくれた手を見つめた。
――――――――
もう一つは別バージョンです。
僕にとっての『優しいひと』
お父さんとお母さんの顔は、あんまり覚えてない。
もう何年も昔に、パルマコスタの『血の粛清』で、英雄だと言われたロイド・アーヴィングに殺された。
だから僕は、いくら世界を救った英雄でも、ロイドが大嫌いだ。
もとから好きだった訳じゃない(知ってたわけでもなかった)し、僕の住んでる街には、英雄ロイドの銅像までもが建てられているから、正直言って我慢ならない。
冗談じゃない。どうしてあんな奴にみんな拝むのか。それは、英雄だからなのか。
英雄だったら、人殺しでも許されるって言うの?
そんな事を思っているのは、このロイドを拝む街では、僕だけだった。
だから僕は、この街では邪魔者扱いだった。あっちへ行けだの、こっちに来るなだの。
僕は被害者なのに。ロイドに両親を殺された、被害者なのに。そんな僕の方が異端扱いされるなんて、もう意味がわからない。僕の居場所は此処にはないし、どこに行っても無いと思う。
散歩をしているだけで、いつもの双子に馬鹿にされる。ああもう、関わらないでほしい。勇気がないから、そんな文句さえ言えないけど。
挙句の果てに、ロイドの銅像に忠誠を誓え?そんなこと、死んでもしたくない。
そうしたらほら、また僕は何もできない。いじめられても、手を出す勇気なんてない。
前から突き飛ばされて、尻もちをついた。もう慣れたから、恥ずかしくはなかったけど。
そんなときに。
後ろに尻もちをついたとき、赤い髪の怖い顔をした人の足のぶつかっちゃって。
この街では初めて見たけど、きっとこの人もロイド信者だ。僕の様子を笑いに来たのかな。
って。
おもってた、けど。
その怖い顔の人は、僕の腕を引っ張って、立たせてくれた。
「……失せろ。」
双子にそう言って、すごい顔で睨んでた。
…助けてくれた人だけど、正直、怖かった。
でも、そんな人でも。
僕がこの街で初めて出会った『優しさ』だった。
ぶっきらぼうで、厳しい口調の人だったけど、僕にとっては『優しいひと』で。
きっとこの人は、この世界で一番『優しいひと』なんじゃないかって、僕は疑う余地も無かった。
――――――――
メインはエミルのリヒターに対する印象です。ほんとです。最初の方じゃないです。最後の短い方です。
最初の方はあれです。何だか考えたら楽しくて。捏造な部分もありますがね!!
ちなみに私はその時いらっときたので、忠誠を「誓わない」にしてしまいました。
なぁ、なぁ
「…………。」
「なぁってば、おっちゃーん。」
「………何だ、ラルモ。」
負けたというように溜息をつき、リカルドは武器の手入れをしている手を止め、後ろの方で頻りに自分を呼ぶ少女を振り返った。
エルマーナは、そんなリカルドを見て、にっこりと笑う。
「呼んでみただけや!」
「………」
先刻から続いている、この意味の無いやり取りに、リカルドはそろそろ疲れてきていた。
呼ばれたと思ったら、呼んでみただけと答えられ、再び武器の手入れをし始めると、さっきと同じように呼ばれる。振り返ると、再び「呼んでみただけ」。
何だ、このガキは何がしたいんだ……。リカルドの心中はそんな感じだった。
そんなリカルドの思いを知ってか知らずか、エルマーナは只管に呼び続ける。
何だか、心底嬉しそうに。
「何やおっちゃん、振り向くときなぁ、めっちゃ男前やねん。」
「………はぁ?」
「せやからなぁ、いっぱい振り向いて欲しいな~って思ってん。」
「…………そうか。」
そう言われて、そんな悪い気はしなかったリカルドである。
あと少しくらいなら付き合ってやろう、と思い、無言で武器の手入れを始めた。
再び、呼ばれる。今回は、無言で振り向く。
エルマーナはリカルドの顔を見て、にっこりと微笑んだ。
――――――――
リカエルは(俺の)ロマン。
本当の心
シャーリィが何を言いたかったのか、俺は気付いていたのに、シャーリィを拒んだ。
彼女が俺を好いてくれること、嬉しかったはずなのに。
俺は、逃げていた。シャーリィから、現実から逃げていただけだった。
あのときは、本心からそう言えた。
『俺は、ステラの傍にいてやらなきゃ……。』
ステラは、ずっと一人ぼっちだった。俺が助けに行くのを、ずっと待っていてくれた。
でも、救えなかった。俺の、最愛の女性。水舞の儀式を、俺の誘いをずっと待っていてくれた彼女。
シャーリィは、わかってくれた。そうだよね、と、頷きながら。
俺は、ほっとした。シャーリィの気持ちを聞いたら、俺の何かが壊れるような気がしたから。
でも、結局は、自分が可愛いだけだった。俺の何かが壊れるような気がした?ふざけるな。
俺の中は壊れなかった。だけど、代わりにシャーリィの中が壊れたんだ。俺に拒絶された、悲しみ、苦しみ、痛み、不安、それらを全て押さえつけて、シャーリィは笑っていたのに。
俺がシャーリィを拒絶したんだ。自分は傷ついていない、俺の分の傷は、シャーリィが全部背負っていたのに。
シャーリィがメルネスになってしまった時は、助けたくて必死だった。
何故か?ステラが、悲しむと思ったから?
違う。あのときは、ステラも何も関係なく、ただシャーリィを元に戻したい、それだけを願って進んできた。
何故?何故、俺はシャーリィを元に戻したいと、そう思っていたんだ?
俺は、どうして彼女を助けようとしているんだ?
拒絶したんじゃないのか?今更、シャーリィは俺の話を聞いてくれるのか?
―――俺は何時でも、自分に虫のいい決断しかしていなかった。
シャーリィの気持ちも考えず、それをシャーリィのためだと思いこんで、それでシャーリィが喜ぶと思って。
シャーリィは今まで、俺にたくさんのことをくれた。たくさんのことを教えてくれた。たくさん、俺を支えてくれた。
俺は?シャーリィに何を与えてやれた?シャーリィに何を教えてやれた?シャーリィに、何をしてやれた?
俺は、シャーリィに甘えてばかりだった。
『ステラの傍にいてやらなきゃ。あいつは、ずっと一人ぼっちで、俺のことを待ってくれていた…』
違う、違う違う違う!俺はこんな言葉で、ただ逃げていただけだった!本当に一人ぼっちだったのは誰だよ?あのとき、本当に不安だったのは誰だよ?
俺のことを、夜遅くまで家に明かりをつけて、寝ないで待っていてくれてたのは誰だよ?いつでも、どんな時でも何も言わずに、俺の傍にいてくれたのは…
俺は、もう現実から逃げない。シャーリィの不安も、悲しみも、痛みも、全ての気持ちを、俺が受け止める。
そして、俺の本当の気持ちを――シャーリィに知ってほしいから。
今なら言える。俺の想いを、全部、全部、全部。
だから、俺のもとに戻っておいで。シャーリィの居場所は、ここにあるんだから。
…待ってるから。いつまでも、いつまでも。
「……信じてるよ、シャーリィ。」
――――――――
セネルの心の中を盛大に妄想。もりもりセネシャリ。つーかセネ→シャリ。セネシャリ大好き!
セネルがシャーリィを振った瞬間、セネルの好感度が大幅に下がった記憶があります。
ところでこれシャーリィって何回使ってるのかな…。※26回使っていました。