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守りたい、守られてる
だから、自分の腕の中で血塗れになっている自身の弟を見ても、何もできず全く動けず、ただ呆然と前を見据えていた。
どうしてこうなっている?
シェリアとソフィがこちらに向かってくる様子が目の端に映ったけど、そんなことさえどうでもよくて。
教官とパスカルがたった二人だけで敵に応戦しているのが見えて、「俺も行かなければ」という感情は不思議と沸いてこなくて。
ただただ、自分に体重を掛けて倒れてきている蒼い髪の毛を見つめるだけ。今のアスベルには精一杯。
何が起こったのかなんて、本当にわからない。
ただ、油断してたために後ろががら空きだったのと、自分の名前を叫ぶ声だけは鮮明に覚えている。
振り返った時には、自分の大切な人間は真っ赤に染まっていて。
自分を庇ってくれたのだと理解するのに時間は掛からなかったはずだが、アスベルの頭はその一瞬で思考を止めた。考える事さえ侭ならず、持っていた剣をいとも簡単に離して倒れる寸前の弟を受け止める。
今の彼は、戦い等どうでもよかった。
「アスベル退いて!」
漸くその声に気付いたかのように、はっと目を見開く。一体何回自分の名前を呼んだのだろうか、目の前の幼馴染は怒ったような表情をしながらアスベルを見つめている。
嫌だ、離したくない。離したら、こいつが、離れて行ってしまいそうで。遠くへ行ってしまいそうで。
馬鹿だと叫ばれた。貴方が変な意地を張っていると、その子は死んでしまう、と。
アスベルは弟を仰向けにして地面に横たえた。その向かいで素早く治癒術を掛け始めるシェリアとソフィをぼんやりと見つめながら、自身の腕が少なからず震えているのに気付く。
カタカタと小刻みに震えるそれを持ち上げると、掌が自分の血じゃない赤で真っ赤。アスベルの白い衣服も惜しみなく真っ赤に染まり、染み込んで赤黒く変色してきている。
ああ、嫌だ。こんなのは嫌だ。
自分を庇ってくれた大切な人は、脇腹に大きな穴が開いていて、貫かれていた。血がどくどくと止まらない。治癒術のおかげで若干穴は塞がりかけているが、彼の顔が青いのは変わらない。血の出し過ぎだ。
ひゅぅ、ひゅぅと薄い息の音が聞こえた。吸っているのにそのまま何処かへと通り抜けて行くような、それでも息をする音は彼がまだ生きているという証であり、同様に生気を吸われたようなアスベルの顔に表情が戻って行く。
弟の額についている血の跡を取ろうと思って、指で擦る。が、アスベルの手はお前が被害者なんじゃないかと思われるくらいに血がこびり付いていて、綺麗にするつもりが逆に額を汚してしまう。
その腕に、伸ばされた腕。
「にい、さん」
一言。たった一言、目の前の彼は呟いた。咄嗟に掌を掴んで、ぐっと握る。微かな温かさ。普段とは比べ物にならないくらいに下がっている体温。
でも、生きている。ちゃんと生きている。
「ヒューバー、ト」
「だい、じょうぶ、ですか?」
それはこちらの台詞だというのに。
守って貰ったのはこちらだというのに。
「何言ってんだ、お前は自分の心配をしろよ、俺、俺なんて」
「兄さんが無事、なら、それでいいんです」
良かった、と微かに微笑んだ。
守ってやるのは、俺だった筈なのに
また、守れなかったって
俺は、守られてばかりなのに
俺は、何一つ守ってやれていないのに
ぎり、と音がするくらいに、強く強く掌を握った。無意識のうちに零れた涙を、アスベルは拭う事をしなかった。
何時の間に弟は気を失っていたのだろうか、否、眠っていたのだろうか。目を瞑って、すぅ、と静かな息遣いが聞こえる。
今だ青白いままの彼の頬を指で撫でる。先程よりは、温かい気がした。
近くに落ちている自身の剣を拾い上げる。剣の柄がたちまち赤黒く汚れる。そんなことはどうでもいい。
向かってきた魔物を、音もなく一撃で仕留める。隠す気もなく垂れ流しにされているアスベルの殺気に気付いてか、マリクがこちらをちらりと見たが、溜息を一つついて何も言わなかった。
きっとマリクは気付いてくれた、アスベルのどうしようもなく抑えることができない感情に。
今回は、見逃してくれるようだ。
アスベルは剣を鞘に収めた。そうして、瞑っていた目を開く。
彼は再び剣を抜いた。
「今度は、俺が守る」
俺を守ってくれた、大切な大切な、俺の弟を。
――――――――
題名はOPの歌詞から。
アスベルって人を守るためなら自己犠牲も厭わないってイメージがあった。何故だ
とりあえず行きすぎた弟想い兄想い萌え
闇と表
はつこいというものは よん
彼、丸藤亮の起床は早く、というかデュエルアカデミアでの授業が始まるまでにはまだまだ十分すぎるほど時間が残されていて、寧ろ早すぎるだろうという時間。
軽く身なりを整えてから、今日の授業内容の確認、必要な教科書を引っ張り出しては内容の予習、そして昨日は何をやったかなどの復習、それを短く終えると自身のデッキの点検、調整。完璧すぎるほど完璧の彼は、まるで絵に描いたような人間だった。
それ故に、欠点などない。あったとしても、きっと誰にも気付かれないだろう小さな小さな、気にも留める必要が無いものだろう。
生まれついての天才で、何でもこなし何でもできる。それでも努力を怠らず、常に全力で取り組む。デュエルアカデミアきっての秀才。生徒たち皆の憧れの的。
そんな彼は、デッキ調整にじっくりと時間をかけた後、そろそろ朝食に向かおうと考え、デッキをまとめ、今日も頼む、そう呟きながらそれをしまう。
自分の部屋から階段を下りて少し進んだところに、オベリスクブルーの広い食堂が見える。もう既に鍵は開いていて、しかしこの時間はまだまだ一般生徒にとっては早い時間。扉を開けても生徒はまだほとんど見えないでいた。
パンを焼く香ばしい匂いが鼻に届き、珍しく腹が減ったなと思う。きょろ、と辺りを見回すと、見慣れた緑色の癖っ毛の後姿が見えた。その生徒は何か本を読んでいるようで、亮が食堂に入ってきた事には気付いていないようだった。
「藤原」
後姿に声をかけると、ピクリと肩を動かした後、後ろを振り向いて、藤原と呼ばれた生徒は亮の姿を確認してにこりと笑った。
藤原優介。亮の数少ない友人であり、控えめそうな見た目とは裏腹にデュエルの実力は亮と並ぶと言われている、天才の一人だ。亮とはまた違った魅力があり、彼の純粋さに惹かれるものも少なくない。
少々、変な趣味を持っているようだが。
「お早う丸藤。君も相変わらず早いね」
友人の横には、陰になって見えなかったが二、三冊本が重ねてある。重ねてある本はどうやら参考書のようで、本当に勉強熱心だなと感心してしまう。
しかし、彼の向かいに座ろうとした時、藤原は読んでいた本をぱたんと閉じる。表紙には『簡単な黒魔術・術式集』と不思議な筆記で書いてあった。随分熱心にそれを読んでいたな、という言葉が出かかったが飲み込み、何も聞かない、見ていないを決め込むことにした。
「ここで勉強していたのか?」
「ん、そうだよ。ここならお腹減っても大丈夫だし」
朝はお腹減りやすいし、お腹減ったら頭の中に入ってこなくなるし、藤原は笑いながらテーブルの上の本を自身の持っていたカバンに入れ、広々となったテーブルに腕を置く。
「今日は何かあったっけ?」
「筆記の小テストがある」
「ああ、そうだったね。丸藤はどう?勉強した?」
「出てくるだろうと思ったモノは一応目を通した」
さすが。小さく拍手をする藤原には、何の嫌味も妬みも籠っていない。彼のこの性格が、亮の心を開かせた一つの原因なのではないかと思う。
他愛のない会話をしながら過ごしていると、どれくらいの時間が経ったのだろう、気付いたら周りにはいつの間にか生徒がざわざわとざわめきあっていた。先程までの二人の空間とは逆転して、たくさんの生徒たちがひしめき合う食堂。これが普通の朝の風景だった。
不意に、藤原が周りをきょろきょろと見渡し始める。どうした、と声を掛けたら
「吹雪、いないみたいだね」
まだ寝てるんだろうなぁ、そう呟いた藤原は、急にそわそわしだした亮ににこりと笑いかけた。
「丸藤さ、吹雪を起こしに行ってきなよ」
「……は?何故、」
「早く来てほしいんだろ?だったら呼んできなって。席は俺がとっておくから」
食堂の外に押し出された亮は、多少困惑しながら、しかし少しだけ嬉しく思いながら歩き出した。
案の定、その男は眠っていた。
すーすーと気持ち良さそうに寝息を立てる目の前の生徒に、亮は溜息をついた。
天上院吹雪。亮、藤原の友人であり、彼もまた、二人と肩を並べるほどにデュエルの才能がある天才デュエリストだ。自称『学園のアイドル』で、その容姿や言動から女子に大層好かれる。
性格で少々、というか大幅にそのイメージを崩してしまいがちだが。
彼の容姿に関しては、亮だって綺麗だと思う。現に今、眠っている横顔は整っているし、男にしては長い睫毛が肌に影を付けているのも、彼だから綺麗だと思える。
何回か寝返りを打ちながら、むにゃむにゃと何かを喋っているが聞き取れない。胸に手を当てて深呼吸を一回すると、意を決したように吹雪の肩を掴んで軽く揺さぶった。
「吹雪、起きろ。授業に遅れてしまうぞ」
うー、と小さく呻いて、ゆっくりと目を開ける。完全に開ききってはいないが、亮を認識するのには十分だろう。予想よりも簡単に起きてくれて、内心ほっとする。むくりと上半身を置きあがらせて、瞳はぼーっと宙を彷徨っている彼の長く茶色い髪の毛は若干寝癖がぴょこぴょこと付いていて、それを見て小さく笑った。
同時に、可愛いなどと思ってしまった自分がひどく恥かしい。
「吹雪、お早う。起きて、朝食の時間だ」
「………ん……?りょう………?」
若干舌っ足らずな口調で名前を呼ばれ、心臓が小さく跳ねる。吹雪は目をごしごしと擦ってから、もう一度半開きの瞳で亮を確認すると、
「亮……お早う。」
へらりとした屈託のない笑顔でそう言った。
この辺りから亮の思考は停止していて、吹雪に毛布をぶっかけて肘鉄を喰らわした事も、「ぎゃん!!」と叫んだ友人を放置して食堂まで全速力で走ってきた事も、全て亮にとっては曖昧な記憶だった。
故に、亮は何故自分が吹雪を連れずに食堂に帰って来たのかも、若干息が上がっているのかもわかっていない。
彼から向けられた、あの笑顔は覚えているというのに。
走ってきた所為なのか、心臓が動悸を止めない。わかっている、動悸が止まらない理由。走ってきたからなどでは決してない、この気持ち。
「それお前逃げてきただけだろ!何で逃げてくるんだよ!」
「知らん知らん、あんな風に笑うのが悪い!俺は悪くない!どんな反応していいか分からない!」
「だからって肘鉄はちょっと……吹雪今頃泣いてるかもよ」
「っ!!」
「わかってるよ、君が吹雪を泣かせるつもりじゃ無かったってのは。だから部屋まで朝ごはん持って行って謝ろうな」
彼からは想像もできない落ち込みように、藤原が大きく溜息をついた。こいつは、吹雪の事になるととても面倒くさい、流石の彼でもそう思わざるを得なかった。
生まれついての天才で、何でもこなし何でもできる。それでも努力を怠らず、常に全力で取り組む。デュエルアカデミアきっての秀才。生徒たち皆の憧れの的。
完璧を絵に描いたような、そんな人物である丸藤亮。
そんな彼の欠点は、友人である天上院吹雪に恋をしていることであり、そしてそれが彼にとっての『初恋』だということであり、藤原以外が知る由もない、小さくて大きなものだった。
――――――――
前回書いた奴は気に入らなかったので削除させていただき、新しいのを再び。
え、メインの亮→吹が後半しかもちょこっと…だと…?!なんも考えないで書きましたすみません(死
藤原と亮が仲良いともえるって話(関係無い
無題
デュエルアカデミアの岩山で化石を掘っていた時
あの恐竜が大好きな彼が近付いて来て、何をしているのかと聞かれた。
ハットを被った青年は、化石を発掘しているんだ、そう答えた。
眠っている化石は、自分達が発掘されるのを今か今かと待ち望んでいるから、俺がこの中から出してあげようと思うのさ。そう言って、彼は大きなワニに同意を求めるかのように笑いかけた。
恐竜の彼は、生の恐竜は好きなようだが既に骨だけになった恐竜はあまり好きではないらしいのだが。
ふーん、と暫く青年の作業を目で追っていた。
かつかつ、岩を叩く音が聞こえる。
只管に、かつかつ、かつかつ、たまにガツンと大きい音がする。
たまに青年がふう、と息をつく呼吸以外、彼らの口から零れるものはなかった。青年はただただ化石を掘り出し、恐竜少年はその作業を声も出さずに眺め続けている。
ついでに言うと、ワニが時たま欠伸をするかのように口を大きく開けては閉じ、開けては閉じを繰り返したり。
ふいに少年が立ちあがり、青年の隣に立って岩をペタペタ触り始めた。
その行動が気になり、どうしたんだと声を掛けてみる。
すると、
「ここに居る恐竜さんが、早く出してくれって言ってるザウルス!」
目をキラキラに輝かせて、少年は岩をトントンと叩いた。
筋肉質な見た目に似合わず無邪気な行動を起こす少年に、青年は笑いを零した。早く出してやろうな、そう言って、今まで自分が掘ってきた部分は後回し、少年の言う岩をこつこつと掘り始める。
恐竜のこととなると、彼は本当に純粋だ。
隣の少年と話しながら、青年はそう思った。
いつの間にか日は落ち始めて、地面は光が無いと若干周りが見えないというくらいには暗く染まってきた。
それでも青年は掘る事を止めず、未だにかつかつ、かつかつと音を響かせている。
がつん、と強く叩いたら、ぽろりと何かが落ちてきた。
掘っていた化石の一部であろう、小さい骨が落ちていた。
細長くて小さいそれは、腕から指にかけた部分かなぁと想像しながら角度を変えて何度も観察する。
隣からの熱い視線に気づいたのは、その時だ。
生の恐竜が良いなんて言いながらも、やはり恐竜にならどんなのもにでも反応する。小さい骨を差し出すと、それを大事そうに掌に乗せて、じっとそれだけを見つめる。
「何の恐竜の骨ザウルス?」
「NO、それは俺にもまだわからないさ」
「だよなぁ」
俺だってわかんないし、そう呟きながら掌の骨をくるくると回す。
「良かったら、それはダイノボーイにあげよう」
「え、ほんとドン?」
「youがいなかったら、そいつはExcavationできなかったからね」
「そうかぁ……でも、ほんとに良いザウルス?」
「ああ、そいつもyouの所に行きたがっているようだし、ついでに俺とのThe first共同作業の記念にも、な」
こんな小さな骨でも、彼はにっこりと笑って喜んでくれた。
それが嬉しくて、青年もにこりと笑った。
――――――――
ジムと剣山には本当に仲良くしてもらいたいです。
お前らお似合いだよ!(コンビ的な意味で
ところで剣山に『少年』という表現は間違っているだろうか。でも『青年』でもピンとこないのだよ…
主と従者(PH:エリオットとリーオ)
「うん、わかった」
「ねー、椅子とかない?あそこにある本取れないんだ」
「馬鹿、そんなの俺が取ってやる。椅子に上るなんて危ないだろうが」
「そう?」
「森の中にネコが入り込んじゃったんだよ」
「探しに行くのか?」
「別に、僕一人でも行けるよ」
「俺も一緒に行くに決まってるだろ。俺から離れるなよ、お前すぐ迷子になるから」
「わかった」
「お前、自分の部屋くらい片付けろ!」
「エリオットが片付け手伝ってくれるなら片付けるよ」
「いっつも手伝ってるじゃねーか!ったく……」(片付ける
「リーオ、危険な場面に出くわしたら、お前は俺の後ろに隠れてろ。無理に攻撃しようとするな」
「うん、そうするよ」
「僕って君の事守れた事ないよね」
「あ?良いだろ別に、俺がお前を守るんだから」
「ねぇ、どっちが主なの?」
「はぁ?俺に決まってるだろうが」
「………だよねぇ」
――――――――
パンドラでエリリオ主従。
リーオはエリオットに守られてばっかりだなぁと思う。それがこの主従の萌えどころだと思う(お前