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2026年06月15日
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雪(白哉と恋次)
2010年12月19日
廊下を歩いていた時に、はらりと舞った白い結晶。
最初は気の所為だと思って気にしなかったが、目の前を一粒、二粒、落ちてくる結晶が次第に多くなっていくことで、これは現実なのだと頭で理解した。
ゆっくりと、けど確実に地面に向かって落ちてくる白。
それが綺麗で、少しの間空をじっと見つめていた。
廊下から外へ出て、はらはら落ちる白を自身の手に納めてみた。手に静かに乗った結晶は、音も無く一瞬にして消える。後に残ったのは小さい水の雫だけで、それを見て恋次は本当に確信した。
―――雪!!
大股で隊舎の中へ戻り、浮かれているような足取りで歩く恋次は、六番隊隊員達からは「機嫌が良い」と微笑ましく思われ、他隊舎の隊員からは訝しげな眼で見られる。
そんな小さい事、今の彼からすれば全く関係無いし、気にしている暇もない。
もっともっと重大な事があるのだから!
持っている資料さえも振り落としてしまいそうな勢いに、この野良犬が相当はしゃいでいるのが伝わる。
勢い良く執務室の戸を開けると、外の様子など気にも留めない、六番隊隊長が筆をさらさらと走らせているのが一番に目に映った。
眼は机上の資料から離さず、恋次が戻ってきても少し目を向けただけで、直ぐに逸らす。
そんな白哉の机に資料を半分置きながら、恋次は口を開いた。
「隊長、雪っスよ、雪」
「………ゆき?」
「もうそんな時期なんすねぇ。道理で寒い訳ですよ」
そう言いながら、彼の表情は至極嬉しそうで。それをみて白哉はちらと彼を見る。
「……雪など、毎年降るだろう。何をそんなに騒ぐ必要がある」
「たった数日しか降らないじゃないすか。明日積もっかなぁ」
態々執務室の戸を完全に開ける。冷たい空気が入り込んできて、流石の白哉も眉を寄せた。早く閉めろと口を開きかけたが。
「さっきよりも降る量増えてる!」と叫びながら、恋次が戸を全開にしたまま外に飛び出た。
言葉を失った口は、中途半端に開いたまま。
少しの間黙っていたが、筆を机に置いて静かに腰を上げた。
立ちあがって戸をほんの少しだけ閉める。その隙間から外を伺うと、自分の副官である男が雪を見ながら両手を広げて歓声を上げている所だった。
白の結晶は止まる事を知らないかのように、次々とはらりはらり。落ちてくる。
息を吐くと白くなった。やはりもうそんな時期なのか、改めて実感する。
副官にもう一度視線を戻すと、彼は周りにいる隊士を巻き込みながら未だに雪に感動している。
道行く隊士達に雪が降っている事を伝えているのか、楽しそうに笑う顔。
今にも駆け出しそうな(実際駆け出したのだが)、忙しない姿。
その恋次の姿を見つめながら、ふと、白哉の頭に一つの言葉が思い浮かんだ。
「……犬、か……」
ふ、とほんの小さく笑った。
――――――――
雪降ったね!ということで
恋次は雪降ったら犬並みにはしゃげばいい。猫みたいに寒いのが苦手で部屋に籠ってるのも可愛いけど!
最初は気の所為だと思って気にしなかったが、目の前を一粒、二粒、落ちてくる結晶が次第に多くなっていくことで、これは現実なのだと頭で理解した。
ゆっくりと、けど確実に地面に向かって落ちてくる白。
それが綺麗で、少しの間空をじっと見つめていた。
廊下から外へ出て、はらはら落ちる白を自身の手に納めてみた。手に静かに乗った結晶は、音も無く一瞬にして消える。後に残ったのは小さい水の雫だけで、それを見て恋次は本当に確信した。
―――雪!!
大股で隊舎の中へ戻り、浮かれているような足取りで歩く恋次は、六番隊隊員達からは「機嫌が良い」と微笑ましく思われ、他隊舎の隊員からは訝しげな眼で見られる。
そんな小さい事、今の彼からすれば全く関係無いし、気にしている暇もない。
もっともっと重大な事があるのだから!
持っている資料さえも振り落としてしまいそうな勢いに、この野良犬が相当はしゃいでいるのが伝わる。
勢い良く執務室の戸を開けると、外の様子など気にも留めない、六番隊隊長が筆をさらさらと走らせているのが一番に目に映った。
眼は机上の資料から離さず、恋次が戻ってきても少し目を向けただけで、直ぐに逸らす。
そんな白哉の机に資料を半分置きながら、恋次は口を開いた。
「隊長、雪っスよ、雪」
「………ゆき?」
「もうそんな時期なんすねぇ。道理で寒い訳ですよ」
そう言いながら、彼の表情は至極嬉しそうで。それをみて白哉はちらと彼を見る。
「……雪など、毎年降るだろう。何をそんなに騒ぐ必要がある」
「たった数日しか降らないじゃないすか。明日積もっかなぁ」
態々執務室の戸を完全に開ける。冷たい空気が入り込んできて、流石の白哉も眉を寄せた。早く閉めろと口を開きかけたが。
「さっきよりも降る量増えてる!」と叫びながら、恋次が戸を全開にしたまま外に飛び出た。
言葉を失った口は、中途半端に開いたまま。
少しの間黙っていたが、筆を机に置いて静かに腰を上げた。
立ちあがって戸をほんの少しだけ閉める。その隙間から外を伺うと、自分の副官である男が雪を見ながら両手を広げて歓声を上げている所だった。
白の結晶は止まる事を知らないかのように、次々とはらりはらり。落ちてくる。
息を吐くと白くなった。やはりもうそんな時期なのか、改めて実感する。
副官にもう一度視線を戻すと、彼は周りにいる隊士を巻き込みながら未だに雪に感動している。
道行く隊士達に雪が降っている事を伝えているのか、楽しそうに笑う顔。
今にも駆け出しそうな(実際駆け出したのだが)、忙しない姿。
その恋次の姿を見つめながら、ふと、白哉の頭に一つの言葉が思い浮かんだ。
「……犬、か……」
ふ、とほんの小さく笑った。
――――――――
雪降ったね!ということで
恋次は雪降ったら犬並みにはしゃげばいい。猫みたいに寒いのが苦手で部屋に籠ってるのも可愛いけど!
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あし
2010年12月16日
「っつぁっ!!」
聞こえたのは真夜中。
部屋に響いた短い悲鳴に、翔はぱちりと目を覚ます。
何事かと思いながら上半身を上げるが、寝起きの頭の覚醒にはまだまだ時間がかかるらしく、ぼーっとしたままにきょろきょろと周りを見渡す。今の悲鳴は聞き違いか、夢でも見ていたのかな、そう思う。悲鳴が上がるような夢を見ていた事に、少しだけ身震いした。
「……う、ぐぅ……っ」
聞き違いなどではない、明らかにその声は現実の自分の耳に入り込んでくる人間の声、それは確実に自身の上から聞こえてくるもので。
再び聞こえてきた呻き声で完全に意識がはっきりし、まさか、と思いながら慌てて二段目のベットから梯子も使わずに飛び降りる。あまり高さが無かったお陰か、難無く床に着地した。
「アニキ!」
「…つ、ぅ……ぅ」
「アニキ!どうしたの?!大丈夫?!」
返ってくるのは苦しげな呻き声だけで、返事はない。
きつく目を閉じたまま、十代は包まっていた布団を蹴飛ばしてシーツを強く握っていた。表情は苦痛に歪み、額には脂汗、息も荒い。普段の彼からは考えられないくらいに弱っている姿。
世界の終りが訪れたのかと、混乱していた翔は本気でそう思った。
このまま放っておくと十代は死んでしまうのではないか、考えたく無くても自然と頭に浮かぶ最悪な結末に、恐怖で動けなくなる。
目の前が涙でぼやけていくのを感じながら、翔はただ目の前で叫んだ。
「アニキっ!死んじゃ嫌だよ!」
「……は、………はぁ、はぁッ……」
呻き声は聞こえなくなり、代わりに苦しげな息遣いだけ聞こえてくる。それでも先程までの苦痛の表情は和らぎ、暫く呼吸を続けた後、ふう、と小さく息を吐いた。
翔が目を開けたとき、十代は元の彼に戻っていた。未だに少し額に汗が浮かんでいるが、服の袖でそれを拭うのを見ながら翔が泣きそうな声を上げる。
「アニキぃぃぃ!!死んじゃうかと思ったよおぉぉ!!」
「あ……翔、ごめんな、起して」
「良いんすよ!アニキが無事ならそれで…!」
目の前の小さい同年代の頭を撫でながら「さんきゅ」と笑う十代は、やはりいつもの十代で。
では、先程の異常な苦しみ方は何だったというのだろう。先程の変わりようを感じさせないほどに、十代はいつも通りに戻っている。
何があったのかと、翔は聞いた。十代にとって話したくない出来事なのかもしれないが、これからも彼がこんな苦しむ様を見る事になったらきっと自分は耐えられない。知る必要があると思ったのだ。
何かの病気だったら、自分にできる事は何も無いかもしれない。でも、少しでも彼の手助けをしたい。
真剣な眼差しで見つめられ、苦笑して頬を掻きながら口を開いた。
足を、撫でたまま。
「別に言うほどの事でもないんだけどさ」
「そんなこと無いよ!あんなに苦しんでたのに」
「……俺も、これでこんな苦しんだのは小さい時以来だなぁ」
やはりよくあることなのか。思った通り何かの病気なのか。
翔はぐっと力を入れて、十代の次の言葉を待った。
「久しぶりだったんだよ……足攣るの」
――――――――
な ん だ こ れ
足攣るだけの話でした
聞こえたのは真夜中。
部屋に響いた短い悲鳴に、翔はぱちりと目を覚ます。
何事かと思いながら上半身を上げるが、寝起きの頭の覚醒にはまだまだ時間がかかるらしく、ぼーっとしたままにきょろきょろと周りを見渡す。今の悲鳴は聞き違いか、夢でも見ていたのかな、そう思う。悲鳴が上がるような夢を見ていた事に、少しだけ身震いした。
「……う、ぐぅ……っ」
聞き違いなどではない、明らかにその声は現実の自分の耳に入り込んでくる人間の声、それは確実に自身の上から聞こえてくるもので。
再び聞こえてきた呻き声で完全に意識がはっきりし、まさか、と思いながら慌てて二段目のベットから梯子も使わずに飛び降りる。あまり高さが無かったお陰か、難無く床に着地した。
「アニキ!」
「…つ、ぅ……ぅ」
「アニキ!どうしたの?!大丈夫?!」
返ってくるのは苦しげな呻き声だけで、返事はない。
きつく目を閉じたまま、十代は包まっていた布団を蹴飛ばしてシーツを強く握っていた。表情は苦痛に歪み、額には脂汗、息も荒い。普段の彼からは考えられないくらいに弱っている姿。
世界の終りが訪れたのかと、混乱していた翔は本気でそう思った。
このまま放っておくと十代は死んでしまうのではないか、考えたく無くても自然と頭に浮かぶ最悪な結末に、恐怖で動けなくなる。
目の前が涙でぼやけていくのを感じながら、翔はただ目の前で叫んだ。
「アニキっ!死んじゃ嫌だよ!」
「……は、………はぁ、はぁッ……」
呻き声は聞こえなくなり、代わりに苦しげな息遣いだけ聞こえてくる。それでも先程までの苦痛の表情は和らぎ、暫く呼吸を続けた後、ふう、と小さく息を吐いた。
翔が目を開けたとき、十代は元の彼に戻っていた。未だに少し額に汗が浮かんでいるが、服の袖でそれを拭うのを見ながら翔が泣きそうな声を上げる。
「アニキぃぃぃ!!死んじゃうかと思ったよおぉぉ!!」
「あ……翔、ごめんな、起して」
「良いんすよ!アニキが無事ならそれで…!」
目の前の小さい同年代の頭を撫でながら「さんきゅ」と笑う十代は、やはりいつもの十代で。
では、先程の異常な苦しみ方は何だったというのだろう。先程の変わりようを感じさせないほどに、十代はいつも通りに戻っている。
何があったのかと、翔は聞いた。十代にとって話したくない出来事なのかもしれないが、これからも彼がこんな苦しむ様を見る事になったらきっと自分は耐えられない。知る必要があると思ったのだ。
何かの病気だったら、自分にできる事は何も無いかもしれない。でも、少しでも彼の手助けをしたい。
真剣な眼差しで見つめられ、苦笑して頬を掻きながら口を開いた。
足を、撫でたまま。
「別に言うほどの事でもないんだけどさ」
「そんなこと無いよ!あんなに苦しんでたのに」
「……俺も、これでこんな苦しんだのは小さい時以来だなぁ」
やはりよくあることなのか。思った通り何かの病気なのか。
翔はぐっと力を入れて、十代の次の言葉を待った。
「久しぶりだったんだよ……足攣るの」
――――――――
な ん だ こ れ
足攣るだけの話でした
一緒に(イチウリ)
2010年12月12日
「君は少し勘違いをしているようだから言って置くけど」
誰もいない教室に、雨竜の声だけが響き渡る。
その言葉は彼の目の前にいるオレンジ色の髪の死神代行に向けられたもので、しかし当の彼はその言葉の意味がわからないとでも言うように首を僅かに傾げる。
机の中にある教科書やらノートを鞄に詰めながら、一護に目を向けずに続ける。
「僕達は確かに共闘した。協力したと言っても良いものか分からないけど、確かに共に戦った」
「ああ、そうだな」
「だけど、只それだけだ。だから別に僕は君の事を仲間やら何やらだとは思ってない」
教科書をトントンと束ねながら、彼は静かにそう言い放った。
そんな事を言えば目の前の死神の眉間に皺が深く刻まれるのを知っている。知っているから、敢えて彼の癇に障りそうな言葉を紡ぐ。眼鏡をかちゃりと上げながら、鞄を肩に掛ける。
今度は、一護の方から「オイ」と声が掛かる。ゆっくりと顔を上げた。
「俺は一緒に帰ろうぜって言っただけだろ。なのに何でそんなに話の内容が広がってんだよ」
「だから、君のその発言が問題なんだろ。何で君と帰らなくちゃならないんだ」
「一緒に帰るのに理由が必要かよ」
「僕と君は滅却師と死神、敵同士だ。死神と帰るなんて御免だね」
眉間の皺は先程より深いが、彼の声に明らかな怒気は含まれていない。大方、「コイツまだそんなめんどくせぇ事言ってんのかよ」とでも呆れているのだろう。
雨竜にとって、一護に呆れられる事など大した問題ではない。只、彼の神経は疑うものがある、とは思っているが。
確かに、雨竜の死神への感情は一護に出会ってから若干変わっただろう。しかしそれもほんの少し、一握りにもならない程度。結局どんな事があろうと、雨竜にとって死神は敵で、憎むべき存在なのは変わらない感情なのだ。それは一護も十分理解している。
でも、だからこそ「分かり合おう」と思うのは、可笑しい事なのだろうか。
「はっきり言っておくが、僕は君が、死神が嫌いだ。もう僕に構うなよ」
一護からすれば、「絡んで来たのはお前の方だろうが」である。
そんな一護の気を余所に、滅却師の青年はさっさと踵を返し、彼に背を向けて歩き去ろうとする。それを若干の苛立ちを含ませた目で見つめた後、一護も雨竜の後ろを付いて行く。
「………まだ何か用なのか」
「あ?使ってる生徒用玄関は一緒だろ。そこまでは強制的に一緒でも文句言えねーだろうが」
「僕が出て行った後に出れば問題ないだろ」
「お前の後に出るのが癪だったんだよ」
暫く無言で黙々と廊下を歩く二人の姿は、如何にも険悪なムードが否めない。一護の「普通に仲良くしたい」気持ちと雨竜の「死神とは仲良くなれない」気持ちがぶつかり合って相殺された結果である。
水色曰く「一護と石田くんは似た者同士だね」という事らしいが、正直言って俺の何処がコイツに似てるというのか。俺はこんなに意地っ張りじゃないし、こんな小さい事に何時までもこだわる程器が小さいつもりも無い。
そんな事をもやもやと考えている内に、いつの間にか目の前には生徒の下駄箱。反応が遅れてうっかり下駄箱に激突すると、雨竜が驚いたような呆れたような目線を此方に向けていた。
靴を乱暴に出す。しっかりと並べたままに地面に置く。こんな所でも、二人の違いが出てくるのだ。
「もう一回聞くけど」
さっさと靴を履いた一護が、後ろを振り向きながら口を開いた。眉根の皺は、勿論消えていないままだが。
「一緒に帰ろうぜ?」
「……まだ言ってるのか」
流石に諦めていたものとばかり思っていたのに、彼の粘り強さと頑固さを忘れていたようだ。
はあ、と態と聞こえるように溜息を零す。それを聞こえない振りを決め込んだまま、じっと目を逸らさない。
先に歩を進めたのは、雨竜の方だった。
答えもしないままに歩き始めたその青年に「オイ!」と声を掛けようとする。明らかなシカトは流石に腹が立つものだ。
「好きにしなよ」
すぐ横を通り抜けた瞬間に、小さく聞こえた短い言葉。
言おうとした文句は、喉の奥に引っ込んでしまった。言葉を失った開いた口は、意味も無く開いたまま。
当の彼は、一護に目もくれずに外への歩を進める。
慌ててその後ろ姿を追いかけて、若干距離がありながらもしっかりと隣に立って歩調を合わせる。
肯定された訳ではないけど、拒絶された訳でもない。その事実が、ほんの少しだけ嬉しかった。
「一歩前進」と呟いたら、雨竜に訝しげな目線を投げられた。
――――――――
一護と雨竜の友情って恋愛ぐらいもにゃもにゃしてそうだよね!っていう話
しょっちゅう一緒に帰ろうとか誘ってたら可愛い。そんでその度に言い合いしてればいい
……カプものにしては温い気がする(いつものこと
誰もいない教室に、雨竜の声だけが響き渡る。
その言葉は彼の目の前にいるオレンジ色の髪の死神代行に向けられたもので、しかし当の彼はその言葉の意味がわからないとでも言うように首を僅かに傾げる。
机の中にある教科書やらノートを鞄に詰めながら、一護に目を向けずに続ける。
「僕達は確かに共闘した。協力したと言っても良いものか分からないけど、確かに共に戦った」
「ああ、そうだな」
「だけど、只それだけだ。だから別に僕は君の事を仲間やら何やらだとは思ってない」
教科書をトントンと束ねながら、彼は静かにそう言い放った。
そんな事を言えば目の前の死神の眉間に皺が深く刻まれるのを知っている。知っているから、敢えて彼の癇に障りそうな言葉を紡ぐ。眼鏡をかちゃりと上げながら、鞄を肩に掛ける。
今度は、一護の方から「オイ」と声が掛かる。ゆっくりと顔を上げた。
「俺は一緒に帰ろうぜって言っただけだろ。なのに何でそんなに話の内容が広がってんだよ」
「だから、君のその発言が問題なんだろ。何で君と帰らなくちゃならないんだ」
「一緒に帰るのに理由が必要かよ」
「僕と君は滅却師と死神、敵同士だ。死神と帰るなんて御免だね」
眉間の皺は先程より深いが、彼の声に明らかな怒気は含まれていない。大方、「コイツまだそんなめんどくせぇ事言ってんのかよ」とでも呆れているのだろう。
雨竜にとって、一護に呆れられる事など大した問題ではない。只、彼の神経は疑うものがある、とは思っているが。
確かに、雨竜の死神への感情は一護に出会ってから若干変わっただろう。しかしそれもほんの少し、一握りにもならない程度。結局どんな事があろうと、雨竜にとって死神は敵で、憎むべき存在なのは変わらない感情なのだ。それは一護も十分理解している。
でも、だからこそ「分かり合おう」と思うのは、可笑しい事なのだろうか。
「はっきり言っておくが、僕は君が、死神が嫌いだ。もう僕に構うなよ」
一護からすれば、「絡んで来たのはお前の方だろうが」である。
そんな一護の気を余所に、滅却師の青年はさっさと踵を返し、彼に背を向けて歩き去ろうとする。それを若干の苛立ちを含ませた目で見つめた後、一護も雨竜の後ろを付いて行く。
「………まだ何か用なのか」
「あ?使ってる生徒用玄関は一緒だろ。そこまでは強制的に一緒でも文句言えねーだろうが」
「僕が出て行った後に出れば問題ないだろ」
「お前の後に出るのが癪だったんだよ」
暫く無言で黙々と廊下を歩く二人の姿は、如何にも険悪なムードが否めない。一護の「普通に仲良くしたい」気持ちと雨竜の「死神とは仲良くなれない」気持ちがぶつかり合って相殺された結果である。
水色曰く「一護と石田くんは似た者同士だね」という事らしいが、正直言って俺の何処がコイツに似てるというのか。俺はこんなに意地っ張りじゃないし、こんな小さい事に何時までもこだわる程器が小さいつもりも無い。
そんな事をもやもやと考えている内に、いつの間にか目の前には生徒の下駄箱。反応が遅れてうっかり下駄箱に激突すると、雨竜が驚いたような呆れたような目線を此方に向けていた。
靴を乱暴に出す。しっかりと並べたままに地面に置く。こんな所でも、二人の違いが出てくるのだ。
「もう一回聞くけど」
さっさと靴を履いた一護が、後ろを振り向きながら口を開いた。眉根の皺は、勿論消えていないままだが。
「一緒に帰ろうぜ?」
「……まだ言ってるのか」
流石に諦めていたものとばかり思っていたのに、彼の粘り強さと頑固さを忘れていたようだ。
はあ、と態と聞こえるように溜息を零す。それを聞こえない振りを決め込んだまま、じっと目を逸らさない。
先に歩を進めたのは、雨竜の方だった。
答えもしないままに歩き始めたその青年に「オイ!」と声を掛けようとする。明らかなシカトは流石に腹が立つものだ。
「好きにしなよ」
すぐ横を通り抜けた瞬間に、小さく聞こえた短い言葉。
言おうとした文句は、喉の奥に引っ込んでしまった。言葉を失った開いた口は、意味も無く開いたまま。
当の彼は、一護に目もくれずに外への歩を進める。
慌ててその後ろ姿を追いかけて、若干距離がありながらもしっかりと隣に立って歩調を合わせる。
肯定された訳ではないけど、拒絶された訳でもない。その事実が、ほんの少しだけ嬉しかった。
「一歩前進」と呟いたら、雨竜に訝しげな目線を投げられた。
――――――――
一護と雨竜の友情って恋愛ぐらいもにゃもにゃしてそうだよね!っていう話
しょっちゅう一緒に帰ろうとか誘ってたら可愛い。そんでその度に言い合いしてればいい
……カプものにしては温い気がする(いつものこと
アニキと恐竜
2010年12月11日
海が良く見える崖の縁の方で、赤い上着が風に靡いているのが見えた。
あ、と思った時、赤い上着の彼が振り返り、木々の間越しに目が合った。
何だかすごく久しぶりに会った気がする、そう思いながら何となく動かないでいると、彼が此方の名前を呼んだ。昔より、若干低い声で。
「剣山じゃないか」
草を跨いで、視界が悪かった森の外に出る。森が暗かったためか、急に目に入ってきた太陽の光に頭がくらりとした。何度か瞬きをした後、漸くぼやけた視界がしっかりと鮮明に映し出される。
最初に目に映ったのは、やはり先程の鮮やかな赤。
彼はもう此方を振り向く気配はなかったが、別に来るなと言っている訳でもない。ただただ黙って、何処までも続く青を見つめていた。
長い間見てきた横顔の雰囲気が少し違うような気がして、うっかりじっと見てしまう。
気付いた十代も、じっと見る剣山に少しだけ苦笑を漏らして、やはり何も言わない。
笑う時の顔も昔と違う。大人びた、と言うべきか。それとも、笑い方を忘れてしまったのか。
「どっち見てるドン?」
「…どっちって、どれとどれの事だ?」
「空と海」
「ああ、………その間かな」
ほんの少しだけ色の違う、海と空の青。
言葉を紡ぐ十代の顔は、やはり昔と何かが違う。
意味が無い問いかけをしても、意味が無い故に続かない。
沈黙は重くはない。だけど、何か落ち着かない。きっと、十代が口を開く事が無いからかもしれない。
「…アニキ、授業来いって、万丈目先輩が怒ってるザウルス」
「万丈目か、怒ってる顔が目に浮かぶな」
「明日香先輩も心配してるドン」
「……そ、か」
「丸藤先輩も、アニキの卒業の事すごい気に掛けてるザウルス」
そこまで言うと、十代は黙る。その顔は友人達が元気だという事を安堵しているのと同時に、悲しみに歪んでいるような、複雑な表情。口元は笑っているのに、眉は困ったように頼りなく下げられ。
元気を出せなど、そんな言葉は今の十代には届かないだろう。自分が言えた義理じゃないというのもある。十代がこんな事になったのは、少なからず自分達にも非があるのだ。
小さく溜息をついた事に剣山が気付く。憂いを帯びた目をしながら、真っ直ぐに見据えるのはそれでも青。
黙って隣に立っていていいのだろうか、ふと剣山はそう思った。
自分はどうという事は無いが、十代は居心地が悪いのかもしれない。沢山の事があったのだ、一人になりたい時期なのだろう。気を使うのは自分の方だ。
「アニキ、俺」
「剣山、ここで一緒に昼寝しようぜ」
え、と声を上げる前に、十代が勢い良く地面に寝転がる。腕で示され、戸惑いながらも彼の隣に座りこむ。
不思議そうに此方を覗き込む剣山に、青を見つめながら彼は笑った。
昔となんら変わらない笑顔。
(あ、)
見ていたのは自分だけ。
「空の青の方が、綺麗だと思わないか?」
目を瞑って空を見ないままにそう呟く。空は雲が途切れ途切れに舞っている程度で、薄めの青を隠すような大きな白は無い。
言葉を発しなくなった十代は、多分目を瞑っているだけで眠ってはいない。隣で座ったままの剣山が漸く草の上に体を横たえただろう音が聞こえて、彼は久しぶりに嬉しそうに笑った。
そのまま、小さくおやすみと呟いて、風の吹く音以外聞こえなくなる。
その小さな言葉を耳に入れながら、剣山は空が綺麗だと思った。
――――――――
四期始まってすぐだと思う(時間軸
十代と剣山が四期で超絡むから嬉しくて嬉しくて
あと青春くさい文が書きたかった。撃沈したけど。しかも十代って海の方が好きそうですよね^q^
あ、と思った時、赤い上着の彼が振り返り、木々の間越しに目が合った。
何だかすごく久しぶりに会った気がする、そう思いながら何となく動かないでいると、彼が此方の名前を呼んだ。昔より、若干低い声で。
「剣山じゃないか」
草を跨いで、視界が悪かった森の外に出る。森が暗かったためか、急に目に入ってきた太陽の光に頭がくらりとした。何度か瞬きをした後、漸くぼやけた視界がしっかりと鮮明に映し出される。
最初に目に映ったのは、やはり先程の鮮やかな赤。
彼はもう此方を振り向く気配はなかったが、別に来るなと言っている訳でもない。ただただ黙って、何処までも続く青を見つめていた。
長い間見てきた横顔の雰囲気が少し違うような気がして、うっかりじっと見てしまう。
気付いた十代も、じっと見る剣山に少しだけ苦笑を漏らして、やはり何も言わない。
笑う時の顔も昔と違う。大人びた、と言うべきか。それとも、笑い方を忘れてしまったのか。
「どっち見てるドン?」
「…どっちって、どれとどれの事だ?」
「空と海」
「ああ、………その間かな」
ほんの少しだけ色の違う、海と空の青。
言葉を紡ぐ十代の顔は、やはり昔と何かが違う。
意味が無い問いかけをしても、意味が無い故に続かない。
沈黙は重くはない。だけど、何か落ち着かない。きっと、十代が口を開く事が無いからかもしれない。
「…アニキ、授業来いって、万丈目先輩が怒ってるザウルス」
「万丈目か、怒ってる顔が目に浮かぶな」
「明日香先輩も心配してるドン」
「……そ、か」
「丸藤先輩も、アニキの卒業の事すごい気に掛けてるザウルス」
そこまで言うと、十代は黙る。その顔は友人達が元気だという事を安堵しているのと同時に、悲しみに歪んでいるような、複雑な表情。口元は笑っているのに、眉は困ったように頼りなく下げられ。
元気を出せなど、そんな言葉は今の十代には届かないだろう。自分が言えた義理じゃないというのもある。十代がこんな事になったのは、少なからず自分達にも非があるのだ。
小さく溜息をついた事に剣山が気付く。憂いを帯びた目をしながら、真っ直ぐに見据えるのはそれでも青。
黙って隣に立っていていいのだろうか、ふと剣山はそう思った。
自分はどうという事は無いが、十代は居心地が悪いのかもしれない。沢山の事があったのだ、一人になりたい時期なのだろう。気を使うのは自分の方だ。
「アニキ、俺」
「剣山、ここで一緒に昼寝しようぜ」
え、と声を上げる前に、十代が勢い良く地面に寝転がる。腕で示され、戸惑いながらも彼の隣に座りこむ。
不思議そうに此方を覗き込む剣山に、青を見つめながら彼は笑った。
昔となんら変わらない笑顔。
(あ、)
見ていたのは自分だけ。
「空の青の方が、綺麗だと思わないか?」
目を瞑って空を見ないままにそう呟く。空は雲が途切れ途切れに舞っている程度で、薄めの青を隠すような大きな白は無い。
言葉を発しなくなった十代は、多分目を瞑っているだけで眠ってはいない。隣で座ったままの剣山が漸く草の上に体を横たえただろう音が聞こえて、彼は久しぶりに嬉しそうに笑った。
そのまま、小さくおやすみと呟いて、風の吹く音以外聞こえなくなる。
その小さな言葉を耳に入れながら、剣山は空が綺麗だと思った。
――――――――
四期始まってすぐだと思う(時間軸
十代と剣山が四期で超絡むから嬉しくて嬉しくて
あと青春くさい文が書きたかった。撃沈したけど。しかも十代って海の方が好きそうですよね^q^
彼の美しさ(角←弓)
2010年12月05日
僕は美しいものが好きだ。
何だって良い、兎に角美しいものは、特に僕以上に美しいものは少しだけ妬んでしまうけど大好きだ。
そんな僕は、数字の中では『三』がお気に入り。数字で書くんじゃなくて、漢数字で書く方。
だから隊の中でも『第三席』が僕のお気に入り。見ているだけで良いんだけど、どうせなら僕はその美しい『三』の席に座っていたかった。
でも、三席は僕じゃない。三席は僕じゃ無く、もっと相応しい人に贈られた。
僕はそれに不満は無いし、全く気にしてなんて無い。
一角は、僕には無い美しさを持っている。
彼の頭の輝きが美しい訳じゃない。いや、一角の頭は他の一般の死神には無い美しい輝きを持っている。と僕は思っている。違う、頭の話じゃなくて。
彼は、楽しみながら闘っている。嬉しそうに楽しそうに、相手と命のやりとりをしている。
僕は、それが美しいと思う。
一角の闘っている姿、どんなものでも勝てないくらいに、美しく輝く。
だから、第三席は彼の物。僕は『三』の字に良く似ている『五』の数字を頂いている。
たまに僕を見てこう言う人がいる。
「お前は三席にもなれる実力を持っているのに、何故五席に甘んじている?」
そんなの決まっているじゃないか、四の字はあまり美しくない。さっきも言った通り、三の字が一番好きなんだ。でも、三は一角の物、僕は五で十分。
一角を蹴散らして三の数字を手に入れる、なんて、考えたことも無いし出来るとも思ってないしやりたいとも思わないし、寧ろそんなことおこがましい上に自分の実力を見誤っているにも程がある。
だって、一角は強いもの。
一角は、美しいんだ。僕以上に、何倍も何倍も。
そんな美しい彼には、三の数字が一番似合っていると僕個人は思う訳だ。
まあ、一角は『一』が一番好きだとは思うけどね。
僕は美しいものが好きだ。
だから、三の数字が好き。
三の数字が似合う、一角も好き。
僕以上に美しい、一角の闘う姿が好き。
一角が庭の方で朝の鍛錬をしている姿を見ながら、僕はそんな事を考えて顔を綻ばせた。
すると熱い視線を送る僕に気付いたのか、一角が訝しげな眼で此方を見ている。
「…お前、何ニヤニヤしてんだ。気持ちわりぃぞ」
美しい僕の事を「気持ち悪い」だなんて、一角じゃなかったら殴りかかってるところだけど。
僕は当然のように美しい。でも、一角は僕以上に美しい物を持っている。
だから、君なら僕に何を言っても問題ない。
僕の事を「気持ち悪い」って言っても良いのは、一角と隊長だけだからね。
「一角がかっこいいな~と思って、見惚れてた?」
自分でもわかるくらいにニコニコ笑ってたら、もっと怪しい物を見るような顔された。
全く、僕は一角の美しいところを全部理解してるっていうのに、一角が僕の美しさに気付くのは一体何時なのだろう?
――――――――
角弓好き!寧ろ角←弓が好き
一角の後ろにいつもくっついてる弓親は可愛い
何だって良い、兎に角美しいものは、特に僕以上に美しいものは少しだけ妬んでしまうけど大好きだ。
そんな僕は、数字の中では『三』がお気に入り。数字で書くんじゃなくて、漢数字で書く方。
だから隊の中でも『第三席』が僕のお気に入り。見ているだけで良いんだけど、どうせなら僕はその美しい『三』の席に座っていたかった。
でも、三席は僕じゃない。三席は僕じゃ無く、もっと相応しい人に贈られた。
僕はそれに不満は無いし、全く気にしてなんて無い。
一角は、僕には無い美しさを持っている。
彼の頭の輝きが美しい訳じゃない。いや、一角の頭は他の一般の死神には無い美しい輝きを持っている。と僕は思っている。違う、頭の話じゃなくて。
彼は、楽しみながら闘っている。嬉しそうに楽しそうに、相手と命のやりとりをしている。
僕は、それが美しいと思う。
一角の闘っている姿、どんなものでも勝てないくらいに、美しく輝く。
だから、第三席は彼の物。僕は『三』の字に良く似ている『五』の数字を頂いている。
たまに僕を見てこう言う人がいる。
「お前は三席にもなれる実力を持っているのに、何故五席に甘んじている?」
そんなの決まっているじゃないか、四の字はあまり美しくない。さっきも言った通り、三の字が一番好きなんだ。でも、三は一角の物、僕は五で十分。
一角を蹴散らして三の数字を手に入れる、なんて、考えたことも無いし出来るとも思ってないしやりたいとも思わないし、寧ろそんなことおこがましい上に自分の実力を見誤っているにも程がある。
だって、一角は強いもの。
一角は、美しいんだ。僕以上に、何倍も何倍も。
そんな美しい彼には、三の数字が一番似合っていると僕個人は思う訳だ。
まあ、一角は『一』が一番好きだとは思うけどね。
僕は美しいものが好きだ。
だから、三の数字が好き。
三の数字が似合う、一角も好き。
僕以上に美しい、一角の闘う姿が好き。
一角が庭の方で朝の鍛錬をしている姿を見ながら、僕はそんな事を考えて顔を綻ばせた。
すると熱い視線を送る僕に気付いたのか、一角が訝しげな眼で此方を見ている。
「…お前、何ニヤニヤしてんだ。気持ちわりぃぞ」
美しい僕の事を「気持ち悪い」だなんて、一角じゃなかったら殴りかかってるところだけど。
僕は当然のように美しい。でも、一角は僕以上に美しい物を持っている。
だから、君なら僕に何を言っても問題ない。
僕の事を「気持ち悪い」って言っても良いのは、一角と隊長だけだからね。
「一角がかっこいいな~と思って、見惚れてた?」
自分でもわかるくらいにニコニコ笑ってたら、もっと怪しい物を見るような顔された。
全く、僕は一角の美しいところを全部理解してるっていうのに、一角が僕の美しさに気付くのは一体何時なのだろう?
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角弓好き!寧ろ角←弓が好き
一角の後ろにいつもくっついてる弓親は可愛い