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(蜂:恩田と漆原)
声のした方向を見遣ると、猫を抱えている男が一人。
それは紛うことなく私の仕えている人物で、しかし彼の突拍子もない言動は日常茶飯事だったために私は余計なリアクションはしない。
その人は私をじっと見つめている。何かを伝えたいのかは分からないが、流石に私も言葉がないと彼の思考を読むのは不可能だ。いや、喋ったら喋ったで思考などまるで読めないことは分かっている。
彼は只管ににゃあ、にゃあと猫の鳴き真似をして私を見る。時折猫の腕を持ち上げてゆらゆら揺らしたり、掌を広げてみたりと、ジェスチャー付きで。
私は読んでいたスケジュール帳を閉じて、何ですかと声を掛けた。
この人を無視するなどということは許されないのだ。何しろ子供のような性格だから、すぐに拗ねてムキになってきっと拳銃を乱射し始めるだろう。それ以上に厄介なことだなんてきっとこの世に存在しないと言い切れる程にだ。
当の彼は、楽しそうな声色で上機嫌気味に話し出す。
「にゃー」
「………」
「にゃー。恩田ちゃんはにゃんこの呪いに掛けられてしまったためにゃん語しか話せなくなっちゃったにゃー」
どうやらそういう設定らしい。
大変だにゃー?と言いながら恩田さんは猫の頭に顔を埋める。恩田さんは動物には優しい。優しいと言っても人間の私達と比べては態度が柔らかいといっただけなのだが。
そもそも彼に優しいと厳しいの境界線があるのかさえ怪しい。彼にとってはそんな感情全て同じもので、そして下らないものなんだろう。
でもきっとこの人は動物が好きなのだろうと思う。この前も犬と戯れていたし、捨てられた犬猫に同情からか餌を買ってくる。そのときの顔は酷く無邪気で、本当に何を考えているか分からない人だと常に感じている。
恩田さんに抱えられている猫はお世辞にも綺麗とはいえなかった。また何処から拾ってきたのか知らないが、栗色の毛は遠目から見てもふわふわとは言えない。ところどころ泥で汚れているし、先程から思っていたが猫の毛が辺り一面に散らばっているのだ。
元から綺麗とは言えないこの部屋に今更猫の毛の十本や二十本、あまり変わりはないだろう。しかし、恩田さんはそれを嫌う。動物にはあれほど優しいのに、猫だって胸に抱いて頭を撫でながら寝てしまうくらいなのに。
部屋に毛が一本でも落ちてると、途端に不機嫌そうな顔になる。
何かこだわりがあるのだろうか。別に知りたいとは思わないが、どうにも不思議だ。
そんなことを思っている間にも、相変わらず猫語なる新しい言語を作って猫との会話を図り始める彼は、端から見ればただの無邪気な子供でしかない。
「…恩田さん。これからの予定が…」
「にゃにゃー!にゃんこ語以外今の俺には通じないにゃー!」
つまり聞きたくないらしい。統率力はあるのに本人はこんなにも面倒くさがり。耳を塞ぎながら猫に同意を求める恩田さんを見て、一つ溜息が零れた。勿論恩田さんに気付かれないように、こっそりと。
別にこのまま放置することも可能だが、これから大事な仕事がある。彼も大事だと言うことは理解してるとは思うが、何せ全て気分でものを決める人だ。仕事だ職務だ関係なく、やりたくない日はやらない。面倒くさい日はやらない。
しかし無理矢理引っ張っていくことは出来ない。出来る筈もない。
無言になった私にちらりと目を向けて、恩田さんは独り言のように猫に向かって呟いた。
「にゃんこの呪いを解くにはー、ウルちゃんからのちゅーが必要なんだにゃー?」
にゃー?と首を傾げると、恩田さんは同じように猫の首を傾ける。
目が合うと、彼は子供のような顔で楽しそうに笑っていた。
それはまるで挑戦しているような、誘っているような。揶揄っているような。
本気なのか遊びなのかなんて分からない。それも全てこの人の気分で決まる。きっと全て遊びなんだろうとは大方予想できる。彼に本気などと言う言葉は要らない。必要がない。
だからこの人の言っていることを、本気で捉える必要はないのだ。
彼の指からそっと猫を奪い取って、そのまま彼の唇に唇を落とした。猫を失った右手は不自然に宙に浮いたまま、別に私の服を掴むとか抵抗するとか、そんなことは一切しない。
これは本人が望んだことだから。
「呪いは解けましたね」
「………にゃーーーー」
「三十分までには車を出すので、それまでに準備しておいてください」
猫を地面に降ろすと、それは一目散に何処かに駆けていった。あとで掃除をしておかなければ。
恩田さんは少しだけ不満そうな表情をしていたが、まーいっか、とだけ呟いてソファに寝そべらせていた身体を漸く起こした。
一張羅のコートには猫の毛が大量についている。それを落とすこともせずに、ポケットに手を入れてスキップに近い形で歩き出す。
「恩田さん、コートを猫の毛を…」
「いーらないっ。たまにはこんなのも良さげじゃーん」
笑う顔はやっぱり子供に近く、でも考えることは子供の容量を超える。
歩きながら猫の毛をぱらぱらと地面に落としていくのをその姿を見つめて、ああこれは一応新しいコートも準備した方が良さそうだと思った。
――――――――
何が書きたかったのかはわたしにも分かりません
でも言いたいことは恩田ちゃん超可愛いってことです
恩田ちゃんは動物好きそうだけど、動物の毛だけ見ると「うわっ汚い」って思う人種だと思う
けいたいろぐ
携帯画面で見たらかなり長い感じだったんだけどやっぱパソで見ると短くなる
と思ってたけど予想以上に長くなってたからよかった
見事に他ジャンルばっかり
1.ボッスイ(スケダン)
2.安スイ(スケダン)
3.虎兎(タイバニ)※ちょっとだけ注意。ぬるいけど。R15にまでも達しないけど
因みに途中で何書いてるかわからなくなってることばっかりなのでぐだぐだしてます
そしてわたしは安椿が好きですが正直スイッチ受けならなんでもいいです(果てしなくどうでも良い
なんて夏の日(スケダン:ボッスイ)
しょうがない、だって今は夏なのだから。しかも8月の初めという、一番ピークな時期なのだから。
毎日のように頭につけている、俺のチャームポイントといえよう帽子のお陰で毎日頭が蒸れる。後頭部の頭皮がいつも暑くて、帽子を脱いだらすっきりする。帽子を脱ぐと俺の頭からもわりと熱気が出てきて、何度も暑苦しいと何故か頭をはたかれた。
別に無理に付ける理由はないのだが、俺はこの帽子を外すとたちまち影が薄くなるらしい。だって俺みたいな髪型のヤツなんていっぱい居るもん。それはもうしょうがないもん。でも俺よりも目立たなそうなスイッチよりも、帽子を外したときの俺は個性が皆無に等しいらしい。全部ヒメコに言われたことだ。
そのヒメコとスイッチはと言うと、ヒメコは今日早々に帰ってしまった。なんでもペロキャンの新商品が出たらしく、俺も誘われたけど丁重にお断りした。何であいつはあれを食い続けてられるのか、今でも不思議だ。
ヒメコが居なくてつまらないと思っていたけど、スイッチが居るからそれで良かった。
と思っていたけど、スイッチは部室に来ても常に定位置はパソコンの前。暇すぎて畳の上でコサックダンスの真似事を始めた俺に目もくれず、只管に何かをカタカタカタカタ打ち続けてる。
なんだよもう、つまんねぇ。
個人的にはスイッチがそこに居るだけで俺はかなり満足だったのに、でもやっぱり二人しかいない空間では何かしら行動を起こしたい。相手をしてほしい。要は構ってほしいだけだ。
俺はじっとパソコンに向かう男を見つめる。こっちは暑さとコサックダンスのお陰で汗だくだというのに、スイッチは汗一つ流してながった。おかしい。クーラーだってないし、小さい扇風機だって俺の方に固定して回ってる。なのにヤツは涼しい顔でパソコンに向かっている。
「なーぁ、スーイッチィー」
『なーんでーすかぁー、ボーッスンー』
「お前暑くないの?」
俺にあわせたふざけ方がとても嬉しかったのを隠しつつ、俺はずっと気になっていたことを聞く。
スイッチは夏なのに何故かベストを着る。冬の間は何も気にはしないけど、流石にこんな真夏の中、ベストだなんて見てるこっちが暑さで死んでしまう。
夏用の半袖ワイシャツにベスト。どう考えてもアンバランスだ。
こいつは、ずっとこの服装だったのにも拘らずこんな涼しい顔で動かずに座っているのだ。
『暑い暑いと言うから暑いんだ』
「じゃ、寒い!って言えば涼しくなんのか?」
『それは子供の発想だ。要は気持ちの問題だろう』
カタカタとキーボードを打っている間も、そいつは暑そうな顔を見せなかった。
気持ちの問題とか言われても、俺はよくわからねーよ。
俺はスイッチに近付いて、首に腕を回してみる。自分でやっといて暑苦しかった。パソコンの画面を見るとどうやらチャット中みたいだったけど、俺はそこはどうでもよかった。
思っていたよりも体温は高かった。インドア派のためか、肌もあんまり焼けてなくてまっさらに白い。俺なんて暑くて顔が真っ赤になってるのに、こいつがそんな風になることってあるのだろうか。
ふと思い立って、俺はスイッチから腕を離して、今度は肩をとんとんと叩いてみた。
最初は反応しなかったけど、もう一回叩いたらこっちを向いた。
そのときに、そいつの唇に自分の唇をくっつけてみた。
こいつにこんなことをするのは初めてじゃなく、ただふと思ったときによくこんな感じで不意打ちをしていた。
スイッチは別に嫌がるでも拒絶するでもなく、最初こそ驚いていたけど直ぐに大人しくなった。
くっつけた口を離すと、スイッチは俺から顔を背けた。これをやった後、スイッチは俺と目を合わせようとしない。それはふっつーに照れ隠しの行為だって気付いてる。
「スイッチ君かーわーいーいー」
『バーカバーカバーカバーカバーカハゲ』
余裕がないのかいつもより語彙が乏しい。まるで俺のようだ。自分で言ってて悲しくなってきた。
でも夏の暑さでさえ変えられなかったこいつの涼しげな顔を変えられるのは俺だけだって考えたら、顔がにやけるのを止めることが出来なかった。
――――――――
あるとき急にスイッチを思い出して愛しくなってボッスイ検索し始めるわたし
こてつさん、(T&B:虎←兎)
燃える。燃える。燃える。
景色が燃える。
視界に映る全てが赤くて。ごうごうと音を立てて燃えるそれが赤くて。
真っ赤な景色の中に、大切な人が倒れている。
そんな絶望的な風景の中、立っているのはたった一人。
倒れている二人に黒い拳銃を突きつけて。銃を持つ右手の甲に刻まれた紋章。
炎に巻かれ、部屋の中は煙でぼやけていた。
自身の両親をその手で殺したであろう立っている人物の顔は見えない。
その状況を、バーナビーは呆然とした表情で見ることしか出来なかった。
その人物がゆっくりと振り向く。当初は犯人だと信じていたジェイクの顔が、急に崩れた。
そこに立っていたのはバーナビーの育ての親。かと思いきや、彼の顔は今までずっとお世話になってきた家政婦の顔に変わる。
顔が、変わっていく。いつしか見知った顔までもが浮かぶようになり、最後に銃を持っていたのは、自分だった。
「―――――ッ!!!」
がばりと勢い良く、バーナビーはベッドから頭を上げる。息を荒げながら、自分の額に掌を当てた。額には汗が浮かんでいて、そのまま腕で拭う。
心臓が煩い。息が苦しい。頭が痛い。
周りを見ると、最後に自分が見た風景とは全く違うものだった。きっと家内だろうが、どうしてこんなところに寝ているのかの記憶もない。
目の端にはバーナビーのものである赤いジャケットが映る。赤、そう思うと少しだけ体が震えた。
あれを脱いだ覚えもない。どうしてこんな事に、そう思って記憶を辿ったバーナビーは、今日一緒に居るはずの相棒の姿が無いことに気付く。
(そうだ、僕はここに虎徹さんと来て、歩いてるうちに色々思い出して、それで……)
急に意識が重くなって、そこから記憶が途切れた。
久々に泣いたから、気が緩んでしまったのだろうか。人前で泣くなど、もう何年もしていなかった。少し恥ずかしいことをしてしまったと思いながらも、バーナビーはそれ程虎徹に気を許していたという事実にほんの少しだけ安堵した。
しかし、今その相棒の姿が見えない。
「……虎徹…さん?」
呼んでみても、返事がない。
きっとたまたま近くに居ないだけだろうと思いながらも、それはどんどん不安に変わっていく。
彼が、居ない。自分の傍に居ない。
居なくなってしまう。
寝ている間に悪夢を見ていたバーナビーの不安と恐怖は、これまでよりも一層強くなっていた。
それは、自分にとって大切な人間が出来てしまったからだろうか。
(虎徹さん、虎徹さん。僕の傍に居るって言ってくれたじゃないですか)
「この問題が解決するまで、俺はお前の傍に居る」と、そう虎徹はバーナビーに言ったのだ。
その言葉がどれほど嬉しかったか。その言葉だけが、今混乱している自分にとって支えになってくれる言葉だったのだ。
バーナビーはふらつく足でベッドを出る。頭がまだぼんやりとしているが、そんなことはどうでもいい。
虎徹の傍に居たい。今の彼はそれしか考えられなかった。
安心したかった。
外に出ると、人がたくさん居る。
辺りを見回して、少し焦りながら歩を進めた。
(虎徹さん、虎徹さん。貴方は僕の前から居なくなりませんよね)
すぐに彼は見つかった。大の大人が乗るものではないような虎の乗り物に乗って、何処かに電話をしているようだった。
その姿に苦笑を零すと同時に、一気に安堵に包まれた。よかった、彼はちゃんと居る。
声を掛けようと一歩を踏み出す。
「さっさと仕事辞めて、ちゃんとそっちに帰るから!」
足が止まる。
聞き違いかと思った。けど、電話の内容が入ってくる。
「辞める」と。
(辞める?辞めるって、何を?仕事を?ヒーローを?)
そういえば、娘さんが能力に目覚めたといっていた。それで帰る、と。昨日言っていた。
でもそのときは辞めるだなんて、ひとことも、
(あああれは僕が遮ったから。彼はあの時辞めるといいたかったのか)
漸く正常に回転し始めた頭が、再び考えることを辞める。
息をすることも忘れたかのように立ち竦んで、傍に居てほしいと願った人物の背中を虚ろに見つめていた。
――――――――
19話妄想
バニーちゃんを依存まで追い込んだおじさんは責任を取ればいいと思います!