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こてつさん、(T&B:虎←兎)
燃える。燃える。燃える。
景色が燃える。
視界に映る全てが赤くて。ごうごうと音を立てて燃えるそれが赤くて。
真っ赤な景色の中に、大切な人が倒れている。
そんな絶望的な風景の中、立っているのはたった一人。
倒れている二人に黒い拳銃を突きつけて。銃を持つ右手の甲に刻まれた紋章。
炎に巻かれ、部屋の中は煙でぼやけていた。
自身の両親をその手で殺したであろう立っている人物の顔は見えない。
その状況を、バーナビーは呆然とした表情で見ることしか出来なかった。
その人物がゆっくりと振り向く。当初は犯人だと信じていたジェイクの顔が、急に崩れた。
そこに立っていたのはバーナビーの育ての親。かと思いきや、彼の顔は今までずっとお世話になってきた家政婦の顔に変わる。
顔が、変わっていく。いつしか見知った顔までもが浮かぶようになり、最後に銃を持っていたのは、自分だった。
「―――――ッ!!!」
がばりと勢い良く、バーナビーはベッドから頭を上げる。息を荒げながら、自分の額に掌を当てた。額には汗が浮かんでいて、そのまま腕で拭う。
心臓が煩い。息が苦しい。頭が痛い。
周りを見ると、最後に自分が見た風景とは全く違うものだった。きっと家内だろうが、どうしてこんなところに寝ているのかの記憶もない。
目の端にはバーナビーのものである赤いジャケットが映る。赤、そう思うと少しだけ体が震えた。
あれを脱いだ覚えもない。どうしてこんな事に、そう思って記憶を辿ったバーナビーは、今日一緒に居るはずの相棒の姿が無いことに気付く。
(そうだ、僕はここに虎徹さんと来て、歩いてるうちに色々思い出して、それで……)
急に意識が重くなって、そこから記憶が途切れた。
久々に泣いたから、気が緩んでしまったのだろうか。人前で泣くなど、もう何年もしていなかった。少し恥ずかしいことをしてしまったと思いながらも、バーナビーはそれ程虎徹に気を許していたという事実にほんの少しだけ安堵した。
しかし、今その相棒の姿が見えない。
「……虎徹…さん?」
呼んでみても、返事がない。
きっとたまたま近くに居ないだけだろうと思いながらも、それはどんどん不安に変わっていく。
彼が、居ない。自分の傍に居ない。
居なくなってしまう。
寝ている間に悪夢を見ていたバーナビーの不安と恐怖は、これまでよりも一層強くなっていた。
それは、自分にとって大切な人間が出来てしまったからだろうか。
(虎徹さん、虎徹さん。僕の傍に居るって言ってくれたじゃないですか)
「この問題が解決するまで、俺はお前の傍に居る」と、そう虎徹はバーナビーに言ったのだ。
その言葉がどれほど嬉しかったか。その言葉だけが、今混乱している自分にとって支えになってくれる言葉だったのだ。
バーナビーはふらつく足でベッドを出る。頭がまだぼんやりとしているが、そんなことはどうでもいい。
虎徹の傍に居たい。今の彼はそれしか考えられなかった。
安心したかった。
外に出ると、人がたくさん居る。
辺りを見回して、少し焦りながら歩を進めた。
(虎徹さん、虎徹さん。貴方は僕の前から居なくなりませんよね)
すぐに彼は見つかった。大の大人が乗るものではないような虎の乗り物に乗って、何処かに電話をしているようだった。
その姿に苦笑を零すと同時に、一気に安堵に包まれた。よかった、彼はちゃんと居る。
声を掛けようと一歩を踏み出す。
「さっさと仕事辞めて、ちゃんとそっちに帰るから!」
足が止まる。
聞き違いかと思った。けど、電話の内容が入ってくる。
「辞める」と。
(辞める?辞めるって、何を?仕事を?ヒーローを?)
そういえば、娘さんが能力に目覚めたといっていた。それで帰る、と。昨日言っていた。
でもそのときは辞めるだなんて、ひとことも、
(あああれは僕が遮ったから。彼はあの時辞めるといいたかったのか)
漸く正常に回転し始めた頭が、再び考えることを辞める。
息をすることも忘れたかのように立ち竦んで、傍に居てほしいと願った人物の背中を虚ろに見つめていた。
――――――――
19話妄想
バニーちゃんを依存まで追い込んだおじさんは責任を取ればいいと思います!