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2026年06月13日
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長座体前屈(P4:主完)
2012年04月28日
屋上でお昼ご飯を食べようと誘っておいた後輩が、昼休みが15分ほど過ぎてから漸くやって来た。
いつも肩にかけたままの制服を手に持って、少しばかりの疲れを滲ませた表情で「ちーッス」と挨拶をしてくる。
「遅かったね」
「体育やってました。体力テストとかクソメンドクセーことやらされて」
「ああ、俺らも来週からやるんじゃね?」
お疲れ、と陽介が完二の肩を叩く。
首をコキコキと鳴らしながら弁当の包みを広げる彼はとても眠そうで、体育で随分しごかれたんだなあとまるで他人事のように思う。来週の自分の姿が容易に想像できた。
「何やったん?」
「あー…腹筋と、立ち幅と…あの、握るやつ」
「握力?」
「そうそう。あとあの、何つーんだ?体、前に伸ばす…」
「長座体前屈?」
「多分それッス。俺体かてーから全然駄目なんスよね」
記録を聞いたら30センチ前後らしい。それを聞いた陽介が笑った。
「硬すぎだろ!体かてー奴って老化早いんだってな。改善策探さねーとすぐジーサンになっちまうぞ?」
「ま、マジスか」
「な、コイツに指導してもらえよ。相棒は体やーらけーんだぜー」
陽介が指してるのは言わずもがな俺で、それほどでもないよと一応謙遜してみる。正直言うと俺は体の柔らかさには最高の自信を持っていた。なんといっても、体力テストでは常にトップに君臨していたのだ。
完二が俺に尊敬の眼差しを向けてくる。それから顔の前で手を合わせると、「お願いします」と一言。
可愛い後輩のためならば、一肌脱いでやろうじゃないか!
「いいよ」
「あざッス!」
嬉しそうに綻ばせる顔に思わず破顔しながら、じゃあまずはと早速始める。
そのとき陽介がトイレに行くと席を立った。頑張れよと笑って屋上をあとにする親友の背中を見送ったあと、俺は改めて完二に向き直った。
「今ちょっとストレッチしてみようか。俺が背中押してあげるから、出来る限り前に伸ばすんだよ。でも無理はあんまり良くないから、痛かったらすぐに言いなさい」
「うす」
向けられた背中は俺よりも全然広かった。それなのになんだか細い肩が少しアンバランスだけど、ああこの子は俺より年下なんだよなと認識した。
ぐっと手に力を入れると、彼の体が強張ってるのがわかった。緊張でもしてるのかと思ったら、どうやらそうでもないらしい。
(…これは)
硬いな、と思った。予想以上に。
「痛い?」
「…へ、いきです」
既に息が詰まったような切羽詰まった声音でそんなことを言われても。
でも完二が平気だというのならと、俺は「もう少し押すよ?」と一応聞いてみた。頑張り屋さんの彼はきっとこんなことでは根をあげない筈だ。
案の定頷く完二の背中を、少し強めに押した。なかなか前に倒れない。
「っ、う」
「あ…ごめんね。大丈夫?」
「だっ、ダイジョーブです!まだイケるッス!」
あんまり無理するのも駄目なんだけど、そう思いながら気合だけは一流の彼に気圧されて、あと少しだけならと思って。
しかしこれは、なんというか。
「ぐ、むむ」
「…」
「…い!せんぱ、押しすぎ…!」
「…」
「いぁっ、ちょ、っ!」
「…」
「うあ、…いいい痛い痛い痛い!!先輩痛いホントに痛い待ってください痛いッスマジで!!」
あ。
ぱっと完二の背中への力を抜く。
完二は涙目になりながら俺に素早く向き直る。すごい睨まれてるんだろうけど涙目だからあんまり怖くない。
どっちかというと煽ってる。
「お、俺の腰を使用不能にしようとしてんスか!!痛かったら言えっつったのアンタだろが!!」
「本当ごめん…」
「う、…そ、そんな真っ正面から謝られたら怒れねーじゃねーか…」
「だって完二が喘ぐから…」
「……あ?」
「エロい気分になってきちゃって」
「なんでだよ!!」
我慢してる顔とかエロかったんだもん。寧ろ襲いかからなかったことを褒め称えてほしいくらい。
そう言ったら真っ赤な顔の完二に思い切りプロレス技を食らって逆に俺の腰が再起不能になるところだった。陽介が助けてくれなかったらリアルで折れてただろうなあ。
そこで俺は体が硬い人間の心を理解したような気がした。
20120428
――――――――
しょうもなくてごめんなさい^^^^^^
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カラー(P4:主→完+二年生組)
2012年04月25日
「かっこいいと思う色は?」
「うーん。黒かな」
「じゃあ見てて落ち着く色」
「んー、黒だね」
「ほんじゃあ可愛いと思う色」
「黒かなあ」
「…綺麗だなって思う色」
「えー…と、金色…か、黒」
「癒される色」
「黒かな?」
「お前、一番好きな色は黒だろ」
「ううん、赤」
「違うのかよ!!」
「アンタら何やってんの?」
「いやー芸術の課題でさ、自分なりの感情の色を考えろってんだよ。全ッ然おわんねーからコイツにアドバイス貰おうと思ったのに、おんなじ色ばっか応えやがる」
「あー、美術はめんどくさいねー」
「鳴上くんも美術じゃなかったっけ?」
「もう終わりました」
「コイツの課題、絶対真っ黒だよ真っ黒」
「そんなわけないだろ。ちゃんと綺麗で素晴らしいグラデーションにしといた。あんなのはグラデにしとけば文句言われないんだから、適当に塗っておけばいいんだよ」
「案外悪知恵が働くんだね」
「つかよーあんだけ黒黒言っといて一番好きなのは黒じゃないってどゆことだよ」
「かっこいいは分かるけど、可愛いに黒って…珍しいね」
「黒は…特別なんだよ」
「特別?」
なんと言っても、黒は彼の色だから。
とは言わずに、ただ笑って誤魔化した。
――――――――
彼の色(イメージカラー)が黒だというのはわたし個人の想像です
あと八十神高校には芸術の選択授業があるかどうかは謎ですが寛容さオカン級で流してください
「うーん。黒かな」
「じゃあ見てて落ち着く色」
「んー、黒だね」
「ほんじゃあ可愛いと思う色」
「黒かなあ」
「…綺麗だなって思う色」
「えー…と、金色…か、黒」
「癒される色」
「黒かな?」
「お前、一番好きな色は黒だろ」
「ううん、赤」
「違うのかよ!!」
「アンタら何やってんの?」
「いやー芸術の課題でさ、自分なりの感情の色を考えろってんだよ。全ッ然おわんねーからコイツにアドバイス貰おうと思ったのに、おんなじ色ばっか応えやがる」
「あー、美術はめんどくさいねー」
「鳴上くんも美術じゃなかったっけ?」
「もう終わりました」
「コイツの課題、絶対真っ黒だよ真っ黒」
「そんなわけないだろ。ちゃんと綺麗で素晴らしいグラデーションにしといた。あんなのはグラデにしとけば文句言われないんだから、適当に塗っておけばいいんだよ」
「案外悪知恵が働くんだね」
「つかよーあんだけ黒黒言っといて一番好きなのは黒じゃないってどゆことだよ」
「かっこいいは分かるけど、可愛いに黒って…珍しいね」
「黒は…特別なんだよ」
「特別?」
なんと言っても、黒は彼の色だから。
とは言わずに、ただ笑って誤魔化した。
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彼の色(イメージカラー)が黒だというのはわたし個人の想像です
あと八十神高校には芸術の選択授業があるかどうかは謎ですが寛容さオカン級で流してください
ピンク色(主完?)
2012年04月24日
「家庭科」という授業がある。
二年と一年の合同授業だそうだ。
基本授業なんてつくものは全部嫌いだけど、家庭科だけは好きだった。
裁縫道具を持っていても不審がられないし、誰の目も気にせずに趣味に没頭できるから。
そう思い始めたのは先輩らと知り合って初めての授業だった。
俺の趣味嗜好を理解してくれている先輩達がいるから、俺は少し堂々とできるようになった。流石にまだどんと公にできる勇気みたいなものはないけど、周りの好奇と嫌悪の目が突き刺さるのは不快だけど、俺はそれでもいいのだ。
俺は俺のままで良いと、先輩が言ってくれたからだ。
家庭科の授業は刺繍の練習で、俺は心の中でガッツポーズをした。
嫌いな「授業」というものの中で自分の趣味を満喫できるなんてと、そう思ったからだ。
一年生は一年生で纏まって座れといわれていたけど、俺はそんなのを無視して輪から外れた机に座って一人黙々と作業をこなしていた。裁縫を難なくこなす俺に怪訝な目を向ける奴もいるけど、勝手に変な想像でも何でもしていればいい。これが俺なんだと言い聞かせた。
好きな色で刺繍をしていい。一番前の机に糸を置いておくから、選んで持って行ってもいい。そんな教員の声が聞こえた。
ピンク色の糸が欲しいと思った。
それでも、流石に女が溜まっている中を押しのけてピンク色の糸を手に取ることがどうしてもできなかった。
それは過去のトラウマを思い出したからでもあるけど、単純に人の目が怖かった。
一応吹っ切ったはずなのだけど、結局俺は心の底では克服できていない。女に馬鹿にされるのが怖いと思うとか、人の目を気にしてしまうのは無意識だった。
「何の色にする?」
「ピンクが良いかなぁ。可愛いし」
女子の声が聞こえてきて、ますます俺は取り辛くなる。だよなあ、ピンクは女の色だよなあ。
ピンクが可愛いなあと思うのは、やはり女だけなのだ。
「ね、俺にピンクをちょうだい?」
聞き慣れた先輩の声にはっとすると、先輩はにこにこと笑いながらピンク色の糸を手に取っていた。それを見た女子が笑った。「ピンク色が好きなの?」「うん、可愛くてね。俺は好き」なんて会話が少しだけど耳に入る。
先輩くらいのイケメンなら、ピンクが好きでも許される気がする。
先輩がもといた席に戻ると、花村先輩以外の人たちにからかわれていた。
それを上手くかわしているのかどうかよく分からないけど、先輩は首を振ったり頷いたり。まあ先輩のことだ、そういう対処方法は誰よりも上手い。俺はそんな先輩を何となくぼうっと見ていた。
「完二」
名前を呼ばれたけど一瞬反応が遅れて、はい、と返事をしたときにはもう先輩が俺の向かいの席に座っていた。
呆けた俺の顔を見ながら先輩は笑っていた。よく見ると彼の裁縫道具だとかも全部こっちの机に移動してて、あれ、いつの間にと思いながら先輩を凝視した。
元居た席の人らがこっちを見ながら変な顔をしてる。当然だ。好き好んで俺に近付く人間なんかいないのに。
先輩は変わった人だった。俺は彼らに助けられたから恩を感じてるけど、あの人らには俺に関わる理由はもうない。それなのにこの人は、必要以上に俺に構ってくる。可笑しな人だ。
「あの、先輩」
「ね、完二。俺裁縫って苦手なんだ。教えてよ」
優しそうな笑顔を浮かべるその人はとてもかっこいい人だった。
少しでも先輩の役に立てるならと、俺は当然了承した。先輩はまたにこりと笑う。よく笑う人だと思う。
じゃあまずは、なんて少し先生ぶって針に糸を通そうとする。もともとケースに入っていた普通の白い糸。
待った、と早くも制止の声が掛かった。
「完二、俺はピンク色の糸でやりたいんだ」
「はあ、いいと思います」
「そうじゃないでしょ」
「は…?」
「俺がピンク色の糸でやるんだから、完二もおんなじ色で俺にお手本を見せてくれないと」
そんなよく分からないこだわりの話をしてから、俺にピンクの糸を差し出した。
別に糸の色が違っててもやり方は同じなのに、なんて思いながら首を捻った。それから指に少し糸を絡めたあと、ふと。
(俺がピンクが欲しいって気付いてたのか)
いつ気付かれたのか、そんなに自分は分かりやすかったのか、そのことを考えると恥ずかしくて何だか悶えそうになる。どんだけ羨望の眼差しで見ていたんだろう、俺は。
先輩は相変わらず笑っている。よく俺に見せてくれる、優しそうな顔。
俺は物凄く気恥ずかしくなって、針に糸を通すことに集中することにした(何故か手が震えてなかなか入ってくれなかった)。
(そのあと花村先輩も教えてくれと移動してきて、壊滅的に不器用な里中先輩とか、根本から間違ってる天城先輩とかにも技を伝授している間に授業は終わって俺の課題は全く進まなかった)
(でもとても楽しかったのでまあいいやと思った)
(俺の刺繍は先輩から貰ったピンク色オンリーで完成してしまった)
(俺はただ、嬉しかった)
――――――――
ピンク大好きな完二ちゃんも可愛い
主は完二ばっかり見てるので彼に関するいろんなことに敏感です
二年と一年の合同授業だそうだ。
基本授業なんてつくものは全部嫌いだけど、家庭科だけは好きだった。
裁縫道具を持っていても不審がられないし、誰の目も気にせずに趣味に没頭できるから。
そう思い始めたのは先輩らと知り合って初めての授業だった。
俺の趣味嗜好を理解してくれている先輩達がいるから、俺は少し堂々とできるようになった。流石にまだどんと公にできる勇気みたいなものはないけど、周りの好奇と嫌悪の目が突き刺さるのは不快だけど、俺はそれでもいいのだ。
俺は俺のままで良いと、先輩が言ってくれたからだ。
家庭科の授業は刺繍の練習で、俺は心の中でガッツポーズをした。
嫌いな「授業」というものの中で自分の趣味を満喫できるなんてと、そう思ったからだ。
一年生は一年生で纏まって座れといわれていたけど、俺はそんなのを無視して輪から外れた机に座って一人黙々と作業をこなしていた。裁縫を難なくこなす俺に怪訝な目を向ける奴もいるけど、勝手に変な想像でも何でもしていればいい。これが俺なんだと言い聞かせた。
好きな色で刺繍をしていい。一番前の机に糸を置いておくから、選んで持って行ってもいい。そんな教員の声が聞こえた。
ピンク色の糸が欲しいと思った。
それでも、流石に女が溜まっている中を押しのけてピンク色の糸を手に取ることがどうしてもできなかった。
それは過去のトラウマを思い出したからでもあるけど、単純に人の目が怖かった。
一応吹っ切ったはずなのだけど、結局俺は心の底では克服できていない。女に馬鹿にされるのが怖いと思うとか、人の目を気にしてしまうのは無意識だった。
「何の色にする?」
「ピンクが良いかなぁ。可愛いし」
女子の声が聞こえてきて、ますます俺は取り辛くなる。だよなあ、ピンクは女の色だよなあ。
ピンクが可愛いなあと思うのは、やはり女だけなのだ。
「ね、俺にピンクをちょうだい?」
聞き慣れた先輩の声にはっとすると、先輩はにこにこと笑いながらピンク色の糸を手に取っていた。それを見た女子が笑った。「ピンク色が好きなの?」「うん、可愛くてね。俺は好き」なんて会話が少しだけど耳に入る。
先輩くらいのイケメンなら、ピンクが好きでも許される気がする。
先輩がもといた席に戻ると、花村先輩以外の人たちにからかわれていた。
それを上手くかわしているのかどうかよく分からないけど、先輩は首を振ったり頷いたり。まあ先輩のことだ、そういう対処方法は誰よりも上手い。俺はそんな先輩を何となくぼうっと見ていた。
「完二」
名前を呼ばれたけど一瞬反応が遅れて、はい、と返事をしたときにはもう先輩が俺の向かいの席に座っていた。
呆けた俺の顔を見ながら先輩は笑っていた。よく見ると彼の裁縫道具だとかも全部こっちの机に移動してて、あれ、いつの間にと思いながら先輩を凝視した。
元居た席の人らがこっちを見ながら変な顔をしてる。当然だ。好き好んで俺に近付く人間なんかいないのに。
先輩は変わった人だった。俺は彼らに助けられたから恩を感じてるけど、あの人らには俺に関わる理由はもうない。それなのにこの人は、必要以上に俺に構ってくる。可笑しな人だ。
「あの、先輩」
「ね、完二。俺裁縫って苦手なんだ。教えてよ」
優しそうな笑顔を浮かべるその人はとてもかっこいい人だった。
少しでも先輩の役に立てるならと、俺は当然了承した。先輩はまたにこりと笑う。よく笑う人だと思う。
じゃあまずは、なんて少し先生ぶって針に糸を通そうとする。もともとケースに入っていた普通の白い糸。
待った、と早くも制止の声が掛かった。
「完二、俺はピンク色の糸でやりたいんだ」
「はあ、いいと思います」
「そうじゃないでしょ」
「は…?」
「俺がピンク色の糸でやるんだから、完二もおんなじ色で俺にお手本を見せてくれないと」
そんなよく分からないこだわりの話をしてから、俺にピンクの糸を差し出した。
別に糸の色が違っててもやり方は同じなのに、なんて思いながら首を捻った。それから指に少し糸を絡めたあと、ふと。
(俺がピンクが欲しいって気付いてたのか)
いつ気付かれたのか、そんなに自分は分かりやすかったのか、そのことを考えると恥ずかしくて何だか悶えそうになる。どんだけ羨望の眼差しで見ていたんだろう、俺は。
先輩は相変わらず笑っている。よく俺に見せてくれる、優しそうな顔。
俺は物凄く気恥ずかしくなって、針に糸を通すことに集中することにした(何故か手が震えてなかなか入ってくれなかった)。
(そのあと花村先輩も教えてくれと移動してきて、壊滅的に不器用な里中先輩とか、根本から間違ってる天城先輩とかにも技を伝授している間に授業は終わって俺の課題は全く進まなかった)
(でもとても楽しかったのでまあいいやと思った)
(俺の刺繍は先輩から貰ったピンク色オンリーで完成してしまった)
(俺はただ、嬉しかった)
――――――――
ピンク大好きな完二ちゃんも可愛い
主は完二ばっかり見てるので彼に関するいろんなことに敏感です
考え事(P4:主完)
2012年04月14日
「先輩、考え事っスか」
俺が机に頬杖をついたまま動かないでいると、後ろから声が掛かった。
何でお前が二年の教室にいるんだと問い掛けようとしたら、どうやら既に午後の授業もホームルームも終わっているらしかった。時計は五時を指していて、放課後になってから一時間ほど過ぎている。
んー、と頭を掻きながら、すぐ近くに立っている後輩に目を移した。
「どうしたの、完二。帰らないの?」
「えっ」
先輩が今日は一緒に帰ろうって言ったんじゃないスか、と少し非難するような声音で彼は呟いた。忘れてた…わけではなかった。記憶がほんの少し飛んでただけだよ、と言いかけて、それって結局忘れてたってことだよなあと思い止まる。
つまり今の今まで彼は待ってくれていたということか。
「待っててくれたの?」
「えッ、いや…まあ…」
どうやらそういうわけではないらしい。くるくると目が泳いでいる。
この子は嘘をつくのも誤魔化すのも病的に下手くそ。それだけ純粋だという証拠だ。
「あの…スミマセン、午後の五限辺りから寝ちまってたみたいで、気付いたらこの時間で慌てて来たんスけど…あ、でも先輩が寝てたとしても俺待ってますよちゃんと!」
必死に弁解してる様がおかしくて(可愛くて)、俺は分かってるよと笑った。
短く伸びをしながら席を立って、帰ろうと彼を促すと、じっと見つめる視線に気付く。
首を傾げながら何事かと足を止める。そんな俺に気付いた完二は、ぱたぱたと小走りに少し離れた俺との距離を詰めると頭を掻きながら鞄を持ち直した。
「先輩、考え事してたんスか」
「ん?」
「さっきまで、呆けてたから」
メズラシイなと思って。
どんぐり眼が興味深げに俺を見つめるもんだから、俺って普段そんなにお気楽そうに見えるのかなと心の中で苦笑した。
色素の抜けたぱさぱさの髪の毛を撫でると、一瞬顔をしかめてからすぐに照れ臭そうに唇を尖らせた。その顔がとても可愛かったから、俺は本当のことを言うことにした。
「俺はね、」
「完二のことを、ずっと考えてたよ」
今度はどんな顔を見せてくれるかな。
20120413
――――――――
伝達力MAX
俺が机に頬杖をついたまま動かないでいると、後ろから声が掛かった。
何でお前が二年の教室にいるんだと問い掛けようとしたら、どうやら既に午後の授業もホームルームも終わっているらしかった。時計は五時を指していて、放課後になってから一時間ほど過ぎている。
んー、と頭を掻きながら、すぐ近くに立っている後輩に目を移した。
「どうしたの、完二。帰らないの?」
「えっ」
先輩が今日は一緒に帰ろうって言ったんじゃないスか、と少し非難するような声音で彼は呟いた。忘れてた…わけではなかった。記憶がほんの少し飛んでただけだよ、と言いかけて、それって結局忘れてたってことだよなあと思い止まる。
つまり今の今まで彼は待ってくれていたということか。
「待っててくれたの?」
「えッ、いや…まあ…」
どうやらそういうわけではないらしい。くるくると目が泳いでいる。
この子は嘘をつくのも誤魔化すのも病的に下手くそ。それだけ純粋だという証拠だ。
「あの…スミマセン、午後の五限辺りから寝ちまってたみたいで、気付いたらこの時間で慌てて来たんスけど…あ、でも先輩が寝てたとしても俺待ってますよちゃんと!」
必死に弁解してる様がおかしくて(可愛くて)、俺は分かってるよと笑った。
短く伸びをしながら席を立って、帰ろうと彼を促すと、じっと見つめる視線に気付く。
首を傾げながら何事かと足を止める。そんな俺に気付いた完二は、ぱたぱたと小走りに少し離れた俺との距離を詰めると頭を掻きながら鞄を持ち直した。
「先輩、考え事してたんスか」
「ん?」
「さっきまで、呆けてたから」
メズラシイなと思って。
どんぐり眼が興味深げに俺を見つめるもんだから、俺って普段そんなにお気楽そうに見えるのかなと心の中で苦笑した。
色素の抜けたぱさぱさの髪の毛を撫でると、一瞬顔をしかめてからすぐに照れ臭そうに唇を尖らせた。その顔がとても可愛かったから、俺は本当のことを言うことにした。
「俺はね、」
「完二のことを、ずっと考えてたよ」
今度はどんな顔を見せてくれるかな。
20120413
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伝達力MAX
仲裁(P4:主とりせと完二)
2012年04月08日
りせが俺の腰に抱きついたまま泣いてしまった。
そして目の前には完二が慌てたように目を泳がせている。
どうやら彼が彼女を泣かせたらしいのだけど、正直な話俺は通りかかっただけだから状況を把握暇なんてなかった。
いつも気丈な彼女がこんなにも涙を見せるのは、それは事の重大さがあまりにも大きい証拠なのだろう。
俺はりせの頭を撫でながら、目は完二に移した。
目を合わせるとびくりと肩を揺らして、顰めたままの眉が頼りなさげに下がっていく。
あ、これでは彼も泣いてしまうかもしれない。
「完二、りせになにかしたの」
俺はできるだけ優しい声で聞くように努めた。だけど目の前で小さくなる後輩はどうにも俺の気持ちを敏感に察するようで、目には怯えの色とか悲しげな色とかが混ざっていた。
もしかして、怒っていると思われているのだろうか。確かに女の子を泣かせることは男としての恥だとは思うけど。
「お、俺は……、…」
俺は、もう一度呟いた時、彼の表情が歪む。
完二は人一倍傷付きやすい。拒絶されることを誰よりも怖がっている。
完二の中で俺の存在が大きいことは知っている。俺を一番に信じて、俺を一番に頼ってくる。
そして俺に拒絶されること、見放されることを一番に恐れているのだ。
彼の歪んだ瞳から何かが零れ落ちる前に、俺は彼を引き寄せた。
「完二、俺は怒ってはないよ」
「どんな理由があったのかは分からないけど、それでもりせを泣かせたのは事実として受け入れて」
「りせも、完二が怒るのは理由があるはずだよ。ちゃんと向き合わなきゃ」
「ほら二人とも、お互いに謝っちゃえばどっちも悪くなくなるだろ?」
りせのふわふわの髪の毛が俺の頬を擽ると同時に、完二が俺の肩口に額を押し付けた。
「お前達が喧嘩をしたとき、俺はどっちか一人の味方にはなれないよ」
可愛い可愛い二人の後輩、どちらもの味方でいたいからだ。
――――――――
りせちーと完二は可愛すぎやしないか…
+直斗きゅんで一年組の破壊力の高さ