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2026年06月13日
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庇護or独占【テニプリ:サエ(→剣)+バネ】

2013年09月19日

「なあサエ」

「なに、バネ」

「お前さあ、なんで剣太郎が狙おうとしてる子に先回りして接触してんだ?」

「あれ?ばれてた?」

「気付いてねーのは剣太郎くらいだよ…。週替わりみたいに違う女子と楽しげにしてんじゃねーか」

「別に、大した意味はないよ」

「剣太郎の恋路を邪魔すんのに大した意味はないってのか」

「剣太郎は、恋なんて高等なものできないよ。ただ可愛い女の子に興味があって、だからチューしたいとかデートしたいとかいうだけで、剣太郎はその子たちに恋なんてしてない」

「…でも、お前とそういう子が歩いてるの見ると、剣太郎結構へこんでんだぞ」

「俺さあ、剣太郎がその子たちのこと好きになる理由が知りたかったんだよね」

「…?」

「剣太郎が気に入った子を帰りに一緒に帰らないかって誘うんだ。でも俺はそういう時に限って剣太郎にでっかい部長の仕事押し付けてさ、嫌でも遅くに帰らざるを得なくさせる。そしたら、校門の前で女の子が待ってるんだ。俺が直接『剣太郎は部長の仕事が入って、すごく遅くなるかもしれない』って言うんだよ。そしたら女の子は『どうしよう』みたいな顔をするわけ。勝手に帰っちゃっていいのかな、って悩むところはまあ及第点。だから俺は、俺が一番かっこいいと思ってる笑い方で『ごめんね、代わりに俺と一緒に帰る?』って優しく言ってあげる。そしたらさ」

「………」

「女の子はみんな、顔を赤くして『いいんですか?』なんて言ってくるんだよ。『それじゃあ帰りましょう』みたいな空気出してさ。結局、結局さ、みんな別に剣太郎じゃなくてもいいんだよ。俺がちょっと優しくしたら、みんな俺に流れてくるんだもん。誰も剣太郎に本気じゃないのは目に見えてる。誰にも興味がわかないよ。だから俺は『俺は剣太郎と帰りたいから、やっぱり君は一人で帰ってね』って、言ったら、少しでも期待した女の子たちがね、呆けたみたいに俺を見るんだ。剣太郎はさ、見る目がない」

「……正直、お前が何をしたいのか俺にはさっぱりだ」

「つまり俺は、どこの馬の骨とも知らない女の子に剣太郎はあげないよってことだよ」

「父親かお前は」

「ううん、どちらかというとお兄ちゃんがいいなあ」

「…まあでも、要は剣太郎が本気で好きで、あっちも剣太郎のこと本気で好きだって女以外は認めない―ってこと?」

「そうだな、仮にそういう子が来たら、まあ俺と一騎打ちしてもらうかな」

「一騎……なんでだよ!」

「俺の剣太郎への好きが他の女の子に負けるなんてないから」


(あっなんだ、こいつただの嫉妬かよ!)


――――――――

サエ→剣とバネさん
サエさんはイケメンで爽やかなのに全く黒い雰囲気を感じさせないので、サエさんこそが本物のイケメンなんだと思います(話関係ない
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(テニプリ:財→ユウ→コハ)

2013年09月02日

パラレルっぽい

・財→ユウ→(←)コハ
・ユウコハは大学生、財前は高校三年生になりましたなパラレルっぽい
・小春と別れちゃったユウジが財前と久々に会ってとかなんかそんなん

つづきはこちら "(テニプリ:財→ユウ→コハ)"

(テニプリ:二翼・獅子楽時代)

2013年08月25日
一年に一回あるかないか、それくらい珍しい確率で、俺と桔平は一世一代ともいえる大喧嘩をした。
理由は大したことではない、と俺は思っていたのだが、どうやら桔平はそうではなかったようだ。ただでさえ気性の荒い桔平が、更に更に不機嫌で暴力的になるほどに怒っていた。
俺に無意識に甘かった桔平は、謝れば大抵のことを許してくれたものだったが、今回は俺に謝ることさえも許してくれなかった。
桔平の顔が怒りに歪んだ刹那、俺の頬に鋭い痛みが走って、視界が揺れた。
そこで俺が無抵抗だったなら事態は丸く収まったかも知れなかったが、どうにも喧嘩慣れしてしまった体が反射的に、本能的に無意識に動いてしまったらしく、気付いたときには既に俺の固く握った拳は桔平の額を殴っていたのだった。 地面に背中から倒れた桔平を見て、周りで俺たちを見守ってたテニス部員たちがざわりと騒ぎ始める。あーあ、やってしまった。しかし俺は桔平への申し訳なさより、怒りの理由も知らされずいきなり殴られたことへの苛立ちの方が勝っていたのだ。
桔平は器用に立ち上がり、やはり容赦なく俺の顔にもう一発拳を入れた。その瞳は怒りで燃えている、というよりも、ぎらぎらと獣のように光っていた。九州の金獅子の名は伊達ではない。背中にぞくぞくと何かが競り上がってくるのを感じた。
でもやはり俺だってムカついてて、ズキズキと痛む頬をどうってことない風に無表情を崩さず、自分よりも細い腰に蹴りを入れた。

それからはもうただただ馬鹿みたいに殴りあっていた。周りの部員が俺たちを止めようと何度となく手を挟もうとしていたが、俺たちはそれを許さなかった。とにかくムカムカと胃の中が気持ち悪くて、でもどこか興奮していた俺は、このまま桔平を殴り殺したいとも思った。
桔平の頭突きがガツンと来て、ぐらりと目の前が霞む。頭ががんがんと痛む。なんとか耐えて足を踏ん張り、しかしあっちも相当ダメージがあったようで、覚束なく足を縺れさせていた。
ああ、チャンスだ、と俺は思った。 指は迷いなく桔平の首を目指した。絞めてやろうか、潰してやろうか、それとも折ってやろうか。そんなことを考えていたら、いきなり何人かに羽交い締めにされる。

「きさんら、いい加減にしなっせ!!」

どうやら弱りきった俺たちに周りもチャンスだと思ったらしい。大丸を筆頭に俺たちはあっという間に押さえられてしまった。
四人分の力を押し退ける力が出なくて、ぜいぜいと息を荒く吐くことしかできない。心臓がどくどくと鳴っていて、何故こんなにも自分が興奮しているのかわからないでいる。

「…離しよ、俺はムカついとう」
「千歳、落ち着き…」
「うるしゃーばい、俺は、桔平んこつ一回殺さんと気がすまん」

大丸が目を見開いて、冗談でもそぎゃんこつ言うんじゃなか、と少し怒ったみたいに言ったが、冗談に聞こえたなんて失礼な。
俺は本気なのだ。今なら桔平を殺せるなんて、考えただけで鳥肌が止まらない。



「殺してみろよ」



目の前で、俺と同じ四人に取り押さえられている桔平の低い声が、この空間に妙に響いた。
は、と息を吐く音を聴く。妙に熱が籠ったような息を吐くのだ、その男は。
目元に血を滲ませて、泥だらけで腫れ放題の頬。痛々しい傷、全て俺がやったのだ。
俺を見る瞳の、なんと鋭いことだろう。ぎらぎら、これから獲物でも捕りに行くかのよう。

「きさんに殺される前に、俺がきさんこつ殺しちやるばい」

桔平の目が俺だけを映している。
もしかして俺は、変な癖を持っているのかもしれないと今更思った。体の中から湧き上がってくる熱いものは、桔平の目に反応しているのだ。
その睨み付けただけで人を殺せそうな、その瞳が俺は好きだったのだ。
その目が屈辱に歪むのとか、絶望で虚ろになるとか、そういうのも見てみたいと思った。でもそれ以上に、いつだって強く気高い彼の目を、その瞳を見るたびに俺は、

お前に殺されてみたいなあと思ってしまうのだ。


――――――――

千歳はどっか病んでると俺得、ってだけの話です
あるサイト様のちとたち小説で、千歳に逆らえなくて脅される橘さんっていうのを見て、橘さんは自分の自尊心とかプライドとかズタズタに傷つけられたり、誰かに縋ってなきゃいけない生き方をするくらいなら、きっと少しの躊躇いもなく自害するんじゃないかなあとか思ってこの話を描いたんですが、あれ?
千歳は人を殺すなら桔平を、人に殺されるなら桔平にって感じでずっと桔平馬鹿でいるといいよ

過程(べるぜ:おがふる)

2013年01月13日


なあ、古市は。古市はどこだ。
胸ぐらを掴んだままがくがくと揺らしたソイツは、泡を吹いて気を失ってしまった。
悲鳴が周囲から上がる。きんきん煩い女の声とか、耳が痛いけど塞いだらいよいよ古市の居場所がわからなくなると思って、我慢した。

「なあ、古市ドコ?」

地べたにぺしゃんこになったヤツに聞いても答えてくれなさそうだったから、近くに座り込んでいる頭の悪そうな女に聞いた。
知らない、知らない。女はそう喚いて、人殺しだ悪魔だのと俺に向かって酷い暴言を吐いた。
自分にそういうのがあるかどうかはちょっと分からんが、この女は品がないと思った。下品なのが嫌いとか言うわけではないが、今のオレはすこぶる機嫌が悪くて、少しでも頭にきたら全部ぶっ壊してしまいそうだった。
大体殺してねーのに人殺し扱いされるのはすごく不愉快で、一歩その女に近付いたら泣かれてしまう。
すぐ泣く女は嫌いだ。

「古市、返してくれたら帰るから」

女は上の階に仲間がいると言った。知ってんじゃねーかよと思ってまた苛々したけど、オレだって人間だしあんまり泣かれて水分不足でしわしわになるのは可哀想だなあと思ったから、オレはその女を放置した。

廃墟ビルは10階建てで、割りとこぢんまりとしていた。ちょっと頑張ればだるまおとしの要領でぱかぱか落とせるかと思ったが、中に古市がいることを考えると出来なかった。古市はちょっとくらいでは死なないと思っているが、打ち所が悪ければということもある。特に頭を打ったりでもすれば、アホの古市はもっとアホな古市になってしまう。
ビルの中を名前を呼びながら歩き回ると、一つの部屋の中でズタボロになった古市を発見した。
髪の毛はぼっさぼさだし、頬が腫れて真っ赤だし、唇は切れてるし、顔は血でぐちゃぐちゃだった。
一瞬不安が胸を過る。もしかして死んでるんじゃないか。もしかして、とガラにもなく少し焦った。

「古市、なあ古市」

肩を揺らす。学ランは半分だけ脱げた状態で、ワイシャツも切られたみたいにボロくなってた。
けほ、と古市の口から息が漏れた。うっすらと目を開ける古市は、焦点の合ってない瞳でオレを見た。
唇が、おが、と形作る。
取り敢えず生きていたことに安心した。
それと同時に、何か、よくわからない気持ちが沸き上がってくる。きっとこの感情は、憎悪とか、憤怒とか、そういうのに似てるんだろうけど、いまいちよくわからなかった。ムカつく気持ちとかイラつく気持ちとか、全部が全部混ざりあって、とにかくオレは、とにかく。
怒りで気が狂いそうだったのだ。

「どれにやられた」

オレは喧嘩をしに来た訳じゃなく、古市を取り返しに来たのだ。何の目的があって古市を連れていったのかは知らないが、しかし、親友がここまでされて見過ごせるだろうか。見過ごせるわけがない。
というか、逃がさない。
いつの間にかオレ達は気持ち悪く笑う男達に囲まれていた。どうやらオレを待っていたらしいのだが、その中にさっきの女がいた。
せっかく逃がしてやろうと思ったのに。

「古市、どれにやられた」

再度聞いたが、古市は首を緩く振るので今は精一杯のようだった。
別にどれでもいいとオレは思っていた。古市をボコったヤツも、それを笑いながら見てたヤツも、人が来ねーようにビルの前に突っ立ってたヤツらも、全員同じ痛みを味わわせてやるつもりだからだった。

「テメーのカッターで、アイツに傷付けたのか」
「テメーのその拳で、アイツの顔が歪んだのか」
「オラ、言ってみろよ。オメーはナニで傷付けた?」

自分でも驚くくらい嫌な音が室内に響く。
叫び声と悲鳴と、痛みに泣き喚くヤツだっている。惨めだと思う。大勢でかかれば勝てるという、オレ以上に低能で単純な考え方だ(なんて言ったがオレは決して低能でも単純でもない。決して!)。
しかし殺してはいけない。何故ならオレは人殺しにはなりたくないし、古市を人殺しの親友にするのも嫌だったからだ。
いつの間にか立てるヤツはオレ以外いなくなってて、壁にめり込んだり床にめり込んだり、変な形をして適当に転がってるヤツもいる。
あの女が、また座り込んでガタガタ震えていた。

「お、が、おが」

小さすぎて聞き間違いかと思ったら、古市が腕を伸ばしているのを見て間違いじゃないことに気付く。
腕を掴んで起こそうとしたら、痛いと眉を歪めた。手首にはロープの痕が残ってて、ああコイツらは無抵抗の古市を散々痛めつけたのかと思う。
助けて、と小さく呟く女の声。頭が熱くなる。血が昇る感覚がして、沸騰しそうだった。

「オメーらは、聞いたのか」
「古市がやめろって言うの、聞いてやめてやったのか」
「だから、オレもお前らの言葉なんて聞かねーよ」

古市はすぐに弱音を吐くようなよわっちい人間じゃなかった。だからそんなこと言ってねーだろうとは思いながらも、こいつらの都合の良さに吐き気がした。
女を一発殴ってやろうと思った。それなのに、古市は小さい声でオレを止めたのだ。

「おが、やめなって、女の子には、やさしくしなきゃ」

多分この女に誘惑されて古市はホイホイ付いていったのだろう。この女好きが。オレがどんな思いだったか知らないだろう、このアホめ。
オレはできる限り力を入れず、一番威力が弱いであろうビンタで女を殴った。
気絶されてしまい、首を傾げる。後ろで古市が深く息をついて、苦笑した。


古市をおぶって廃ビルから出る。すっかり日も暮れて、空が赤く染まっている。カラスの鳴き声がうるさかった。
人通りの少ない道を選んで歩く。人に見られたら嫌だと古市が言ったからだ。流石にオレもそう思ったから、あんまり人のいない河原に沿ってうちを目指した。
古市をこのまま帰らせてしまうと、きっと家で大騒ぎになる。姉貴とオレで慣れてるうちで手当てして帰るのが妥当だと思った。

「…いってえ」
「バカめ古市、バカめ。女に釣られてホイホイ付いていくからだ」
「はは……まあ、オレもお前を釣るための餌だったみてーだけど」

お前に関わるようになってから、こういうのが増えてきてんだよ、と古市は愚痴る。それを聞いて、オレはまたオレにあるまじき不安を持った。
元はと言えば、古市はオレのせいで連行されてしまったのだ。オレとつるむようになってから古市は絆創膏の数が増えた。顔とか腕とか、オレにとっては当たり前だったけど、古市にとっては。
どうしよう、また離れていく。

「…………古、」
「なあ男鹿、フジノの近所にさ、ケーキ屋できたん、知ってた?」
「………あ?」

背中から伝わる古市は明るい様子だった。

「食べに行こ」

オレの肩に額を寄せて、古市は笑っていた。
こんなことがあっても、古市はオレに文句は言えどそれ以上は何も言わない。普通なら離れるだろう?怖いと思うだろう?もう嫌だと思うだろう?
オレの浮かない顔に気付いた古市が、何を言ってるんだとばかりに眉を寄せる。

「親友なんだから当たり前だろ」
「それにオレは、痛くて泣きそうだったけど怖くはなかったよ」
「お前は来てくれるって信じてたから」

笑う度に震える髪の毛先が、首に当たってくすぐったい。オレに関わって笑ったヤツなんて今まで一人もいなかった。
申し訳ない気持ちだとか、嬉しい気持ちだとか、なんだか溢れて爆発しそうなくらい心臓にたまって、次には体にすぅと染み込んでいく。こんな感覚をオレは知らなかった。
喧嘩帰りだというのに、いつもオレを取り巻いていた憂鬱な空気が今日は感じられない。
オレを親友だと、言ってくれた古市のお陰だと思った。

「信じてろ、また助けるから」

またボコられんのは嫌だなあと古市が言う。
でも笑って、うんと呟く背中の人間を少しだけ愛しいと思った。その感情も初めてだった。

古市と言う存在が、オレを形成していく。


20130112


――――――――

中学一年?くらいでまだ男鹿さんが古市に対して少しばかりの後ろめたさを持ってる設定
男鹿さんが人間になれたのは古市のおかげ、みたいな

怖い夢を見た(べるぜ:おがふる)

2012年12月16日


暗い暗い闇の中。どこかもわからないそんな場所で、古市はオレに言った。

「もうさ、お前に関わんのやめる」

は?何を言ってるのかわからない。古市はオレの呆けた顔を見て鬱陶しそうに溜め息をついた。
オレの知ってる古市じゃない気がした。

「お前と居れば、不良に絡まれるし殴られるし、お前ばっかちやほやされて。お前、オレのこと何だと思ってんの。引き立て役とか、うんざりだ」

違う、そんなの思ったことない。
何だろう、この感じは。
とても寒くて寂しくて、辛い。
それから、怖いと思う。何が怖いのか、少しまだわからないけど。
このオレが。今まで怖いものなんて無かったオレが。何だ、何が怖い。

「ふるいち」

やっとのことで出た声は、情けなく震えていた。悪い夢を見ているような、そんな気分だ。
背を向ける古市が遠退いていく。手を伸ばしてももう届かない。首根っこ掴んでオレの前まで引っ張って、ちゃんと理由が聞きたいのに焦がれる背中はどんどん遠くなる。
嫌、だ。嫌だ嫌だ行くな馬鹿。隣に立ってるって言っただろ。傍に居てくれるんじゃなかったのかよ。お前が居なくなったら、オレは、

(ああそうか、オレが怖いのは、古市が隣から居なくなることだ)









古市、そう呼ぶ声が聞こえて、寝ているはずの男鹿に視線を寄越した。
やはり男鹿はぐっすり爆睡で、寝言かと苦笑した。夢の中で一体オレと何をしてるんだか。どうせろくでもないことだろうなあ。
またひとつ、古市とぽつりと溢した。

「古市くんの夢見てるんだねー」
「夏目先輩」
「ラブラブで良いね」

夏目先輩がにこにこ笑いながら微笑ましそうに言う。ちょっと反応に困って苦笑いすると、仲良くね、と頭をポンポン叩かれた。
不良の中でも夏目先輩は多分一番好い人だと思う。
また、名前が呼ばれた。

「男鹿、コラ。お前が名前呼ぶからからかわれただろ」

緩く肩を揺さぶるが、男鹿は顔をあげない。どんだけマジ寝だよ、なんて思いながら、ふと腕の間から男鹿の表情が見えた。

「…男鹿?」

強気でボス猿みたいな凶悪な顔をしている奴からは想像ができないくらいに、弱々しく眉を下げていたのだ。
次には、男鹿からひっきりなしに聞こえてくる声と途切れ途切れの息。嫌だ嫌だ、行かないでくれ、なんて、随分ナーバスな夢を見ている。
心配になって男鹿に腕を伸ばすと、そいつはオレの腕を強い力で握ってきた。痛い。

「ふる、いち…」

何回名前を呼ぶんだよ。本当にどんな夢を見てるんだ。
震えながらも指の力を弱めない男鹿は、何かを掴もうと、引き留めようと必死に見えた。
男鹿の指に自分の手のひらを重ねる。頼り無さげに小刻みに震えるそれはとても冷たいと思った。

「男鹿」
「ちゃんと居るよ」
「オレは、ここに居るから」

ぱちりと開けたそいつの瞳から、涙が一筋ぽろりと零れる。男鹿にも涙って流せたんだなって失礼なことを思ったけど、まああの男鹿だし、とも思う。涙なんて似合わなすぎる。
少しの間呆然とオレを見つめていた男鹿は、漸く夢の世界から抜け出したかのようにはっとする。

「ふ、ふるいち、古市、古市」
「はいはい、なんでしょうか男鹿くん」
「いなく、なる…お前が、」
「いなくならないよ、言っただろ隣に立つって」

手を握ってあげると、男鹿がそのまま抱きついてきた。馬鹿力でぎゅうぎゅう絞めてくるから、背骨が軽く軋んだ。しかも机を挟んで男鹿がこっちに身を乗り出してる格好だから、椅子が後ろに倒れそう。あと体重も掛けられて重い。
落ち着けよって意味で背中を撫でたら、古市、と名前を呼ばれる。
お前には弱さなんて似合わないよ。
どんな夢を見たかは知らないけど、きっと悪い夢だったんだろうな。

「大丈夫か?」
「……ん」
「悪い夢見た?」
「怖い夢見た」

こんなに怖いのは生まれて初めてだった、と男鹿は言う。
そっか、と返してひたすら背中を撫でてやった。
オレが居なくなることが怖いと、男鹿の言葉は暗にそう示していた。
こんなに思われてるのかあと恥ずかしい反面、こんなに男鹿を弱らせてしまうのなら離れられないなあ、と少しだけ愛しさを覚えるのだった。


20121201


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短いですがおがふる
古市がいなくなっちゃうと男鹿さんは世界征服とかしちゃうくらいには暴走するんじゃない?という妄想(話と関係ない