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2026年06月13日
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ろぐ

2013年01月03日

ゴールデンやってるお陰でまたぺよんに逆戻りしそうです

★携帯ログ

1、主完
2、長瀬と一条








(寒いなあ)

雪がしんしんと降り続く中、俺はバス停に突っ立っていた。
アルバイトに行くために家を出て、バス停でバスを待つこと20分。辺りは白で覆われてて、バスが来る気配はない。
もう少し遅く来ればよかったかなぁ、と思いながらも、乗り損ねるのは怖い。雪が降っているとバスがどの程度遅れるのか分からないから、結局は時間を守ってひたすら待つしかないのだ。田舎だからということもあってバスの巡りもそう多くなく、一本乗り損ねると二時間ほど待たなくてはならなかった。
今でこそこの町は気に入っているし、自分の第二の故郷として愛しているが、こういう巡りの悪さを考えると都会の有り難さを思い知る。
ここ数日で、地面にはそれなりに雪が積もっていた。足元は俺の足跡だけが残っている。
時間は現在六時四十二分。バイト、七時からなんだけどなあ。いつもならこの時間はもうあっちに着いてるのに。間に合わないなこれは。とりあえずバイト先に遅れる旨を伝える。七時までにバスが来てくれたら四十分には着くかもと連絡をして、バスが通る筈の道路を睨んだ。
寒い。ダッフルコートに顎を埋める。頭に積もる雪を払うのも何回目だろう。手袋くらい持ってくるんだった。指の感覚が消えている。ポケットに手を突っ込んでも、冷えきった指は回復してくれない。
今日はなんて悪い日なんだと、俺は絶望した。思えば朝、菜々子の前で盛大に滑って転んだ瞬間から負の連鎖が続いてる気がする。
流石に苛々してしまうけど、今じゃそんな気力もない。寒い。もしかして帰りもこんなんになるのか。夜はもっと寒いじゃないか。いい加減にしろ。俺は誰に文句を言ってるんだろう。
本日何回目かわからない溜め息を吐いた。白い息は空に消えていった。

さくさく。人の足音が聞こえた。バスじゃないのかと肩を落とす。

「…先輩?」

しかし、声を聞いた瞬間に俺の沈みきった気分は瞬く間に上昇した。
この声、この声。期待しながら振り向くと、俺の目が自然に細まった。

「雪だるまかと思った」
「はは、完二は冗談がうまいなぁ」

手袋に包まれた手で俺の頭の雪を払う完二は、温かそうなダウンジャケットを着ていて、背中のファー付きの帽子を被っていた。マフラーに埋もれて顔が半分しか見えない。いつもの皮のジャケットはどうしたんだろう。
完二曰く、お母様に非難されたそうだ。そんな皮でできたもので温かいわけがないでしょう、と。どうやらそのダウンジャケットは完二のために用意したらしい。その話を振ると、彼は少し居心地悪そうにしていた。

「先輩は何してんスか」
「バス待ちだよ。これからバイト」
「遅れてるみたいっスね…」
「三十分待ってる」

そう言うと、完二は苦笑した。田舎ですから、と呟く彼の唇から白い息が零れる。
彼の肩には少しだけ雪が積もっていた。
薄い色素の肌が真っ赤に霜焼けていて、この子も長い間外に居たのだろうかと思う。

「こんな時間に何をしてたの」
「お袋のおつかいっス」

天城屋旅館まで少し、と完二は言った。
天城の家はここからは結構距離があったように思う。雪道は不安定で危ないだろうし、雪も降っていて寒かっただろう。
怪我とかしてない?と聞いたら、さっき滑って転んだ、と彼が笑った。
俺としては気が気ではなかったのだけど、彼の笑顔が子供の純粋な顔のそれだったから、要らない心配をしただけだった。

「風邪引かないようにね」
「それ、こっちの台詞なんスけど」

彼は俺がバスに乗るのを待ってくれているようだった。
会話が途切れても完二は辺りをキョロキョロと見て、バス、来ねっスね。なんて言う。帰ったって別に良いのに、なんて思いながら、俺は帰るよう促すことをしなかった。
単純に一緒に居てほしかったのだ。寒くて代わり映えのないつまらない風景をひたすらに見ているよりも、表情豊かに笑う可愛い後輩を見ていたかったのだ。
それに、きっと完二に帰れと言ったところで、帰らないだろうと思う。彼はそういう子だった。
そういえばこの前、と完二が新たな話の種を見つけた瞬間、微かに車の音が聞こえた。

「あ…バス、来ましたね」

七時になる二分前、重いエンジン音を響かせながら俺逹の目の前でバスが止まった。老人が何人か出てくる。
完二と話していた時間が酷く儚いものに感じた。さっきまではあんなにバスを待ち焦がれていたのに。

「じゃ、行くね。また明日学校で」
「……先輩」

足を止めて振り向いた俺の首に、完二が今まで着けていたマフラーをぐるんと巻く。
いきなり首にふわりとした感触が当たって、変な声を出した。

「貸します。明日返してください」
「……あ、ありがとう」
「おやすみなさい、また明日」

バスの扉が閉まっても、完二はそこに居た。バスが動き出す。俺は後ろの席に腰を下ろして一息ついた。
窓から見える完二に手を振ると、彼は会釈をした。律儀な子だった。
ゆらゆらとバスが揺れる。この時間ともなると、客は俺とどっかのサラリーマンくらいだった。
足元に熱の籠った空気が漂っている。雪にまみれていたブーツは、既に水浸しだ。足の指の感覚が戻る。

(…あったかい)

マフラーに顔を埋める。完二の肌の温もりが残っていた。首が熱いくらいだ。
振り向いたら、完二は歩き出すところだった。でも視線はずっとバスだった。
まるでこのまま、彼に会えなくなるんじゃないかと言う錯覚に陥る。
マフラーを明日返せと彼は言った。それは彼に明日も会うことを約束したのだ。

(もしかして、あの子も不安に思ってたんだろうか)

車内の温い温度が心地よかった。
だから、考えるのは止めようと思った。
漠然とした不安は募っていくけど、完二がいる間だけ、氷が溶けるみたいに不安が流れていく。
今は、マフラーから伝わる彼の優しさと、温かさを味わっていたかった。


20130101 【ある雪の降る夜(P4:主完)】

予定してたオチと違う…(撃沈
バス待ちの時間は果てしなく長く感じる


――――





部活が終わっていつもみたいに一条を迎えに行った体育館。暗いステージの上に一条が大の字に寝転がっていた。
バスケ部のユニフォームのまま、足音で気付いていただろうに、長瀬が声を掛けても一条が顔を上げることはなかった。

「寝てるのか?死んでんのか?」
「起きてるし生きてる」

小さい声だった。

「…部活は?」
「もう終わった」
「ありゃ、もうそんな時間?」

その口ぶりから部活をしてないのかと思い、長瀬は怪訝そうな顔をする。
起こしてー、と腕をぶらぶらと伸ばす友人の手首をしゃーねぇなあと掴むと、自分の手のひらの温度と遥かに違う、冷えきった体温に思わずこっちが身震いした。

「冷てぇなぁ…部活やらなかったのか?」
「先生来なくて自主練でさ…休憩がてらに考え事してたら、いつの間にか」
「何時から?」
「俺の記憶が正しければ…四時くらいから?」

今は七時をとっくに過ぎていた。暖房も付けられていない体育館は、夜になると一気に冷え込む。
既に他の部員は全員帰ったようで、体育館は二人の声だけが静かに響いていた。
起き上がった一条は一つ欠伸をして、ぼぅっと虚空を見つめていた。何かを諦めたようなその表情を見るのは久方ぶりだった。
一時期バスケをやめるだとか言っていた彼にそっくりだと長瀬は思った。自分の知っている一条ではなく、何処か遠くへ行ってしまいそうな、弱くて儚い一条だった。

「な、ちょっと話、聞いてくれる?」
「聞かなかったことなんてあったか?」

一条の隣に腰を下ろすと、彼は小さく笑った。長瀬は自分のジャージの上着を脱いで、一条に押し付けてやる。
長瀬のジャージを頭から被りながら、一条は口を開いた。

「俺、里中さんのこと好きだったんだけど」
「え、そうだったのか」
「うん、お前が鈍いのは知ってたから突っ込まねーな。で、その里中さん、アイツのこと好きみたいなんだぁ」

長瀬の中に浮かんだのは、今年の四月に都会からやって来た転校生の男だった。初対面でも気楽に話せて、一条のことを支えてくれていた、言わば長瀬にとっての恩人である。
確かに顔は整っているし、優しい性格だから、女に限らず男からも信頼されるような男だ。

「里中から言われたのか?」
「いや……つか、見てたらわかるよ。二人、仲良いしさ」

一条が重く深い溜め息をつく。
人一倍恋愛だとか色恋沙汰に疎い長瀬は、そういう話にさして興味がないからか、よくわからんと呟いた。本人に確かめもしないのに結論を出すのは早い、と思ったのだ。
バカのくせに的を射た発言を時々する、と一条が言ったのは多分聞こえなかっただろう。しかし、本人に確かめられるのであればとっくにしている。できないのだ。一条は自分が臆病だということを知っていた。

「しょーじき、良いんだ。里中さんが誰を好きだとか、アイツを好きだとか、どーでも」
「へえ?」
「別に、アイツを恨むだとか憎むだとか全然ないし、なんつーか、告白…とか、するつもりもなかったし。話できるとか、それだけで十分だったよ」

大丈夫、とは言い難い一条の顔色を見て、長瀬が眉を潜める。
でも、と彼は続ける。

「なんだろーな…もやもやして……悔しいんだか、納得してんだか……よくわかんないんだよね」

頭痛い、と呟く一条の頭を軽く撫でる。髪の毛は冷たかったのに、触れた肌は先程の冷たさが嘘のように熱い。

「一条、熱出てんぞ」
「んー…」
「アンニュイなのはこれのせいだって、帰ってあったかくしてさっさと寝ろ」

引っ張った体は予想以上に重くて、完全に力が抜けているのだと気付く。
ユニフォームの上から制服を着せて、ジャージを羽織らせたまま一条をおぶった。
背中から伝わる冷たいような熱いような体温が心配だが、家はそう遠くないし、大丈夫だろうと長瀬は踏む。

「長瀬ぇ」
「なんだよ」
「明日沖奈行こう」
「部活あるし」
「行こーよ、たまには学校帰りにハメ外したいよ」
「行けばいいだろ」
「ひとりさびしいこどくせつない」
「はいはい、お前の熱が下がったらな」

安心したように一条は息をつく。
長瀬は更に重くなる背中を感じながら、帰路を急いだ。


20120102 【(P4:長瀬と一条)】

一人称じゃないの久々でちょっと書けなかった…
そんでこれも当初予定してたオチと違う(∵)
長一ちゃん可愛くて好きです。部活帰りも休日もテスト勉強も全部一緒ってどんだけ仲良しなの

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