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甘い、甘すぎ、甘ったるい(ギンイヅ)
僕は隊長に頗る甘い。甘い、らしい。
僕自身としては、甘いつもりは毛頭無いのだ。
しかし、阿散井くんや雛森くんから、そういう事をしょっちゅう言われる。
最近では、檜佐木先輩や乱菊さんからも言われる始末。
僕も次第に自覚が出てきているのだけど、やっぱり簡単には認めたくなかった。
この甘さが駄目なのだろうか。僕の隊長は他人に厳しく。自分には……甘いんじゃないかと僕は思う。
それなのにあの人望。羨ましくだって思う。
僕自身、隊長のことはこれ異常ないほどに尊敬している。一生付いて行きたいとも思っているんだ。
ある日、うっかり隊長と言い合いの喧嘩をしてしまった。語弊、僕が一方的に噛み付いただけだ。
仕事をせずにふらふらと歩き回っている隊長に痺れを切らしたのだ。
遅れている書類は殆ど僕の方に回ってきて、此方の仕事量が半端無く増える。
文句を言うだけ言って、僕は隊長の部屋から逃げるように出た。隊長は僕が小言を言っている間も、顔に貼り付けた笑みを絶やすことはなかった。
なんだよ、僕は本気で怒っているのに!
隊長を見ていると、自分が怒っていることも馬鹿馬鹿しくなってくるから不思議である。
しかし、僕は決意したのだ。今回は隊長が悪い。僕はどんな事があっても絶対に謝ってやるものか、と。
隊長が簡単に謝るような人間だとは思っていない。だが僕は別に隊長と話をしなくても一日難なく過ごして行けるのだ。
それはあちらもまた然りで、彼は僕がいなくても何の支障も無く物事をこなすに違いない。自分をそう納得させながらも、つまり隊長にとって僕は別にいなくても良い存在なわけだなと自分で言って自分で落胆した。
何だかんだ言いつつ、隊長に必要とされたいのもまた事実だからだ。
喧嘩をした翌日、午後を回った頃。
僕は机に向かって書類を書いている。いつもは隊長の後ろをついている自分が、喧嘩をした後から、隊長とは全く話をしていない。僕は本気なのだ。僕は本気で、今回のことは謝らないつもりなのだ。
隊長に対しての態度とは思えないだろうが、僕にだって我慢の限界というものがある。一回くらいなら許されるだろう。そうだ。そう考えろ。
それなのに隊長はやはりふらふら。結局は僕の仕事が増えていき、重苦しい溜息を付いた。
部屋の戸がするりと開く音がした。入ってきた霊圧は隊長のもの。漸く帰ってきたか。
「イヅルぅ」
久々に聞いた声は、僕の名前を紡ぐ。
しかし、僕は反応してあげない。何故なら僕はまだ怒っているからだ。
「いーづーるー」
これを猫撫で声というのだろうか。僕を呼ぶ隊長の声は、妙に甘ったるい。
けれど、僕は流されないぞ。きっと暇になったから僕で遊ぼうとでも考えたのだろうが、相手にしてあげないと決めたのだ。
後ろから近付いてくる霊圧が、若干だか小さく揺らめいた感覚がした。あれ、少し不機嫌になったかな。やはり流石に完全無視というのは拙かったか。
そんなことを考えつつも引き下がれず、少しばかり緊張しながら僕は筆を進めた。
と、急に首に何かが絡んできた。
隊長の腕だと気付くのに時間は要らなかった。
僕は驚いて、筆の歩みを止めてしまう。
「イヅルー…」
「……なんですか、隊長」
僕の肩口に顔を埋めながら発した声はくぐもっていた。
何だか少し切なそうな、寂しそうな。そんな声に聞こえた。だから僕もつい声を掛けてしまう。
いやいや、隊長に限ってそんなことがあるわけない。僕がいなくったって余裕で生き延びるような人なんだ。
それでも、こうやって自分の名前を呼んでくれる彼に、嬉しさが少しずつ込み上げてくる。
隣を見ると、銀色の髪の毛が頬を擽った。
「……ごめんな」
耳元でぽつりと呟かれた、僕が一番聞きたかった言葉。
僕はあんなに怒っていたのに。彼の一言だけで、僕の中にあった『意地』という壁が粉々に砕けた。
次の瞬間、僕は隊長に向き直り、絶対に口にしないと誓った謝罪の言葉を半分土下座に近い体勢のまま何度も叫んでいた。
脆いなぁ、僕の意地。
顔を上げた後の隊長は、先程のしおらしい態度が嘘のようにいつもの笑みを顔に浮かべて、僕を再びぎゅうと抱きしめてくれた。本当に、嘘だったように。
そして、
「イヅルのそんな優しいトコ、ボク大好き」
確信。
僕は隊長に頗る甘い。それはもう、どんな甘味にも勝るくらいに。
冗談めいたその言葉だけで、僕は舞い上がるほどに嬉しかった。
僕のこの甘さは隊長限定なんだ、そういったらもっと喜ぶだろうか。
とも思ったが、それは流石に甘やかしすぎかもしれないな、と思い止まった。
既にどろどろになるくらいに甘やかしていることに気付いていたが、僕は知らない振りをした。
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うちのイヅルって歪んでるなぁ
イヅルは文句もあるし不満もある。ただそれを表に出さないで溜めてる。言えないのは、ギンへの忠誠心や尊敬の感情のほうが勝っているから、っていう感じのギンイヅ萌え