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2026年06月13日
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けいたいろぐ 4

2011年11月17日
携帯でかちかちしたお話
何か最近イチウリばっかり書いてる気がするのはきっと気のせいじゃない

二つともイチウリです
珍しく砂糖が微量
基本的に構成とかコンセプトとかは決めません!(死





【After school】


「黒崎。起きろ」
 
その声がきっかけかは分からないが、俺の意識はゆっくりと浮上していった。
重い瞼と僅かな倦怠感。眠っていたのだと少し遅れて思った。
何時から寝ていたのかなんてわからない。自分が眠っていたと気付いたのも今さっきなのだから。
 
顔を上げて最初に見えたのは、窓から注ぐ太陽の光だった。と思ったのだが、赤く強い光を放つそれが太陽ではなく夕日だと気付くのに時間は要らなかった。
真っ赤に染め上げられた空は、時間を経て少しずつ藍色に飲み込まれていくのだろう。夕日が沈んだ部分から暗い色のグラデーションが掛かり始めていた。
意識を手放す前、最後に見た空はまだまだ青く、太陽だって白い光を輝かせていた筈だ。ああ、どれくらいの間眠ってたんだろ。
ぼんやりと、なかなか覚醒してくれない頭が無理に稼働しようとする。
 
「やっと起きたか」
 
凛と通った声が、俺の脳を震わせる感覚。目が開かない。瞼が重い。
でも分かる。姿を確認するまでもない、声の主。
俺の、好きなやつ。
 
「いしだ、…」
 
自分でも驚くほどに呂律が回ってなくて、ちゃんと言葉になっているかも危うい。
口を開くことさえ、今の俺には面倒臭く感じられる。だるい。だるい。
今までの疲れがドッと溢れるかのように、気が付けば寝ていることが多くなった。
最近はちゃんと睡眠を摂れるようになったというのに。霊力を失ってから、死神として夜遅くに虚退治に行く必要も、そのせいで遅れた授業分の勉強を睡眠を削ってやらなくても良くなったのに。
逆なのだろうか。慣れてしまった生活習慣が急に変わってしまったから、体が付いて行かないというのもあるかもしれない。
 
「こんなところで寝てると風邪引くぞ。さっさと家に帰りなよ」
 
どうしようもない眠気がこいつの声一つで吹っ飛ぶとまではいかなくても、俺の目を覚まさせてくれる。
いつもは冷たく俺に当たるくせに、ふとしたときの言動がとても優しいのだ。今だって、それが本心かどうかは少し定かではないが、俺をそういう理由で起こしてくれた。確かに少し寒かった。
そんなこいつの優しいところが好きだった。
でも俺は動くのさえ億劫で、頭を上げただけで気だるさが倍増する。
 
俺の目には、赤い夕日の光が映った。静かに輝くそれが綺麗だな、なんてぼんやり思った。
 
「おい、黒崎!」
 
少し怒ったみたいな声音に耳を傾けた。僕の話を聞いていなかったのか、とかいい加減目を覚ませ、とか、まるで母親のようだ。別に俺のことなんて気にせず帰れば良いのに、こいつはそれをしようとしない。
肩を緩く揺さぶられた。こんなものでは俺の眠気を飛ばすことは出来ない。
だから俺の肩を掴む石田の手を掴み返してやった。
その手は一瞬びくりと震えて引っ込めようとしてたけど、俺はそれを許さず強い力で握った。それを別に振り払うわけでも嫌がるわけでもなく、意外にもヤツは大人しかった。手首から伝わってくる体温はいつもの如く低くて、心地好く感じた。
ガラにもなく、その手に甘えるみたいに頬を寄せてみても、やっぱり大人しかった。寝起きである俺の体温は少しだけ高かったようで(俺自身は気が付かなかったのだけど)、そいつの冷たい指先が気持ち良い。
 
「……く、ろさき」
「ごめん…あと少し、このまま」
 
音もない静かな空間。
俺と石田しかいない二人だけの空間。
夕日に飲み込まれて、真っ赤に染まった空間。
この世界に詰め込まれたものは俺の平穏そのままだった。
 
俺の体温が移ったのか、石田の手のひらがほんのりと温かくなっている。俺が離せば、またいつもの低い体温に戻るんだろう。
ヤツの指が頬を撫でた。傷だらけで決して綺麗な指とは言えないけど、白くて俺より断然細いその指が大好きだった。
声の調子から俺の行動に困惑しているのは明らかなのに、その指が驚くぐらい優しく俺の頬を撫でるものだから、覚醒しかかっていた頭が再びゆらゆらと揺れ始める。
そんな中、相変わらず石田は無言を貫き通していた。目だけを向けると、やっぱり燃えるような眩しさが突き刺さる。そろそろ日も沈む時間。
 
目の中に捉えた石田の姿は夕日を浴びてオレンジ色に反射していた。真っ黒な髪の毛も真っ白な肌も。
あいつの顔が赤く染まって見えたのは夕日に照らされていたからなのか、それとも俺のせいなのか。そこはちょっと定かじゃない。
(後者だと嬉しい、なんて思ったけど)
 
ただひとつわかったのは、窓に降り注ぎながら静かに輝く赤い光よりも、石田の白い肌に映えたオレンジの方が何倍も綺麗だということで、そんなことを考えながら俺の瞼は重みを増していく。
 
最後に見た石田は酷く穏やかな表情をしていて、そんな顔も好きだなと思ったことだけは意識がなくなっても覚えていた。



20111103
甘っぽいイチウリが書きたかった… 


――――




【髪の毛と恋】


最近髪の毛が伸びてきたなと感じたのは、授業中に目の前を遮る前髪を払い退けたときだった。
一年のときは眉毛に掛からない程度には短かったのに、ちょっと放っておいたら直ぐこんなに伸びてしまうものなのか。今では眉より短くするのはあまりしないようにしている。ガン垂れるような悪い目付きを隠しているというのが、周りに聞かれたときの理由だった。
別に他に理由なんてないから、聞かれても困る。
 
そんな俺は、ちょっと前に少し髪の毛を切った。切り揃えたと言った方が正しいかもしれない。本当に微量だ。切ったことに誰も気付かないくらいの量。
遊子が何かの雑誌かテレビに影響されたのか髪を切ってみたいと言い出して、その実験として俺の髪の毛が使われたのだった。
遊子はまあ普通に上手いもんで、俺の心配を余所に時間が掛かりながらも俺の前髪と襟足を綺麗に切り揃えてくれた。微量過ぎて親父や夏梨にもその功績に気付いて貰えず、拗ねてしまったというエピソード付である。
その翌日、そりゃ気付く奴なんていなかった。水色だって気付かないのに、啓吾が気付くわけがない。
と思っていたんだけど。
意外な奴に気付かれていた。
 
 
「髪、切ったのか」
 
 
授業の解らないところを聞いていた最中、俺が鉛筆を動かして考えてるときに石田はそう言った。
目の前の数学の問題が頭の八割を占めていた俺は、その言葉に「ん、ああ。切った。ちょっとな」とだけ返して鉛筆を止めなかった。あっちも「へえ、そう」と大して興味なさそうに一言。そのときは当たり前のような会話だと思っていたけど、おかしいと気付いたのは石田と別れて直ぐのことだった。
 
何で分かったんだ?
誰も分からなかったのに。
 
疑問は大きくなっていって、その日俺は寝るまで髪の毛を弄っていた。俺ですら切ったかどうか判別し難いくらいに変化が小さいのに、どうしてあいつにはあんなに簡単に気付かれたんだろう。
そういうのって、いつも俺の事を見てないと分からない事じゃないか。
と、自分で考えて少し恥ずかしくなった。これでは石田がいつも俺の事を見てるみたいじゃねぇか。有り得ないなと思いながらもほんの少しだけ嬉しかったのも嘘じゃなかった。
有り得ないって分かってるけど。
本当は石田にその事を聞いてみようと思ったんだけど、あまりにも下らないような気がして聞くのを止めた。
 
 
 
それで、今。
やっぱり伸びたのはほんのちょこっとだ。普通に見てる分にはあんまり変わらない。実際に目に掛かってみると分かるだろう。
 
「髪伸びた気ィする」
「そっか?俺はあんましわかんねぇな~」
 
啓吾が俺の髪の毛を弄りながらそう言った。
若干気になったけど、まあ支障がでるわけでもないし、良いや。
 
そして俺は。
あの日と同じように石田に勉強を教えてもらっていた。今度は数学ではなく物理である。
前の事を忘れていたわけではなかった。寧ろ期待なんてしていた。
また気付くだろうか。
こいつは、俺の小さい変化にまた気付いてくれるだろうか。
石田を見る。何だかんだ言いつつ細部まで丁寧に解説をしてくれるそいつは今、ノートに説明用の図を綺麗に書いていた。重要な言葉を聞き逃さないよう注意していた筈なのに、頭にはずっと期待だけが付いて回る。そのせいで結局聞き逃し、同じところをもう一回解説してもらったり。
ああ、石田が相手でも厚意を無駄にするのは悪い気しかしない。折角教えてもらってんのに。
 
「聞いてるか?」
「っあ、お?わりぃ、聞いてなかった」
 
露骨に不機嫌そうな顔をされた。当然だ、もう何回目かわからない会話だし。
大きく溜息を吐かれて、教科書をパラパラと戻した。
 
 
勉強中、俺の髪の毛に触れることはなかった。それが普通なんだと言うことは分かっていた。それだけにちょっとでも期待してしまった分、多少ショックだってある。
勝手に期待していた俺が悪いんだけど。
きっとあのときは、たまたま気付いたんだ。何となくな違和感でも感じ取ったんだ、きっと。
完璧に下がりつつある気分に嫌気がさした。溜息を付きたくなる衝動を押さえながら、俺は鞄に教科書を突っ込んだ。
 
「ああ、そうだ黒崎」
 
石田の思い出したような声に耳を傾ける。
 
「さっきの公式、応用にも利くから。色々試してみなよ」
「ああ、サンキュ」
 
先程教えてもらった公式を思い出す。ノートに書き込んでもらったりしたけど、理解したかと言われたらまちまちだ。家でちゃんと復習しないと。
後ろで鞄を持ち上げる、布の擦れた音がした。あ、石田が帰る。
 
「それと」
 
教室の戸が開かれる音に振り向いた。
 
 
「髪、伸びたね」
 
 
廊下に消えた石田を俺は追いかけた。
最後に呟かれた言葉は小さかったけど、俺にはしっかり聞こえてしまった。
既に階段を降りかかっていたそいつを呼び止めた。階段のせいで、自然と見下ろす形になる。
 
 
「…何で、気付いたんだ?」
「何を?」
「……髪」
 
 
俺と同じように伸びてきた石田の髪が、こっちを振り向くときに揺れた。
窓からの光が反射して、レンズの奥の瞳は見えなかったけど。
 
 
「…いつも、見てるからかな」
 
 
声が穏やかだから、ちょっとした錯覚が起きたのかもしれない。
すごく優しそうに笑っているように見えて、今度こそ頭の中が真っ白になった。
 
有り得ないって分かってたのに。
有り得ないって思ってたのに!



20111117
デレうりゅ!
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