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中途半端な愛し方(T&B:虎←兎)
苛々したりもやもやしたり、胸が張り裂けそうだったり幸せだったり憤りを感じたり。そんな今までに感じたことのなかった不思議な感情ばかりがバーナビーを突き動かす。
「愛しているのなら、」
ソファに座る虎徹を冷たい眼で見下ろしながら、突拍子のない事を口から紡ぎだす。
「中途半端に愛さないでください」
虎徹は目を丸くする。当然、彼の発言に今の状況を把握できなかったからだ。自分はただソファに座ってそこらへんに落ちている雑誌を読んでいただけだというのに。全く彼はいつでも唐突だ。
「どういうこと?」と首を傾げる虎徹の左の手。
雑誌を持つその骨ばった指にはあまり似つかわしくないシルバーが煌くのだ。
またバーナビーは不快そうに眉を寄せる。本当は叫びたいほどに苦しいのに、喉が焼けるように熱くて痛くて、何も奥から出てきてくれない。
少し油断すれば、涙が零れてしまいそうな。それくらい辛くて苦しくて、でも好きなのだ。
「貴方には愛する人が居ます」
「……?」
「愛する娘もいます」
「…うん」
「そして、愛の誓いを持っています」
なるほど、バニーはこの指輪のことを気にしているのだな、と直ぐに分かった。
虎徹にとって、何にも変えがたい大切な思い出。この指輪もその一つだった。
愛する人がこの世から居なくなって、昔は自分を繋ぎ止めるものがこの指輪と愛娘しかいなかった。
今は。
「俺はバニーを愛しているよ」
「だから嫌なんです」
「バニー?」
「僕は貴方のことが好きです。だから僕は、貴方の愛していた人や、貴方が愛している娘さんや、終いにはそんな無機物にまで嫉妬しているんです。僕は、最低の人間ですよ」
「貴方が愛したもの全てを愛すことが出来ないんです」
バーナビーが自嘲気味に笑う。その表情が酷く悲しそうで、虎徹はそれを見ていることが出来なかった。
「だから僕は、貴方に愛して欲しくないんです」と、そう呟いた相棒の頭をぐいと引っ張って引き寄せる。肩が小刻みに震えていて、彼にこんな感情を持たせている自分が嫌になった。
(僕は全部愛したい。貴方が見たもの触れたもの、好いた人愛した人、全てをひっくるめて貴方を愛したいのに、僕にはそれが出来ない)
虎徹を困らせたいだなんて思っていない。でも一度溢れた感情を塞き止めるのはもっと難しい。
「バニーちゃんはめんどくさいな」
「っ、」
「でも、そんなとこも全部愛してるよ」
髪の毛を梳く指はやっぱり優しい。バーナビーが見るのも嫌になる左の薬指が、癖のある金髪をゆっくりと撫でる。どんなにどんなに優しくても、この男はとても残酷だ。
「…愛しているのなら、中途半端に愛さないでください」
先程の言葉をもう一度虎徹にぶつける。
僕を一番に思ってみて。僕のことを考えて。指輪なんて気にできないくらいに僕を愛してみてください。
僕は貴方の一番になれないって分かっているけど、それでも僕を一番に思ってください。
「ごめんな」
その一言で、今度こそバーナビーの瞳から雫が零れた。
(あなたはとてもざんこくだ)
――――――――
虎徹にとっては奥さん=楓=バニー、なんだけどバニーちゃんから見れば奥さん=娘さん>>>(越えられない壁)>>>自分、みたいな感じ
卑屈で自信がないバニーちゃん
隣りがいい(角←←←弓)
久しぶりに開いたような僕の瞳は、これまた久しぶりに太陽と挨拶を交わし、目の前がぐらぐらと霞むような光をプレゼントしてもらった。
実際霞みすぎて頭ががんがんに痛くなったけど、とりあえずは目を擦って耐える。少しの間眉根に指を当てていたら、次第に視界は鮮明な風景に変わった。
風景、だなんて綺麗なものじゃない。広いとも狭いとも言えないような、普通の座敷部屋。僕が何回瞬きしても、目の前に広がる茣蓙は無くなってはくれなかった。
身体を起こそうと力を入れると、やはりまたずきりと何処からともなく痛みを感じる。何でこんなに痛いんだろう、なんて昨日辺りの記憶を懸命に探る。
思い出したことといえば、因幡影狼佐が作り出した自分達の『霊骸』に、見事な惨敗をしたことだけだ。
あの霊骸は実によく出来ていた…なんて、そんなことを考えるのはもうやめにしたい。それは当然霊骸如きが自分の美しさに叶うはずがない、という思いも込められているが、やはり最大の理由は『負けた』からだ。
あの時滅却師である石田雨竜が来てくれなかった僕らは殺されていたんだろうな。彼には礼を言いたいけれど、やはり十一番隊としては他人に助けられるだなんて恥晒しもいいところ。僕は素直に喜べなかった。
そこまで考えて、共に戦った同じ十一番隊の人間を思い出す。
一角。
僕は辺りを見回そうと思った。一角の無事を確認しようと思ったからだ。
目の前にあったのは異常に図体がでかい塊だった。うっかり一瞬怯んでしまった。
「………」
ただの大前田である。
最初の感想は、何故僕の隣りにこいつを寝かせたのかというところだ。僕の体が傷だらけじゃなかったら、思い切り蹴っているところだと言うのに。
苛々しながら痛む身体を押さえて立ち上がる。そこから見えた大前田と一角の間は、人一人分が寝れるくらいの細いスペースがある。何故僕をそこに入れなかったと思うと同時に、何故ここだけ不自然に空いているんだろうと疑問に思った。
その疑問は直ぐに解消された。
大前田の寝てる上方にも、空いている空間がある。そこに檜佐木が頬杖を付いて眠っていた。きっと僕と同じように目が覚めて、隣りが大前田だったから移動したのだろう。正直な人だ。
でも僕は檜佐木に礼を言いたかった。なんていったって一角の隣りを空けてくれたんだからね!
でかい図体を跨ぐのは少し品に欠けるかと思い、遠回りをして一角の隣りに場所を取る。ほんの少し歩いただけなのに、座った瞬間に酷い疲労で目の前がくらくらした。
茣蓙に手を付くと、ざらざらした感触が掌に広がる。
そのままぐっすり眠る一角を見つめた。随分な熟睡な様で、僕が隣りに寝そべってもピクリとも動かないし、寝言さえ一言も零さない。半開きの口から漏れるのはいびきだけだ。
もう片方のいびきは酷く煩くて耳を塞ぎたくなったけど、一角から紡がれる音の方が僕にはよく聞こえる。大前田の雑音なんてどうでもよくなった。
僕は目を閉じた。次に僕が起きたとき、一角も起きていれば良いなと考えながら、目を閉じた。
「おやすみ、一角」
君の隣りに寝ている方が、僕はよく眠れそうだよ!
――――――――
アニメオリジナルより。男共の雑魚寝が可愛くて、弓親がちゃんと一角の隣りで寝てるのがもっと可愛くて、最初は離れてたけどわざわざ一角の隣りまできて眠る弓親を妄想して悶えた結果がこれだよ
(ネウロ:笹塚と石垣)
「…………あぁ。そういやそんなんもあったような……」
「もー先輩は直ぐ忘れるんですから!俺確か五月にも声掛けたじゃないっすかぁ!」
「……なんでお前がそんなにテンション高いの」
「逆になんで先輩はテンションが高くないんですか!先輩の生まれた日ですよ!もっともっと喜びましょうよ!」
「……だから何でお前がテンション高いんだよ」
「と、いうことで!今日から先輩の誕生日までの日数をかけて大規模なプラモ製作に!」
「勤しまなくて良いから」
「何でですかー!でっかいヤツ作って先輩にプレゼントしますよ!楽しみでしょ!」
「そりゃお前が楽しいだけだし、俺の部屋にそんなん置くスペース無いよ…」
「どれくらいが良いかなー。先輩くらいの大きさのって売ってるかなー」
「だからいらないって。作っても多分っていうか絶対壊すから」
「何で壊すの前提?!折角なんだからちゃんと保管しておいてくださいよ」
「いやだって邪魔だし鬱陶しいし」
「ひでー!!」
「俺はお前がちゃんとサボらず遊ばずしっかり勤務をこなしてくれさえいればそれでいいよ」
そう言ったのに、結局後輩がそれを守ることは俺の誕生日でさえ叶う事はなかった。
でも何だかんだ言いつつ日付をちゃんと覚えてくれていたのだけは嬉しかったから、そいつが十日くらいかけて製作していたガンダムだか何だかのプラモの足をぼっきり折るだけで勘弁しておいた。
(ぎゃーーーーー!!先輩酷い!まさか足だけ折るなんてそんなむごいこと)
(ありがとな)
(しなくても……って、えぇ?)
――――――――
笹石が好きだった時代がわたしにもあったのだ…
いやよいやよも(T&B:虎←兎)
だとすればこの感情は一体何なのか、僕の頭でも定義することがかなり難しい。
「『いやよいやよもすきのうち』っていうじゃねーか」
僕は『いや』ではなく『きらい』だ。しかしいやときらいの違いとはなんだろうか。自分で言ったことなのに解消されがたい疑問が生まれてしまい、僕はよく分からなくなる。
しかしそんなことは今は問題ではなく、僕がおじさんのことを嫌いだ嫌いだと思っているそれ即ちおじさんのことが好き、そう遠回しに言っているようなものなのだろうか。
何が「いやよいやよもすきのうち」だ。嫌だったら好きなわけがないじゃないか。日本語というのはとても曖昧でとても矛盾している。
全く面倒くさいことこの上ない。そんなのよりだったら英語の方が率直でとても正直だ。
でも僕はそんな曖昧で矛盾していて、言い回しが面倒くさくて慎ましやかな日本語が嫌いではない。
「僕は貴方の事が好きではありません」
「俺はお前のこと嫌いじゃないんだけどなぁ」
どちらにせよ、とても曖昧な響き。
僕は嫌いという意味を込めて敢えてこの言葉を選んだ。直接的に、目を見ながら「嫌い」というのには何だか抵抗があったからだ。
日本語とは便利だ。本心を全て隠してくれる。
そう考えている時点で、僕はおじさんのことが嫌いではないのだ。
おじさんはどんな意味を込めて僕に「嫌いじゃない」と言うのだろう。
嫌いじゃないということは嫌われているわけではない。しかしそれで好かれていると判断するのはあまりにも自惚れているのではないか。
おじさんは、おじさんを蔑ろにしようとする僕のことが嫌いではないし、同時に好きでもない。
僕が好かれないようにしたのだ。おじさんは優しい人だから、誰にでも手を差し伸べるしお節介を焼く。僕はそれが嫌で嫌で堪らなくて、彼を蔑ろにするのだ。
そうだ、僕が一人になりたかった。
それなのに、僕はおじさんに嫌われていないことが嬉しく、好かれていないことが悲しかったのだ。
僕の性格も相当矛盾していて、態度とは裏腹に僕の表情は酷く歪んでいった。
苦笑したおじさんが僕を抱きしめてくれる。
おじさんは優しいのだ。誰にでも、どんな人にも、勿論僕じゃない人にも。
「バニーちゃんは素直じゃないな~」
「…貴方なんて嫌いです」
「『いやよいやよも』?」
「嫌いです」
おじさんが優しく僕の頭を撫でてくれる。
僕は、おじさんの優しさが嫌いだった。
日本語は嫌いではないが、曖昧で矛盾しているところは嫌いだった。
僕は、ぜんぶぜんぶ矛盾しているのだ。
――――――――
限りなく虎←←←←←兎だけど虎兎
無意識片思い(イチ←ウリ)
授業を聞いているとき、ふと黒崎のことが気になった。
気になりたかったわけじゃないのに、何故だか今物凄く黒崎のことが気になったのだ。それは何故なのだか僕には分からない。本当に、ふと思っただけだった。
僕の席は黒崎の列より前。つまり僕が彼の姿を見るためにはわざわざ後ろを向かなくてはならない。授業中に余所見をするのは好きではないし、いざ振り返って全く違うクラスメイトと目が合ってしまっては途轍もなく微妙な気分になる。
今、黒崎が何をしているかは僕にはわからない。数学教師が計算式の公式を読み上げる声と黒板に文字を書くカツカツという音。カリカリ、という鉛筆の進む音。今の教室にはそれしか聞こえない。
鉛筆の進む音にはきっと黒崎のものも混ざっているだろう。しかし僕は超能力者ではないから黒崎だけの音を特定するのは酷く困難だ。困難というか、そんなこと出来っこない。
どこからか規則正しい寝息も聞こえてくる。授業中に寝る人間は必ず一人二人は居るだろう。でも、僕はそれが黒崎だとは思わなかった。彼は見た目はあれだが真面目な性格だからだ。
僕は自分のノートに目を移した。いつもならばびっしりと隅から隅まで完璧にノートを取っているはずなのだが、僕は一体いつから鉛筆を止めてしまっていたのだろう。僕が最後に書いていた計算問題は、もうとっくの昔に黒板に書かれて消されたものだった。急いで教科書を開く。それを開く事さえ忘れていた僕はどうかしている。
僕の知らない内にページが一ページ進んでいた。
僕は腹が立ってシャープペンシルを握り締めた。怒りの矛先は黒崎だ。
あいつのことを考えている間に授業が進んでしまった。いつもならこんなことは絶対にない筈なのに。それもこれも僕の頭の中に勝手に進入してきた黒崎の所為なのだ。
僕がこんな理不尽な考え方をしてしまうのも黒崎の所為だ。またしても理不尽だとは分かっている。
「石田?聞いてるか?」
はっとして頭を上げると、数学教師が物珍しそうな顔で僕を見ていた。教師だけじゃない、他のクラスメイト達も、僕を凝視。ぎりぎりと握っていた指の力を抜く。変な汗をかいていた事が恥ずかしかった。
きっと黒崎も僕のことを見ていることだろう。それが一番嫌だった。
「すみません、少し、上の空でした」
「そうか?じゃあもう一回言うが、ここの問6を解いてみろ」
問6、僕は彼の言葉を頭の中で反響させながら教科書をぱらぱらと開く。問4も問5も僕は解いていなかった。僕が考え事をしている間に過ぎて行ったのだ。
取り敢えず目で見ながら計算式を組み立てて、ノートに少し書いていく。公式を当て嵌めれば別に説明を聞いていなくても解けるような問題だった。皆の視線の中、少し硬い動きで椅子から立ち上がる。
僕が黒板までの短いけどすごく長く感じる距離を歩こうとしたとき、教師が更にこう言った。
「ついでに問7、石田を睨んでる黒崎!解いてみろー」
心臓が今までにないくらいに跳ね上がった。反射的に胸を押さえてしまい、そんな自分の行動が酷く恥ずかしい。僕が驚く必要などないのに、どうしてこんなにも意識してしまうんだろう。
クラスメイトの視線とざわめきに混じって、僕はちらりと黒崎を見た。
黒崎は面食らったような表情をしていた。「別に睨んでたわけじゃ」とかなんとか教師に弁解をしていたけど、結局黒崎は席から立った。鮮やかなオレンジ色の髪の毛をがしがしと掻きながら、僕の隣りに立ってチョークでとんとんと黒板を叩く。
先程までの静寂とは違って、教室には少しばかりの喧騒が生まれる。いつもなら人のざわめきは苦手なのだけど、今だけは少しだけ有難いと思った。
「お前、何でぼーっとしてたんだよ」
隣りからチョークの音と共に僕にしか聞こえないような小さな声で黒崎が言葉を発した。近くには僕しかいないから、僕に話しかけているのだというのは明確だった。
「別に、君には関係ないよ」
「霊圧がぶれにぶれまくるほどに不機嫌そうだったのにか?」
「全部君の所為だ」
「はあ?」
突拍子もない責任転嫁に黒崎が呆れたような顔をする。僕は被害者側だ。勝手に頭の中を占領されているのだ。無断で人の領域に踏み込んできた黒崎が悪いのだ。
すると、黒崎は意地の悪そうな顔を浮かべた。
「…ってーと、ずーっと俺のことを考えてたわけだ」
今日の僕はどこかがおかしい。何故だか気にもしたくない黒崎のことがこんなにも気になって、彼の顔を見ようか見まいか悩んでいる間に授業に置いて行かれ、授業の内容は全く頭に入っておらず、それなのに未だに考えるのは黒崎のこと。
まさか今日一日ずっと彼のことを考えていた、ということか。
僕は黒崎の一言で目の前が真っ白になった気がした。同時に顔に熱が集まる。
僕は乱暴に、黒崎の解いていた計算式の途中を黒板消しで消してしまった。殆ど無意識の行動だ。
黒崎が驚いた顔をした。
やりたいことだけやって、僕は自分の席に戻った。顔が熱くてしょうがなかった。
僕が黒崎のことを考えてる?そんなこと有り得るもんか!
――――――――
無意識すぎるイチ←ウリ。雨竜は「自分は黒崎のことが嫌いだ」と思いながらも気付かないうちに片思いしてる。
わたしは雨竜が死神嫌いっていう初期の設定がやっぱり好きです