忍者ブログ

[PR]

2026年06月13日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

自転車

2010年10月08日
学パロー




図書室で本を読んでいたら、気付けば外はすっかり暗くなってしまっていた。
明日香は時計に目を移す、既に六時を回っている。時期も時期で、六時だとだいぶ暗い。読んでいた本を閉じて、素早く席を立った。
外に出てみると、図書室から見たときよりは若干空が明るい。紅い空が青く、黒く変わっていく。グラデーションが掛かって綺麗だと小さく思った。
今日、兄である吹雪は部活が無かったはず。自分が帰ってこない事を少しばかり気にしているかもしれない。
携帯を取り出し、吹雪に今から帰るという内容のメールを打とうとした。
最初の一文字をかちりと打った時、ちりんちりんと自転車のベルが何処からか鳴った。不思議に思い、きょろきょろと辺りを見回す。再び、ちりんちりん。後ろの方からだった。
終いには「おーい!」と、多分自分に向けられているのであろう聞き慣れた声。
暗闇から、赤い自転車に乗った、赤いパーカーを着た男子生徒が顔を出した。

「十代?」

明日香と同じクラスの、遊城十代である。元気で明るく、太陽のような存在。誰からも好かれるような彼はクラスメイトで親友、そして彼女がひっそりと想いを寄せている相手でもある。
ちゃかちゃかと音を立てながら自転車をこいで、明日香の近くまで来ると足の運動を止める。周りは暗いのに、彼の笑顔はとても輝いて見えた。

「明日香、今帰り?」
「ええ、そうよ。十代は何でこんな時間まで学校に居たの?」
「んー、クロノス先生に捕まって今まで未提出だったレポート全部書かされてた」

参ったぜー、とへにゃへにゃと笑う十代に、明日香も自然と笑みが零れる。
帰りに十代と一緒になるなんて、珍しい事だ。普段彼は学校が終わると、すぐに翔や剣山と共に何処かへ行ってしまう。明日香は部活があったら部活へ、無かったら図書室へ、が日課だった。
帰り道を共にすることなんて滅多にない。少し、嬉しかった。
十代が自転車のペダルに足をかける。もう帰るのかと思うと少しだけ残念だったが、時間も時間だ。

「あ、そうだ明日香。お前折角だから後ろに乗って行けよ」

別れを告げて歩き出そうとした明日香に、十代の声が掛かる。一瞬、どういう意味か把握するのに時間がかかったが、すぐに首を振った。

「それは……悪いわ。十代は私と家が反対方向でしょ?」
「だって、もう四十分過ぎてるぜ。バス無くなっただろ」

時計を見ると、確かに六時四十分過ぎ。いつの間にこんなに話しこんでいたのか。明日香の家は、学校から若干遠い。明日香と吹雪の兄妹は、よくバスで学校に来ている。今日はバスの日だった。
歩いて帰れない訳でもないが、少なくとも一時間半は掛かると思われる。
十代はにかっと笑って、親指で後ろの開いているスペースを指す。

「お前一人で帰るのも危ないだろ?乗って行けよ」

正直、断る理由はなかった。
暫くその場で悩んでいた彼女は、十代を見、彼の自転車を見、「じゃあ、お言葉に甘えて」こくりと頷いた。
後部に座ると、「ちゃんと俺のこと掴んでろよー?飛ばすからな!」と言われたの、だが。

どうやって掴めばいいのか。何処を掴めばいいのか。そのことが明日香の中で渦を巻いていた。
そう言うのはベタに、彼の腰に抱きつく形で捕まればいいのだろう。しかし、明日香にはどうにもその勇気が出ない。寧ろこれは好意を寄せる彼に抱きつくチャンス。しかし、ここで変に抱きついて微妙な空気になったり、引かれたりしたらどうしよう。まず、それ以前に抱きつくなんて恥ずかしい行為、自分にできるはずがない。

パーカーの端っこを指で摘んでみる。「……もっと普通に捕まって良いんだぞ?」と不思議がられた。
肩をしっかりと掴む。「ちょ、いてて!何でそんな力入ってんだ?!」困惑したような声がした。
敢えてどこも掴まない作戦に出る。「……落ちるぞ?」と不審に思われた。

鈍い十代は気付かない。それだからもどかしい。意を決して、そっと十代の腰に腕を回す。そのままぎゅうと力を入れた。彼の背中に、顔を埋めるような形になる。
すると、「よっし!」という十代の声がすぐ傍から聞こえてくる。途端に動きだす自転車と、顔やら手やらに冷たい風が突き刺さる感覚。
完全に顔が火照ってしまった明日香には、ちょうど良かったのかもしれない。

「久しぶりだなーお前と一緒に帰るの!」
「…そうだった、かしら……」
「おう!なんか久しぶりですげぇ楽しくて嬉しい!」

十代の楽しそうな笑顔が目に浮かび、明日香もくすりと笑って彼の背中を近距離から見つめる。
静かに目を瞑って、背中の温かさを感じた。
あと家までの一時間


携帯が鳴った。開くと新着メールが一件。
メールを開くと、件名に泣いてる絵文字が三つ連なっている。送り主は、吹雪だった。
そういえばメールをするのを忘れていた。慌ててメール内容を開く。
『帰りが遅いけどどうしたの?!もしかして誘拐された?!今何処?!僕が迎えに行こうか?!』という内容のもので、心配していますという感情が痛いほどに伝わった。少しだけ苦笑して、こんなにも心配してくれる兄を嬉しくも思った。

「吹雪さんか?」
「ええ、とても心配してるみたい。連絡するの忘れてたから」
「じゃ、早く帰んねーと!」

もっと飛ばすぞ!と言って、十代は更にこぐ力を強めた。




『件名:大丈夫
 本文:

 心配してくれてありがとう。
 でも大丈夫。十代が一緒だから。』


――――――――

チャリ乗ってるときに考えたやつだからまとまりが無いな!
吹雪さんはメールの返信を見て心配しながらニヤニヤしてる
PR
Comment
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Trackback
トラックバックURL: