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2026年06月13日
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空←兎っぽい話

2011年07月25日

「これを君にあげよう」

彼が僕に差し出したのは真っ白い薔薇だった。
何が何だか良く分からなくて、僕は目の前の人物の顔を見た。
彼は眩しいくらいの笑顔で、まるでどこかの国の王子様のようだ。
なんていう少しメルヘンチックな思考を打ち切って、白い薔薇を前に首を振った。

「あの、どうして僕に」
「…どうしてだろう。何となく、だろうか」

困ったように眉を下げながら、それでも彼は笑う。その目は何だかとても傷付いていて、寂しそうにも見えた。
僕は最近人の目に敏感になってきている。人々の変化を見逃さまいと少し神経を尖らせているからかもしれない。こんなことを考えるようになったのも、虎徹さんと組んでからだろうか。彼が僕に関わってきてくれてから、随分と変わっていると自身も実感している。
そんなどうでもいい事を考えていたら、いつの間にか僕の手の中に白い薔薇が握られていた。
困惑する僕の顔を見てか、やはりキースさんは寂しそうに笑った。
彼でもこんな顔をするのだな、と少しだけ思った。いつも笑顔でたくさんの人々を助け、性格ゆえにやはりたくさんの人々に慕われ、好まれるような、まさにキングオブヒーローと呼べるであろう人物。
だから僕は、彼のこんな顔を知らないのだ。

「本当は、それを渡したい人が居たんだよ」
「では、何故…」
「居なくなってしまったんだ」

私の前から。キースさんの顔に影が落ちる。僕はどうしていいのか分からずに、ただ茎の部分を握っていた。

「彼女は」

「私が嫌いになったのだろうか?」

見つめてくる悲しげな目が痛々しくて、僕は彼に白い薔薇を突き返す。
驚いたように細められた瞳は、僕を真っ直ぐに見つめていた。
駄目だ。僕には分からない。
キースさんが体験した気持ち。愛しく思う気持ちや、悲しむ気持ち、苦しい気持ち。そして、彼に好かれた女性の心も僕には分からない。
僕には、分からないんだ。

「大丈夫ですよ」
「貴方を嫌いになる人なんて居ません」

「だからこれは、貴方が持っているべきですよ。いつか帰ってくる彼女のために」

彼の指に花を持たせる。
体格にあまり差はないように感じるのに、彼の手は僕よりも全然大きく見えた。
その手が今、微かに震えているのだ。
こんなに弱い彼を、僕は知らない。

「彼女は帰ってくるだろうか」
「来ますよ」
「本当に?」
「ええ」

根拠も無い僕の頷きに、彼は小さく笑って「よかった」と呟いて、白い薔薇を愛しむように見つめる。
その顔も僕は知らなくて、彼に関してわからないことが多すぎた。
たくさんの表情とたくさんの想いをたくさん受けた彼の愛した女性が、ほんの少しだけ羨ましくなった。


――――――――

空兎を書こうとした。どちらかというと兎→空→シスって感じになっちゃった
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