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2026年06月13日
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僕にとっての最高ヒーロー(T&B:虎兎)

2011年07月28日
17話後の妄想











「本当にヒーロー、やめるんですね」

自分のデスクを片付けていると、後ろから声が聞こえた。
でも俺は振り返らず、返事だけを返して黙々と仕事を片付ける。
この仕事を終わらせてしまえば、俺のここでの役目は全部終わる。
本当は振り返りたい。あいつの顔をちゃんと見て、納得してもらえるような説明をして、最後に抱きしめたかった。
けど、それでは俺もあいつも未練が残るだろうと思って、まだバニーには伝えないと思っていたのに、どうやら情報は漏れるのが早いようだ。
ヒーローを辞めることは、まだロイズさんと社長にしか話していない。
それはとても急な話だったし、今俺が辞めるというのは会社に大きな痛手だろう。ビジネスでやっていると言うことは分かっているつもりだ。それでも、俺にだって事情と言うものがある。
一つの誓いと言ってもいい。俺の愛した彼女が守りたかったものを、俺が守る番になった。
勿論反対はされたけど、俺の意志は揺らがない。
今の俺では、何百万人といる市民を守れないのだ。市民も何も守れず後悔しながらヒーロー業を続けるよりなら、この世で一番大切なものを守るちっぽけなヒーローになる方がいいだろう。
既に荷物は纏めてある。あとは、今やっているこのデスクワークだけ。

「手伝いませんよ」

発せられた声は予想外に淡々としていた。次いで、壁に凭れ掛かるような音も聞こえる。
それ以外バニーは一言もしゃべらず、ただ俺の仕事を凝視していた。
キーボードを叩くカタカタという音以外殆ど音がない仕事部屋は久し振りかもしれない。普段は俺の馬鹿な発言にバニーがやんわりと突っ込みを入れるような、そんな日常ばっかりだったから。
バニーは俺を無視しなくなった。話だって聞いてくれるし、頷いてだってくれる。よく笑ってくれるようにもなった。
ただ、あっちから会話を振ってくることは相変わらず少なかった。

「…バニー」
「何でしょうか」
「お前、俺にヒーロー辞めてほしくないって思ってる?」

背中から聞こえたのは深い溜息一つ。

「僕が何か言ったら、辞めないでくれるんですか?」

答えが分かっているのに、無駄な質問をしないでください、と、そいつは言った。
確かに、バニーに言われたとしても俺はきっと辞めるだろう。それでも、もしかしたら俺はバニーに言われたかったのかもしれない。引き止めてほしかったのかもしれない。

「指、止まってますよ。さっさと終わらせてさっさと帰ったらどうです」

その声は酷く冷たくて、俺はつい後ろを振り返ってしまった。その言い方は流石にないんじゃないかと少しカチンと来たんだ。仮にも、いや仮じゃないけれど、今まで一緒に仕事をしてきた相手にぶつける台詞ではないだろう。
俺に表情を見せず、そのまま部屋を出て行こうとするバニーの腕を咄嗟に掴んだ。
文句を言おうと思った口は、「お前」と形作ったところで止まってしまう。
俺は、バニーのこんな顔を見たことがない。
今にも泣きそうな、そんな表情。
人を刺せるくらい鋭利で冷たい声音を発していた人物は、その声主とは別人だったのではないかというくらい震えていた。

「僕はっ」

次に出した声は今までとは格段に違っていて、搾り出すように、震えて掠れた辛い声。
その拍子に、潤んだ目からぼろぼろと宝石みたいな粒が彼の白い頬に降り注ぐ。
ずっと我慢をしていたかのような、拭っても拭っても押さえきれないくらいの、涙が、ぼろぼろと。

「僕は貴方から教えられました、復讐しか知らなかった僕に、復讐のためだけに生きていた僕に、生きてる喜びとか、楽しさとか、幸せとか、」
「…バニー」
「そして知りました、あなたとすごす時間が、これがよろこび、これがしあわせなんだって、」

目の前の青年は子供のように涙を流す。
そうだ、彼はつい一年前まで、四歳で時間が止まってしまった子供だったのだ。
俺は無意識のうちにバニーを抱き締めた。俺よりも身長は高い筈なのに、腕の中にすっぽりと納まってしまう。
丸まった背中とか、涙を拭う指とか、全てがこいつを子供に見せる。
真っ赤に腫れ上がった瞳の所為で、本当の兎さんのようだ。

「ぼくは、ヒーローをやめてほしくないんです、でも、あなたが決めたことだ、だからぼくは、口出ししないって決めてたのに、なんでこんな、」

呂律が回らない口で必死に伝えようとしてくれていることが嬉しかった。
俺は愛されてるんだって思えて、嬉しかった。

「ありがとな、バニーちゃん。自分勝手なおじさんでごめんな」
「っう、ほんとですよ」
「ごめんな。でも、こんなおじさんを愛してくれてありがとな」

ありがとな。俺もバニーをとても愛してるよ。
そう言って俺がハニーブロンドに口付けると、バニーは最後に照れくさそうに、嬉しそうに笑った。
まだ止まらない涙の粒が、その姿を一層綺麗に見せてくれた。




会えなくなるわけじゃないんだ。俺はいつもそこに居るから
寂しくなったら会いにおいで

寂しくなんてありませんよ、貴方はそこに居るんだから



――――――――


なんか最終回くさいな!永遠の別れじゃないんだからこんな壮大になんなくてもいいだろ!!と書いた本人が思いましたちょっとやりすぎちゃったぜ!
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