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2026年06月13日
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主従(戦国BSR:幸村と政宗)

2012年02月04日
携帯でかちかちしたお話

・宴の松永ストーリー・一章の話
・佐助と小十郎死ネタみたいな
・松永にぼこられたあとの幸村と政宗の話









 
青い空。
目の中に急に差し込んできた光が痛い。
節々の痛みに身体が悲鳴をあげながらも、政宗はその身を起こす。近くに転がっている自身の兜は、三日月が真っ二つになっているというなんとも無様な姿だった。
 
(俺の、月…)
 
頭に付けられている傷は血が出ているものの相当浅い。きっとコイツが守ってくれたのだろうと、欠けた三日月を引き寄せた。
一番深い傷は胸から腹にかけての切り裂き傷。神経が麻痺しているのか、あまり痛みを感じない。それとも既に血が止まっているからだろうか。どちらにせよ、生きていることが奇跡に近かった。
周りは草が焼けた臭いと血の臭いがうっすらと漂っていた。政宗自身も服が黒く焦げていて、そこから真っ赤に腫れた皮膚が現れている。
そして、もう一人の姿。
 
「…オイ、アンタも生きてんだろ、真田幸村」
 
声を掛けると、返事はなかった。しかし政宗は彼が生きていると確信していた。理由なんてない。ただ直感的にそう思ったのだ。
案の定、幸村は身体は起こさず首だけを動かして政宗を見た。
その目は完全に生気が消え失せていて、政宗は眉を潜める。
 
「…某達は」
「負けたんだよ。松永久秀に、な」
 
防具も何もつけていない幸村の無防備な腹は、火傷で腫れ上がっている。松永の撒いた火薬の中に突っ込んだのだから無理もない。馬鹿だとは思うが、後先考えず正面から斬りかかった自分も相当馬鹿だ。
頭に血が昇っていたのだ、正常な判断など出来るわけがない。
幸村が、焦げて丸見えになった土をわし掴むように握り締めた。
一騎討ちを邪魔された怒り、戦に負けた悔しさ、しかし幸村が思うことはそんなことではなかった。
脳裏に焼き付くのは、松永の一番残酷な言葉。
 
「さ…すけ、さすけぇ…っ」
 
震える声で従者の名を呼ぶ幸村に、政宗は耳を塞ぎたくなった。
優雅に歩きながら自分達の一騎討ちに乱入してきた松永。ここに繋がる門は竜の右目が守っていて、乱入者となると真っ先に武田の副将である忍が対処する。
その二人が見えなくなり、松永がここにいるということは、つまり。
(俺達は松永から、遠回しに二人は死んだと伝えられたのだ)


「う、あ、うあぁあ…」

武田の総大将は、嗚咽を漏らしながら涙を流し始めた。頬を伝う前に地面に落ちる滴は、乾いた土を濡らすだけ。
メソメソすんじゃねえ、そう怒鳴りたかったのに、政宗も声が出なかった。
総大将は、何があっても立ち止まってはいけないことを政宗は知っている。戦に負けようと、部下を何人失おうと、悲しむより先に前に進まなくてはならない。
例え、右目を失おうとも。
 
(そう教えてくれたのはお前だ、小十郎)

政宗がその教えを守っていたのは、常に小十郎が後ろに居てくれたからだ。挫けそうになっても決して慰めはせず、厳しくも優しく見守ってくれていたから。小十郎がずっと居てくれると信じていたからだ。
解っていたのだ。小十郎が居なくとも、立ち上がらなければならないこと。しかし空になったように空しい心が、政宗を思うように動かしてくれない。
幸村を見る。変わらずぼろぼろと涙を流しながら泣く若き虎。人の上に立つべき人間が戦忍を失くしただけで弱味を見せるものではない。膝を付いてはいけないのだ。
素直に涙を流せるその姿が少し羨ましくも思ったが、政宗は敢えて厳しい言葉で奮い立たせようとする。
 
「いつまでも泣いてんな。アンタがそんなんでどうする」
「………あやつは、某の希望だった」
 
いきなりぽつりと呟いた幸村の言葉に耳を傾ける。手で顔を覆いながら、掠れた声で言葉を紡いでいく。
 
「お館様が病に倒れ、某は武田を任された。まだまだ未熟な某を叱責してくれるのはお館様の他に佐助しか居らぬ。某が迷っても、佐助が叱ってくれる。戦況が不利でも、佐助が居るから心配ない…。某にとって佐助は、大きな拠り所だったのだ。お館様が戦場から消え、行き場を失った心は佐助を求めた。某の前から消えぬと、信じていたからだ…」
 
だが、と幸村は息を吐いた。
 
「某はただ、依存していただけなのだ。お館様にも佐助にも。拠り所がないと生きていけぬ大将など、笑い話にもなるまい。唯一の副将を失って、唯一の居場所を失って…某は、どう生きていけば良い」
 
そしてまた涙を溢す。
政宗は片手に握り締めた三日月の破片を見つめた。
欠けても、立ち上がる。
喪っても、前を見据える。
失くしたものは戻ってこない。

(俺にとって、アイツは満月だった)

泣くことは許されないのだ。皆を引っ張る者として小十郎に誓ったのだ。どんな時でも孤高に誇り高くあれ、辛くても険しくても、越えていく強さを持つことを。
だけど今、その誓いが苦しい。泣いてはいけないことが苦しかった。
 
「三日月は満月になって初めて輝くんだ」
 
政宗の呟きに幸村は答えない。聞いて欲しいわけではない。
 
「満月が欠けたらただの三日月になっちまうな」
 
右目を失って。
七爪目を失って。
満月の光を失って。
それでもまだ、小十郎は泣いてはいけないと諭すんだろう。
政宗は静かに笑った。それから欠けた三日月を愛しそう見たあと、やはり静かに左の目から涙を落とした。
 
竜の涙と若虎の咽び泣く姿を見ていたのは、残酷なほど真っ青な空だけ。


20120202


――――――――

依存は佐助もまた然り
宴で、幸村の佐助への評価が異常に高かったり、政宗様の口から妙に「小十郎」って聞くなーと思ったりしたので
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