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2026年06月13日
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つまり彼は大人という訳だ
2011年04月04日
腹が減っていた。
理由はそれだけだ。そうじゃなきゃ俺が敵にそうそうやられる訳が無い。なんて自分が思う筈がない。別に俺は自分の事を「とても強い人間」だなんて当たり前のように思っちゃいないし。
まあ何が言いたいかというと、俺は腹が減ってしまって少し隙を見せたところを蟹の魔物にコテンパンにされた訳だ。だってしょうがないだろう、相手は蟹の魔物だったんだ、焼いたら美味いだろうなぁなんて考えない奴はいない筈だ。
そんな訳で俺は派手に後ろに倒れた。頭を地面に思い切りぶつけたが、頭よりも蟹の鋏に殴られた腕が痛かった。曲がったかと思った。曲がってたら、俺は暫く外に出なくても良かったのではないか。わぁい。
と思ったが、痛いのはもちろん嫌だし部屋に籠っているのもあまり柄ではない(部屋に籠って昼寝をするのは大好きだが)。
あれ、そう言えば俺が倒れる瞬間、誰かが俺の名前を呼んでいた気がするな。
とても泣きそうな声で、
「………は?」
ゆらゆらと揺れる感覚が心地よく、目を覚まして早々再び夢の世界へ旅立つところだった。
しかしよくよく考えてみると、この揺れている感覚が一体何なのかがよくわからない。俺は空を飛んでいる?というメルヘンな思考は、そんな馬鹿なとすぐに消し去る。
しかし足元にゆっくり視線を移動させると、地面に自分の足が付いていない。ああこれは本格的に自分やばいな、と思った。一番有り得ない答えだが、もしかして自分は死んで幽霊にでもなってこの辺りを彷徨っているのだろうか。いまいち覚醒していない頭でそんなアホらしい事を考える。
「やっと起きましたか、リッド王子様ー」
ああ今度は幻聴か。なんて思ったのも束の間、その声で頭が徐々に冴えていく。
今の声は何処から聞こえた?あ、よく見れば俺の目の前にあるのは人間の髪の毛。真っ黒だ。今更ながらに体が人間の温かさを感じている。これは背中?何故に背中?
次いで聞こえるのは「まーだ寝惚けてんのか?」という軽い声。聞き慣れた声。
意識が完全に覚めるまで、時間は要らなかった。
「……なんだこれ。何でこんな事になってんだ」
「おいおい、人の背中使っといてそりゃ無いぜ」
表情は見えないが、声の調子から苦笑していると判断する。
漸く今の状況を一部把握する。今の自分は、この声の主におぶわれているということ。そしてこの声の主は、ギルド『アドリビトム』の仲間であるユーリ・ローウェルだということ。
取り敢えずはそれだけを整理して、さて今度はどうしてこんな事になっているのかを理解する番だ。
「覚えてないのか。無理もねぇか。お前派手に吹っ飛ばされてたから」
「……蟹の、ヤツに?」
「そこは覚えてるのかよ。やっぱお前って食い意地張ってんだな」
くすくすと笑うユーリの声が耳に良く通る。食い意地を張っていると言われると少しむっとしてしまうが、疲れているのかそんな気力すらも残っていなかった。
左腕がじんじんと痛んでいる事にも漸く今気付いた。右腕じゃ無くて良かった、と心配するくらいの余裕はある。しかし痛い。何故こんなにも痛いのか。そう言えばあの大きな鋏で殴られたからか。そりゃあ痛いわ。
「それよりよ、お前さんの彼女、泣いてたぜ。あとでちゃんと顔見せに行ってやれよ」
「あいつは俺の彼女じゃねぇっつーか何であいつが泣いてるんだよ」
「名前言ってねーのに分かるのかよ。泣いてんのはあれだろ。お前に怪我させた事、責任感じてんのもあるんじゃねえか?」
怪我、させた?ファラが?俺に?何時、何処でどうやって?
この怪我は自分が生んだ油断の所為だ。あいつは何もしていないし、責任を感じる必要も全くない。すると、ユーリが「…あー」と抜けた声を上げる。
そこは覚えてねぇんだな、という呟きが聞こえた。そこってどこのことだ。
「お前、ファラを庇ってただろーが。目ぇ覚まさないお前見て『私の所為だ』って塞ぎこんじまった」
そんな記憶俺にはない。
…と言いたいところだが、そう言われれば記憶が少し鮮明なものになる。
腹が減っていたのは本当だ。蟹を見て美味そうと思ったのも本当。…どうでもいいことしか覚えていない。
ユーリの話によると、敵がファラに向かっていて、その時あいつは違う蟹と応戦してて気付かなかった。ユーリとディセンダーが気付いた時にはファラが囲まれてて、そこに俺が無理矢理割り込んでファラを突きとばして代わりにボコボコにされた、と。
それなのに俺の体に傷が殆ど残っていないのは、あいつが必死に手当をしてくれたから、らしい。
そうか、あの時己の名前を呼んでいたのは彼女だったのか。泣かせるつもりはなかったのに、どうやら見当違いなことを思って悲しんでいるなんて。
「…ファラ、は」
「あいつと一緒に先に船に戻ったよ」
少しだけほっとしたような、寂しいような、複雑な感情だ。しかし、彼女が無事ならそれで良いや、とも思う。
「つか、お前歩けるか?そろそろ俺も疲れたんだがー?」
「………いや、だるくて死にそう。腹も減ったし。このままおぶっててくれよ…眠い」
「おいおい……俺はリッドお坊ちゃんの揺り籠じゃあないぜ」
自分をここまでおぶってくれたのは感謝している。しかし言い方にカチンときてしまった。
態とではないと分かって入るのだけど。
「子供扱いすんな!もう良い、俺は自分で歩けるから降ろせよ!」
「はいはいわかりましたっと」
地面に足を付けると視界が揺れた。目の前が少し霞んで、ゆらゆらとおかしい。
頭がくらくらして、膝に力が入らなかった。あれ、と思った時、既に肩をユーリに掴まれていた。
「貧血だよ」とユーリは素っ気なく言う。そのユーリの横顔も、今は歪んで見えた。彼が自分の背中を指差している。
「………ごめん」
「はいよ」
よいせ、と再びおぶわれる。あまり身長は変わらない筈なのに、ユーリの背中は己よりも数倍大きく見えた。
それが悔しかったし、かっこよくも見えた。
ゆらゆら揺れる感覚がやはり心地よくて、今度こそ重い瞼を開け続ける事が出来なかった。
(帰ったらファラに会いに行って、心配掛けた事謝って、ユーリにしっかり礼を言おう)
――――――――
ユーリとリッドのコンビが好き
二人には是非兄弟みたいな会話を繰り広げて欲しいなぁという妄想
何となくだけど、ユーリとリッドのカプ表記ってどんなだろうね。ユリリ?ユリリド?もうまんまユーリ(ユー×リ)で良いんじゃないかと思った(どうでもいい
理由はそれだけだ。そうじゃなきゃ俺が敵にそうそうやられる訳が無い。なんて自分が思う筈がない。別に俺は自分の事を「とても強い人間」だなんて当たり前のように思っちゃいないし。
まあ何が言いたいかというと、俺は腹が減ってしまって少し隙を見せたところを蟹の魔物にコテンパンにされた訳だ。だってしょうがないだろう、相手は蟹の魔物だったんだ、焼いたら美味いだろうなぁなんて考えない奴はいない筈だ。
そんな訳で俺は派手に後ろに倒れた。頭を地面に思い切りぶつけたが、頭よりも蟹の鋏に殴られた腕が痛かった。曲がったかと思った。曲がってたら、俺は暫く外に出なくても良かったのではないか。わぁい。
と思ったが、痛いのはもちろん嫌だし部屋に籠っているのもあまり柄ではない(部屋に籠って昼寝をするのは大好きだが)。
あれ、そう言えば俺が倒れる瞬間、誰かが俺の名前を呼んでいた気がするな。
とても泣きそうな声で、
「………は?」
ゆらゆらと揺れる感覚が心地よく、目を覚まして早々再び夢の世界へ旅立つところだった。
しかしよくよく考えてみると、この揺れている感覚が一体何なのかがよくわからない。俺は空を飛んでいる?というメルヘンな思考は、そんな馬鹿なとすぐに消し去る。
しかし足元にゆっくり視線を移動させると、地面に自分の足が付いていない。ああこれは本格的に自分やばいな、と思った。一番有り得ない答えだが、もしかして自分は死んで幽霊にでもなってこの辺りを彷徨っているのだろうか。いまいち覚醒していない頭でそんなアホらしい事を考える。
「やっと起きましたか、リッド王子様ー」
ああ今度は幻聴か。なんて思ったのも束の間、その声で頭が徐々に冴えていく。
今の声は何処から聞こえた?あ、よく見れば俺の目の前にあるのは人間の髪の毛。真っ黒だ。今更ながらに体が人間の温かさを感じている。これは背中?何故に背中?
次いで聞こえるのは「まーだ寝惚けてんのか?」という軽い声。聞き慣れた声。
意識が完全に覚めるまで、時間は要らなかった。
「……なんだこれ。何でこんな事になってんだ」
「おいおい、人の背中使っといてそりゃ無いぜ」
表情は見えないが、声の調子から苦笑していると判断する。
漸く今の状況を一部把握する。今の自分は、この声の主におぶわれているということ。そしてこの声の主は、ギルド『アドリビトム』の仲間であるユーリ・ローウェルだということ。
取り敢えずはそれだけを整理して、さて今度はどうしてこんな事になっているのかを理解する番だ。
「覚えてないのか。無理もねぇか。お前派手に吹っ飛ばされてたから」
「……蟹の、ヤツに?」
「そこは覚えてるのかよ。やっぱお前って食い意地張ってんだな」
くすくすと笑うユーリの声が耳に良く通る。食い意地を張っていると言われると少しむっとしてしまうが、疲れているのかそんな気力すらも残っていなかった。
左腕がじんじんと痛んでいる事にも漸く今気付いた。右腕じゃ無くて良かった、と心配するくらいの余裕はある。しかし痛い。何故こんなにも痛いのか。そう言えばあの大きな鋏で殴られたからか。そりゃあ痛いわ。
「それよりよ、お前さんの彼女、泣いてたぜ。あとでちゃんと顔見せに行ってやれよ」
「あいつは俺の彼女じゃねぇっつーか何であいつが泣いてるんだよ」
「名前言ってねーのに分かるのかよ。泣いてんのはあれだろ。お前に怪我させた事、責任感じてんのもあるんじゃねえか?」
怪我、させた?ファラが?俺に?何時、何処でどうやって?
この怪我は自分が生んだ油断の所為だ。あいつは何もしていないし、責任を感じる必要も全くない。すると、ユーリが「…あー」と抜けた声を上げる。
そこは覚えてねぇんだな、という呟きが聞こえた。そこってどこのことだ。
「お前、ファラを庇ってただろーが。目ぇ覚まさないお前見て『私の所為だ』って塞ぎこんじまった」
そんな記憶俺にはない。
…と言いたいところだが、そう言われれば記憶が少し鮮明なものになる。
腹が減っていたのは本当だ。蟹を見て美味そうと思ったのも本当。…どうでもいいことしか覚えていない。
ユーリの話によると、敵がファラに向かっていて、その時あいつは違う蟹と応戦してて気付かなかった。ユーリとディセンダーが気付いた時にはファラが囲まれてて、そこに俺が無理矢理割り込んでファラを突きとばして代わりにボコボコにされた、と。
それなのに俺の体に傷が殆ど残っていないのは、あいつが必死に手当をしてくれたから、らしい。
そうか、あの時己の名前を呼んでいたのは彼女だったのか。泣かせるつもりはなかったのに、どうやら見当違いなことを思って悲しんでいるなんて。
「…ファラ、は」
「あいつと一緒に先に船に戻ったよ」
少しだけほっとしたような、寂しいような、複雑な感情だ。しかし、彼女が無事ならそれで良いや、とも思う。
「つか、お前歩けるか?そろそろ俺も疲れたんだがー?」
「………いや、だるくて死にそう。腹も減ったし。このままおぶっててくれよ…眠い」
「おいおい……俺はリッドお坊ちゃんの揺り籠じゃあないぜ」
自分をここまでおぶってくれたのは感謝している。しかし言い方にカチンときてしまった。
態とではないと分かって入るのだけど。
「子供扱いすんな!もう良い、俺は自分で歩けるから降ろせよ!」
「はいはいわかりましたっと」
地面に足を付けると視界が揺れた。目の前が少し霞んで、ゆらゆらとおかしい。
頭がくらくらして、膝に力が入らなかった。あれ、と思った時、既に肩をユーリに掴まれていた。
「貧血だよ」とユーリは素っ気なく言う。そのユーリの横顔も、今は歪んで見えた。彼が自分の背中を指差している。
「………ごめん」
「はいよ」
よいせ、と再びおぶわれる。あまり身長は変わらない筈なのに、ユーリの背中は己よりも数倍大きく見えた。
それが悔しかったし、かっこよくも見えた。
ゆらゆら揺れる感覚がやはり心地よくて、今度こそ重い瞼を開け続ける事が出来なかった。
(帰ったらファラに会いに行って、心配掛けた事謝って、ユーリにしっかり礼を言おう)
――――――――
ユーリとリッドのコンビが好き
二人には是非兄弟みたいな会話を繰り広げて欲しいなぁという妄想
何となくだけど、ユーリとリッドのカプ表記ってどんなだろうね。ユリリ?ユリリド?もうまんまユーリ(ユー×リ)で良いんじゃないかと思った(どうでもいい
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