忍者ブログ

[PR]

2026年06月13日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ぺよんつめ

2012年03月29日
携帯でかちかちしてたぺよんの小話
詰めといっても二本しかない

二つとも主完です
というか主+完みたいな主→完みたいな
とりあえずいろいろと中途半端
それでもよければ









ピリリリリ。
無機質に鳴る音は自分しかいない部屋に響き渡る。布団に投げ出していたそれに顔を上げたら、珍しく泣き腫らした目に空気が触れてひりひりと乾いた。
ああ、先輩かなぁとぼんやり思いながら、何回目かのコール音に鼓膜を震わせながら通話ボタンを一回、弱い力で押した。

『完二?』

思った通り先輩だ。こんな状況の俺に連絡をくれる物好きはあの人しかいないからだ。
しかし俺は通話ボタンを押したにも関わらず、携帯を耳に近付けることはなかった。
今の俺には先輩と話す資格がなかった。何を話せば良いというのだ。先輩との「約束」を守れなかった俺は、話すどころか合わせる顔さえ見つからないというのに。

『ね、完二。そこにいるんでしょ。俺とは話したくない?』
『じゃあ勝手に話進めちゃうけど、いいね?』
『お前、何をしたの?』

びくりと肩が揺れた。隠したつもりだったのにやっぱり噂が広まるのは恐ろしいくらいに早い。一番知られたくない人に、こんなに早く伝わるなんて。嘘が下手だという自覚があったから、先輩に嘘はつけなかった。だけど言うこともできなくて、俺は膝を抱えて無言を貫くだけ。

『停学受けて謹慎だって。喧嘩をしたんだろうなぁっては思ったけど、本当なんだね?』
『ねえ完二。怖がらないでよ。俺は別にお前がしたことを咎めるとか、そんなことはしないよ。ただお前に何があったのか知りたいだけなんだよ』

教えてよ、なんて懇願するような声音に、胸がぎゅうと締め付けられる。
先輩は優しいヒトで、いつでも俺の心配をしてくれる。いつでも俺の味方をしてくれる。だからこそあの人の信頼を裏切って感情のままに動いて人を傷付けた自分が酷く惨めで最低で。
事情を説明したところで言い訳にしかならない。いくら弁明したところで俺の話など誰も聞いてなんかくれない。信じちゃくれない。そんな世間体にはもう慣れたのだが、先輩に呆れられて見棄てられることが怖かった。それだけが怖かった。こんな約束も守れないのかと、短気で単純な俺を残念に思うんだろう。
涙なんてもうでないと思ってたのに、少しじわりと来ると溢れてきた。

「…先輩の言い付けを守んないで暴れて喧嘩しました。それだけです」
『嘘。お前は理由もなく人を傷付けるような子じゃないよ。教員達に信じて貰えなかったんだね?俺はお前を信じるよ。だから話してごらん』
「…」

声は普段以上にとても優しい。その声だけで俺の緩い涙腺はぐちゃぐちゃで、目を瞑ったら零れてきそうだから必死に耐えた。

『…完二、俺いつも言ったじゃない。困ったときは俺がいるよって。頼っていいよ、相談してよって』
『そんなに俺は信用されてないのかなあ』

寂しそうに呟く先輩にハッとして、すぐに否定の言葉を言おうとした。信頼してないわけがないのに。すぐに言葉を見つけられない自分の悪い頭を本気で恨んだ。
違うんだよ先輩、俺は

『…完二が俺にわけを話してくれないから』
『俺も謹慎処分にされちゃったよ』


え、と思わず声を漏らすとその人はどうということもない風に笑っていた。耳を疑ったのだが、先輩は冗談にしてもそんなおかしなことは言わない。
先輩が謹慎。頭の中で繰り返してから、俺の心臓がばくばくに動いてるのがわかった。

「何で…先輩が謹慎だなんて…」
『完二のことが聞きたくて職員室で…ついついやっちゃった』
「俺のせい、ですか」
『ああ、お前が俺に相談してくれてたら、こんなことにはなんなかったかもね』

俺のせいで先輩に迷惑がかかった。やはり先輩は呆れているのだ。
でも俺のために怒ってくれたらしい。嬉しいな、そう思わずにはいられなかった。

『ね、完二』
『罰としてさ、謹慎中はずっと俺に電話しててよ』
『それでさ、お前が言えなかったこととか、いろんなことをいっぱい話してよ』
『俺はお前の話が可愛くて好きだよ』

可愛いは余計だ、そう思いながら思わず笑ってしまうと、ああようやく笑ったね、なんて安心した声が聞こえた。
無性に先輩に会いたくなって、謹慎解けたらすぐに会いに行きますからって言葉を漏らしたら、俺も早くお前の顔が見たいよ、いっそ顔電話しようよとかなんとか言うのをやっぱり笑いながら俺は聞いていた。

それから俺は無性に泣きたくなって先輩に謝った。そしたら先輩にお前は悪くないよと電話越しにキスをされた。
びっくりして思わず電話を切ってしまって、慌ててもう一回電話を掛けようとしたのに、アドレス帳の先輩の名前を見たら今度こそ我慢できなくて、俺はカッコ悪く泣いてしまったのだ。


【電話】20120327


――――

大好きな小説サイト様に触発されてつい書いちゃった









俺ね、この歌が好きなんだ。

耳に嵌めたイヤホンを指で弄りながら、多分聞いてないだろうけど呟いた。すると意外にも聞いていたみたいで、俺の音楽プレイヤーをちらりと見た。

「ジャニーズが好きなんスか」
「…ううん、ジャニーズが好きなわけではないかなあ」

滅多に音楽なんて聞かないから正直流行りとか全くわからない。今音楽番組を独占している人気ジャニーズなんて知らない。だって特別彼らが好きなわけではないから。
音楽もそうだけど、俺は人の顔を覚えるのも頗る苦手で、ジャニーズなんてみんな同じような顔に見えるのだ。
でもただ、俺はこのグループの名前だけは知っていたし、メンバーの名前と顔も一致するのだった。ただ一曲、とっても気に入った歌があっただけ。何年前に作られたかはちょっと覚えてないけど、確かにその歌は世間でも一目置かれて、人々の耳に未だに強く残ってる。
俺も人並みに音楽がわかるってことなのだろうか。

「曲調も好きなんだけど、歌詞がとても好きでね」
「はあ」
「特に最後のほうの歌詞に随分惹かれちゃって」

完二は頷きながらも、呆けた顔でこちらを見ていた。俺は了承も得ないままに完二の耳に片方のイヤホンを嵌めた。特に抵抗するでもない彼はプレイヤーを弄る俺の手を見つめている。
説明するより聞いた方がお前にとっては分かりやすいね、そう言って再生ボタンを押した。
聞きなれた音楽。珍しく覚えてしまった歌詞。思わず口ずさんでしまいそうだったけど、俺はあんまり歌が上手くないからただ目を瞑った。
完二もただ宙を見つめながら聞き入っていた。既に終わりに近付いてるその曲は、本当に何回聴いても感想は同じだった。

「ナンバーワンじゃなくてオンリーワンならなれるなんて、どっちにしろ贅沢だよね。だって結局はどっちもいちばんなんだもの」

最後のメロディが静かに消えていく。心地よかった彼らの歌声が消える。

「俺ってさあ、いちばんにはなれない人間なんだ」
「父さんと母さんのいちばんは仕事」
「陽介は心のどっかでずっと小西先輩がいちばん」
「里中と天城は言わずもがなだし」
「だからさあ、この歌に惹かれるのはどっか羨ましいみたいな感じなんだ」

俺も特別なオンリーワンになれることがあるのか、ちょっと期待させてくれる歌。俺でもいちばんになれるかもしれないと、少し嬉しくなる歌。
すると完二はちょっと困ったみたいな顔をして、遠慮がちに口を開いた。

「俺、先輩はいちばんッスよ」

そんな可愛いことを言ってくれるの。完二は俺を甘やかすのがうまい。完二は俺に優しくするのがとても上手。
でも嘘はいけないよ。

「お前のひとつめのいちばんはお母様」
「ふたつめのいちばんは直斗じゃないの」

完二はまんまるな目を更に丸く見開いた。驚いたときの顔、可愛くて好きだなあ。
笑っている俺とは反対に、完二の顔は驚きから複雑な表情に変わった。それから直斗は関係ねぇッスよなんて溢すから、俺は微笑ましいを通り越してなんだか苛ついた。

「俺の可愛い完二は嘘つきだ」
「嘘、つき…スか」
「そんなところも含めて完二がいちばんだよ」

お前は俺に、世界中でたったひとつだけの「好き」という感情を持つことができるかい。お前は俺以外にそれを向けていることをよもや気付いてなかったなんて言わないだろう。ほぅら見ろ、お前だって俺をいちばんにしてくれない。でも俺はそんなところも好き。俺の感情の矢印はお前に向いて道を外れることもしない。
完二は悲しそうな顔をした。彼の足りない頭では俺の話をまるで理解できないと思ってたのに、その子は俺をとても悲しい目で見ていた。

「好きってのはひとつじゃなきゃ駄目なんスか」
「…世界にひとつだけって名目が欲しいんだ」

あの歌みたいにね。
リピートボタンを押して、頭に流れるのはさっきとおんなじ歌。きっと俺の羨望が続くまで、俺は可笑しいくらいこの曲を聞き続けてしまうんだろう。
完二は、先輩は俺のいちばんですよ、と懲りず呟いた。優しさはときに何よりも残酷なのだとこの子はよくわかっている筈なのに。
俺はもう返事はせずに、代わりにその歌を口ずさんだ。


【世界にひとつだけの】20120329


――――

S/M/A/Pのあの超有名な歌です。わたしも好きです
PR
Comment
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字