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2026年06月13日
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桜の木の下(イチウリ)

2012年05月07日

「花見、行こうぜ」


そういわれて連れて行かれたのが、なんてことはない、彼が学校に行くときの通り道だった。
歩道を少し外れたところに川があって、そのすぐ近くに小さい桜の木が二、三本だけ立っていた。
既に季節は五月だからか、桜ははらはらと散っていた。枝についてるものはまあまだまだ多いのだけど、この調子なら明後日くらいには全部落ちて普通の木になってしまうんだろう。

「木の数は少ねーけど、たくさん咲いてたら綺麗なんだ。昔よく妹と来てた」

太陽の光に目を細めながら、その男は少しだけ微笑んでいた。
彼曰く、秘密の場所なのだそうだ。
なにせ道の外れだし、小さくて本数もないからあまり人の目に留まらないらしい。

「いいんじゃないか。人も少なくて静かだし」
「お前なら、大勢が集まる定番の桜の木の下よりもこっちの方が喜ぶと思ったんだ」

確かに大勢居るよりだったら全然居ない方が好きだ。僕は少し肩を竦める。
花見、という言葉を久しぶりに聞いた気がした。小さいときは師匠と二人でよく行っていたけど、亡くなってからはぱったり行かなくなった。そういえば竜弦とは一回も行ったことがないかもしれない。行こうとも思わないが。
何年ぶりかの花見は黒崎と一緒。何だか不思議な気分だ。
この男と行動を共にするだなんて考えたこともなかったし、正直誘われたときも付いていったのが不思議なほどだ。何も考えないままに彼についていくなんて、昔の僕ではありえなかっただろう。

「というか、何で急に花見なんだ」
「……思い出作り?」
「一昨日あたり、浅野君達に誘われたときは行かなかったじゃないか」
「そりゃだってオメーがいねーから」

変わり者だ、と常に思う。
僕と居るよりも彼らと居た方が思い出作りになるのに。僕と桜の花を見たところで何かが起きるわけでもないし、正直退屈だろう。僕は浅野君みたいに楽しい話はできないし井上さんみたいに場を和ませることもできない。
僕自身は普通に嬉しいと感じた。彼に誘ってもらえたこととか、久々に桜が見れたこととか。
風に吹かれて散っていく桜のさまはとても綺麗で、ついつい目を奪われたままで時間が過ぎていく。
黒崎は別に喋るでもなく帰るでもなく、僕と同じようにその場に立ったまま桜を眺めていた。風でゆらゆらと揺れる彼の短いオレンジ色の髪の毛が太陽に照らされて眩しく光っている。
そこで気付いたのは、彼の目線が散る桜じゃなくて明らかに僕に向いてるということ。

「何だよ」
「……気に入ったか?」
「ああ…そうだな。僕は好きだよ」

黒崎は小さく笑った。

「お前と二人だけでこれそうなところだ。ちゃんと覚えとけよ」
「みんなには教えないのか」
「ああ、ここは俺の秘密の場所だからな」

それを僕にだけ教えてくれるというのに、どんな意図があるのだろう。
子供みたいに笑ってる黒崎を見たら、そんな問いはどうでも良くなった。
はらりはらりと確実に一枚ずつ散っていく桜。それが足元に溜まっていく。
もうすぐ春が終わるのだ。

なあ黒崎。気付いているかな。僕たちはもう何回もこの木の下には来れないよ。
春が過ぎて、また春が来て、また過ぎてまた来たら、僕たちはこの町に居ないかもしれないじゃないか。


「もう何回これっかわかんねーけど」

そう切り出した黒崎に、思考が読み取られたのかと一瞬びくりとした。
彼の視線は真っ直ぐだけど、それが桜を映しているのか木を映しているのか、はたまた空に向かっているのかは分からなかった。
それからその視線はまた僕に移る。眉間に皺が寄って厳しい印象を与えるけど、常に優しい光を灯した彼の目がゆっくりと細まった。

「来年も一緒に来ような」

こっちに伸びてきた指は僕の髪の毛を掠って、桜の花弁を摘んでいた。締りが無さそうに緩く笑う黒崎につられて、僕も何となく笑った。


――――――――

なんじゃこりゃあああああー久々に書いたから二人のキャラを掴み損ねてる
しかし砂吐き砂糖大盛りなイチウリも大好きなので高校卒業後もイチャイチャしてるとよいよ!
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