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2026年06月13日
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けいたいろぐ3

2011年10月25日
携帯でかちかちしたお話

今回は一個だけ。イチ→ウリと現世組のお話








珍しく学校の奴らと出掛けることになった。
今日はこれでもかというほどに晴れた天気で、雲ひとつない快晴。寒くなってきた最近では珍しかった。気温も高くて、まさに絶好のお出掛け日和と言ったところか。
俺はその日やることもなく、取り敢えず机に数学の教科書を開いた。でもそれをやるでもなくただただ計算式を眺めていたその時、下の階から遊子が俺を呼ぶ声が聞こえた。
 
「お兄ちゃーん!ケイゴ君がきてるよー!」
 
そして俺は予定外だった外に引きずり出された。
啓吾は俺以外にも誘いを出していたようで、外に出ると高校の面子が顔を揃えていた。何だよ、みんな暇なんだな。
啓吾はなんでもいいから遊びたかったらしい。夏休み、みんなから放置されていたこともあるのだろう。俺も少しだけ啓吾が可哀想だと思ったから、今日ぐらいは付き合ってやってもいいと思ったのだ。
チャド、水色、たつきに井上…
俺の目の動きは井上の隣で止まった。正確に言うなら隣というより後ろ。みんなから若干離れたところで片手に本を持っている。
 
「…石田?」
 
俺の呟きは、啓吾の「何処行くー?!」という叫び声に見事に掻き消された。
 
 
 
 
 
「何でファミレスなんだよー!!もっと公園とか色々あんじゃん!!」
 
愚痴を溢すのは勿論啓吾である。何処でもいいって言ったのはお前じゃねーか。
 
「みんなに任せるって言ったのは啓吾でしょ」
 
水色が俺の代弁をしてくれる。目は携帯の画面に向いていた。
あのあと、何処に行くかと騒ぐ啓吾に、ファミレスに行こうと提案したのは水色だった。正直行きたい場所があるわけでもない俺はその意見に賛成した。そうしたら他の奴らも同意見。
行き先はあっさり決まった。
テーブルにいち早く着いた俺は、取り敢えず奥の窓側に座る。するとその隣に勢い良く啓吾が座ってきた。あんまり詰めてくんな!
「井上さん隣来て!」と手招きをする啓吾に笑顔で井上は応じる。嫌なら嫌って言って良いんだぞ井上。
その隣にはたつき。
俺の向かい側には石田が座った。石田は相変わらず片手に持った本から目を離さず、ここに居ることに乗り気じゃないのは明らかだった。
そいつの隣にはチャド、水色と続く。どうせなら俺は石田の隣が良かったななんて思った。
 
「あたし水持ってくるわ」
 
そう言ってたつきが立ち上がると同時に、「じゃあ僕も」と水色が立ち上がる。啓吾は一人で勝手にドリンクバーを頼んでいた。迷惑にも俺の分まで頼みやがった。別に俺は水で良かったのに。啓吾の奢りではないので、勿論自腹という点も腹が立つ。
飲み物を取ってくるために席を立った。ふと石田に目をやったら、やっぱり本に夢中。
 
「おい、石田」
 
声を掛けたら、普通に顔を上げてくれた。思ったより夢中じゃなかったみたいだ。
 
「なに」
「何飲む?」
「…水で良いよ」
「俺が奢ってやるから」
「……じゃあ、コーヒー」
「おう」

こいつが奢りという言葉に弱いことは誰よりも知っている。店員を呼んでドリンクバーを一つ追加。
啓吾も奢って欲しそうな顔をしていたが無視した。俺はたつきと水色とドリンクバーに向かった。
石田はコーヒーで啓吾はコーラ、俺は…まあ、飲みたいものがあるわけでもないから、取り敢えずアイスココア。
水を入れてる二人の背中に、俺はずっと不思議に思っていたことを聞く。
 
「なあ、何で石田が居るんだ?啓吾が誘ったのか?」
「んーん、アンタん家行くときに偶々会ったのよ」
「その時に誘ったんだ」
 
なるほど。よくあいつがオッケーしたものだ。
 
「井上さんに押し切られたからね」
 
ああ…と俺は納得した。井上に押されると断り難いもんな。特に石田はそういうのに弱い。
(俺は少しだけ井上に礼を言いたい)
それと、と水色は俺にしか聞こえないくらいの小声で呟いた。
 
「石田君が居れば、一護は必ず来ると思ったしね」
 
意味ありげな雰囲気を纏いながらにこりと笑った水色に、俺は無言を決め込んだ。水色は俺にどういうリアクションを求めているんだろうか。
(まあ確かに石田がいたら俺は外に出てしまうだろうから否定はしなかった)
 
席に戻ったら啓吾の声が耳に飛び込んできた。所謂声がでかいのだ。きっと井上が隣に居てテンションが最高潮なのだろう。
奴の目の前に乱暴にコーラを置いた。少し溢れてしまったが、啓吾は井上との会話中で気付かないだろう。
啓吾を押し退けて自分の席に座る。それから石田の前に湯気がたったコーヒーを置く。音に反応してか、石田は顔を上げた。少し眠そうだな、と何となく思った。
 
「ありがとう」
 
素直に礼を言われたのは初めてかもしれない。
 
「…お前も、ちゃんと礼が言えんだな」
「失礼な。僕だって与えられた親切には礼ぐらい言うさ」
 
石田の目が今日初めて俺の目と合った。
 
「つーかお前、途中で誘われたんだって?来たくなかったなら断れば良かっただろ」
「うるさいな。そんなの、断れれば断ってたよ」
 
石田が読んでいた本を閉じた。やっとで閉じた。
多分こいつは図書館にでも行こうと思っていたんだろう、でなければ本を持って出掛けるわけがない。結局はコイツも俺達と同じ暇人なのだ。

隣で啓吾がこれからの予定はなんだとかあそこに行きたいだとか言っているが、俺は聞いていなかった。
(何故かと聞かれたら、俺は石田と会話をしているからである)
でも、最初は別に何処に行こうかなんてどうでも良かったけど、今はずっとこのファミレスに居たいと思っていた。
(何故かと聞かれたら、やはり石田と他愛の無い会話ができるからである)
啓吾のテンションは、いつまで経っても高いまま。どうやってその高さを維持できるのか、そしてそこまで高めることが出来るのか不思議だった。
しかし今まさに、俺のテンションも密かに高くなっていた。まだまだ、どんどん上がり続けるに違いない。
(何故かと聞かれたら、石田が居るからである)
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