忍者ブログ

[PR]

2026年06月13日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

おめっとさん

2011年03月01日
校門を出ると、見慣れた後姿が目に映る。
誰かを待っているのか校門の端の塀に寄り掛かっているその人物に、御伽は声を掛けようか迷っていたら、あちらの方から声が掛かった。
目が合ってしまってはもう逃げようも無い。ぎこちなく手を上げた。

「あ、やあ本田くん」
「…お前、何で急にここで立ち止まってんだよ」

玄関から出てくる姿を既に見られていたらしく、しかし君の姿が見えたから足を止めてしまった、というのも何か不自然なものを感じさせる。
別に、彼に用などないのだ。本当に何となく足を止めてしまっただけで、意味なんてない。
だから、本田が何とはなしに発した質問は御伽にとっては答え難い困った質問だった。
取り敢えずは止まったままだった足を進ませ、彼の近くで再び止まる。
……何故彼の目の前に来てしまったんだろう。用なんてないのに。首にしっかりと巻かれているマフラーに指をかけて、口元をすっぽりと覆い隠した。この行動にさえ意味はない。
ずっと黙ったままに答えない御伽をじっと見ていた本田は、小さく溜息をついた。

「何で黙んだよ。聞いただけじゃねぇか」
「……いや、うん。返答に困ってるから答えないんだよ」
「意味わかんね」

小さく呟いた後に、塀に預けていた腰を持ち上げて立ち上がる。腕をいっぱいに伸ばして伸びをしながら歩き出そうとする長身の友人の姿を見て、御伽は慌てて彼を引き止めた。

「ちょっと待ってよ!待ってる人が居たんじゃないのかい?」
「は?別にいねぇよ」
「だってここで待ってたじゃないか」
「いやいや、ただボーっとしてただけだし。それよかコンビニに付いて来いよ」

本田の明らかに適当な返答に更に口を挟もうとしたとき、それより早く彼の一言が己の耳に届く。言おうとした言葉は頭の中で消え、既に後姿を見せている友人に対しての困惑と唖然が変わりに生まれた。
「早く来いよー」という声が夕方の空に響く。未だに状況をしっかりと把握できていないが、とにかく彼に付いていくことにした。
冬も終わりに近づいて、道に雪は残りつつも確実に解けている。といっても空が薄暗くなると特有の寒さがまだまだ残っていた。息を吐けば白く色づき、再びマフラーを口元まで覆った。
二人の間に会話はない。地面を蹴るじゃり、じゃりという音と、時たま吐かれる息の音、空を飛ぶ鴉の鳴き声だけで、雑音すら一切ない。
…こんなに自分たちの仲は険悪だっただろうか。今までの生活からは考えられなかった隣との沈黙。
しかし、どうせコンビニはここから歩いて約五分ほど。直ぐに着くのだと思うと、この沈黙はまったく苦痛ではなかった。



「……お前、誕生日いつだっけ」
「……っえ!何その急な話の振り方」
「うるせぇ!雑談だ雑談。何か……あれだろ。よくやるだろ、こういう質問。血液型とか」
「質問内容が『初めまして』レベルなんだけど…」
「良いんだよ!困ったときの誕生日だろうが!」

大体お前の誕生日だけ知らねぇんだよ!それはそうだ。言ったことなんてなかったし、大体遊戯達とつるむようになってからまだそれ程月日が経っている訳では無いのだ。その中で、特に交流を持っていたのはこの男だった。
前髪を指で弄りながら、うぅん、と小さく考え込んだあと、漸く御伽は口を開いた。

「そうだねぇ…今日何日だっけ?」
「二月二十八日だろ。今日で二月終わりだな」
「そっか、じゃあ今日だ」

まるで自身の名前を名乗るときのような軽い声で、御伽は手を合わせた。
対照的に、本田は面食らったように「……あ?」と顔を歪めている。
そういえば今日だったなぁ、と本当にどうでもいいように頭を掻く隣の男の鞄を、本田が思い切り引っ掴む。御伽はそのまま後ろに倒れそうになったが、足を踏ん張って耐えた。

「なにすんのさ」
「今日なのかよ!何で他ん奴に言わねんだよ!」
「言う程の事じゃないだろ、誕生日なんて。僕が自分の誕生日が来てはしゃぎ騒ぐような人間だと思う?」

言い方に少しだけカチンと来たが、取り敢えず睨むだけで何とか抑える。確かに彼は騒ぐなんてキャラではないが、誕生日くらい祝って欲しいと思うものではないのか。流石に城之内程とは言わない。少しはそんな素振りを見せてくれたら、プレゼントは無くとも祝いの言葉くらいは皆から貰えただろうに。
そんな不思議な不満が彼の中に渦巻く中、当の人物はのんびりと「コンビニに着いたよ」と店内へ入っていく。
自分で誘っておきながら、渋々と本田も店の扉を押した。
店内はいつもより静かだった。時間帯のこともあって、客があまりいない所為だ。
付いて来いといったのは自分なのに、いざ来たとなると特に買うものが思いつかない。最近口の堅くなってきた財布からなけなしの金を出して菓子を買う気には如何にもなれず。目の前に並ぶ菓子を睨み付けた。
一方御伽はというと、小さめのケーキを持ってレジへ並ぶところだった。

「…おっ前、どうでもいいとか言いながら結局ケーキ買うんじゃねぇか」
「自分を祝うくらい良いだろ。僕は他人に祝われたこと無いから」
「言えば良いじゃねーか」
「やだよ。別に祝って欲しい訳でもないし」

彼の態度にもやもやする。
御伽が会計をしている隣のレジに並び、一つだけ注文した。
窓から空をちらりと見ると、外は先程よりも暗い。といっても足元はまだ見える程度には明るい。同時にコンビニから出て、再び隣に立って歩き始めた。
がさがさとコンビニの袋が鳴る音を耳に入れながら、御伽が本田に問いかける。

「何買ったの?」
「肉まん」
「ああ、コンビニの肉まんっておいしいよね」

早くも袋を破きながら温かなそれを露にする。火傷しそうな熱が指に伝わってきて、冷えた指には丁度良いと思いながら肉まんを半分に割る。
俺は半分に割って食うのが好きだ、と意味も無く呟く。一瞬きょとんと目を丸くした隣の男は、しかし直ぐに僕も同じだ、と笑って言った。
割った片方を彼の目の前に差し出す。再び彼の目が丸くなった。

「やるよ。ハッピーバースデー御伽くん」
「え、えぇー…、別に気遣わなくていいよ」
「いいんだよ。初めての他人からの誕生日プレゼント有難く受け取っておけ」

半ば無理矢理御伽の手に半分の肉まんを押し付ける。本田を見つめて困惑した表情を崩さないまま、御伽は躊躇いながら仄かに暖かいそれに口をつけた。

「…っうわ、もう冷たくなってる…」
「ほらお前が早く食わねぇから」
「僕の所為じゃないと思うんだけど……うん、まあいいよおいしいから…」
「うまいんだろ?なら良いじゃねぇか」
「うん………うん、ありがとう」
「おー」



殆ど祝われたことなんて無かったし、別に祝って欲しいなんても思ってなかったのだ。
だけどやっぱり、祝ってもらうのは嬉しかった。


――――――――

滑り込みできなかった御伽はっぴーばーすでー!
なんか御伽って自分のことはどうでもいいって思ってるイメージがある。何故だ
取り敢えず本田と仲良くしてると可愛いよねって話だよ
PR
Comment
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Trackback
トラックバックURL: