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2026年06月13日
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冷たい=温かい

2010年08月20日

ある夏の暑い日のことだった。


生徒会室を占拠し、誰もが羨むような大きいソファにだらりと寝そべっているのは、我らがリーダー・鬼柳京介。
ワイシャツもネクタイも全て生徒会長専用の机の上に乱雑に投げ捨ててあり、彼は今タンクトップ一枚というみた限りでは涼しそうな格好だった。
当の鬼柳は、全く涼しそうではない、今にも死にそうな顔であらぬ方向を虚ろな目で見つめ続けている。
向かいの一人用のソファには、ひたすらにパソコンの画面を見ながらカタカタと何かの作業をしている生徒会役員の一人、不動遊星。
無表情でパソコンを見つめている。特に生徒会の仕事をしている訳ではない。彼の趣味である機械のあれこれだとか設計図だとか、そんな感じのものが小難しい説明と共にパソコン画面に映っている。
真剣な顔で一点から瞳を動かさない遊星は、熱さを感じているのかというほど涼しい顔だった。

「……遊星よぉ……」
「どうした、鬼柳。」
「暑くねぇか…」
「……ああ、暑い。」

京介の問いかけに応えるのと同時に、遊星は作業をやめてノートパソコンを閉じた。そして、ふぅと小さく息をついてから額を軽く拭う。集中が切れた瞬間に、汗がどっと出てきたようだ。
窓を開けても風は入ってこない。カーテンを閉めて日差しを遮ってみても、何だか蒸し暑く感じる。生徒会室に唯一あるクーラーは、なんと壊れていた。今日京介がごちゃごちゃと弄ったら、見事にクラッシュしたのだ。
直るのは明日だと、校長に言われた。

「ねーよ……ねーよ!!この蒸しあっつい日にクーラーねぇとかねーよ!!」
「鬼柳……お前がやったんだぞ。」

がっくりと項垂れる京介に「鬼柳の気持ちもわかるが」そう遊星は思った。。京介だってわざと壊した訳じゃない。クーラーの調子がちょっとおかしいと気付いて、確認してちょこっと弄っただけなのだ。

「でも、それなら学校に居るよりも家に帰った方がいいんじゃないか?」
「この強い日差しに耐えて無事に帰れるとは思えねぇ。水分全部持って行かれて明日の朝干からびて発見されたら嫌だ。」

「だから俺は太陽が弱くなるまでここに居る!」と京介は高らかに宣言した後、ソファの後ろの床に寝転がってゴロゴロと転がり始めた。
床が以外と冷たい!と呟く声が聞こえて、とりあえず鬼柳が落ち着いて良かったと小さく思った。
遊星もネクタイを緩め、ワイシャツを第二ボタンまで開け、襟を掴んで自身の体に風を送る。
戸の外から微かな足音が聞こえた。それは次第に大きくなり、生徒会室の前まで来て止まる。がらりとスライド式の戸が開くと、二人の生徒の姿が見えた。異常に背の高い長身の青年と、それに比べて頭一個分違う小柄な青年。
小柄な青年、クロウ・ホーガンは、生徒会室に入るなりネクタイとワイシャツを投げ捨てた。

「あ゛ぢいぃぃぃいいぃっ!!今日何度まで上がるって言ってたっけ?!」
「32度。」
「ねーわ……マジねーわ…って鬼柳お前何してんだよ!」
「床って意外と冷たいんだぜ!クロウも一緒に寝転がろうぜ!」
「馬鹿、いくら冷たくても汚いだろーが!ほら、さっさと立てって!」

ぶーぶーと文句を言う京介の腕を引っ張って立たせているのを尻目に、遊星はもう一人の青年に話しかける。

「お帰り、ジャック。」
「ふん。ほら、お前達が飲みたがっていたのはこれか?」

ジャックと呼ばれた長身の青年は、手に持っていたビニール袋から一本のペットボトルを出す。遊星はペットボトルをじっと見て、そうだと小さく頷いた。
四人の中では、売店へ行くのが当番制になっている。みんな平等になるように、という京介の配慮からだ。今日の当番はジャックとクロウ。遊星と京介は留守番だった。

「飲み物?飲み物か?!天からの恵みか?!」

京介が目を輝かせながら立ちあがった。
ジャックの持っているビニール袋を漁り、入っていた好きな炭酸料を見つけ、素早く蓋を開けて一気に喉に流し込み始める。
その光景に呆れながら、ジャックは遊星が求めていた飲み物を袋から取り出し、彼に差し出した。
ありがとうと礼を言ってペットボトルを受け取るとき、ふと感じた。

「……ジャックの手、冷たい。」
「あぁ…クロウと共にアイスボックスの中に手を突っ込んでいたからな。」

そうだとしてもここまで戻ってくる間に熱が元に戻っているだろう。それでもまだ残るこの気持ちよい冷たさ。思わず遊星はジャックの右手の甲を両手で掴んだ。
それに便乗して京介もジャックの左手を掴む。「本当だー!」という京介の反応に、クロウも少し遠慮がちにジャックの手首に触れてみる。手首もひんやりと気持ちが良かった。群がられているジャックは、少し険しい顔をしていたが。

「ジャックって体温低いみたいだな」
「俺なんてすぐに熱くなるぜー今もムカつくほどホッカホカだ」
「オコサマ体温なんじゃないのか」
「なんだとこの野郎!!」

キィィ!!と取っ組み合いを始めたジャックとクロウを見ながら、京介は思いついたように遊星に言う。

「そういやさ、手が冷たい奴って心が温かいって言うよな。」
「…そうなのか?」

迷信だろうなと遊星は思ったが、なんとなくお互いに手を出しあって、握ってみる。
「遊星の手は……なんだ、ちょっとぬるい。」と微妙な答えだったが、鬼柳の手は、温かかった。
熱い、わけではない。ほんのりとした、本当に『温かい』と感じるような。

「鬼柳の手は…温かいな。」
「……そう、か?じゃあ俺って本当は性格悪いのかなぁ。」

結構いい人間だとは思ってんだけど、とすこし困り気味に笑う。
ああ、やっぱり迷信にすぎない、頭の中にそう浮かんだ。

「鬼柳は冷たい奴なんかじゃないさ。」
「…遊星。」
「手が冷たくて心が温かい奴もいれば、手が温かくて心が温かい奴だっている。」
「……そうか!」

京介はにこりと笑う。つられて遊星もふっと笑った。
そして、京介はソファに乗り上げて声高らかに叫んだ。

「よっしゃあぁぁ!チームサティスファクション!これくらいの暑さでバテてるようじゃ満足できねぇぜ!!」

一番バテていたのはお前なんだがな、そう思いながら、いつの間にか取っ組み合いをやめて京介に呆れた視線を投げているジャックとクロウに交じって、遊星は苦笑して京介を見た。


ある夏の暑い日のことだった。


――――――――

なげぇ^q^
とりあえず満足チームのほのぼのした話を書きたかったんだけど、微妙な…
まぁとにかく四人が仲良くしてればそれで良いぜ!
タイトルについて:冷たいと温かいって結局は同じ感情なんだよと思った。全然違うよ……

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