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2026年06月13日
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保父さんの黒子が消防士火神に恋をする話(黒バス:黒火黒)

2012年11月04日
・IFの世界っぽい
・展開が結構こじつけがましいうえに割とぐだぐだ
・黒子っちが結構乙女です
・黒火で火黒










 
 
僕がキセキ幼稚園に勤め始めてから半年経ったある日、その出来事は起こった。

午前中は真っ青に晴れ渡っていた空は、午後から不穏な天気へと変わっていた。灰色の雲が空を覆い、今にでも雨が降ってくるのではないかと思った。
それでも子供達は屋内で元気に遊んでいて、僕も子供達の相手をして空の天気など忘れていた。
お昼寝の時間に、一人一人の頭を撫でながら寝かしつけていると。

―――ピシャアッ!!

きゃあ、と複数の女の子が悲鳴をあげた。僕も反射的に肩を震わせたが、雷が鳴ったのだとすぐにわかった。閉めきっていたカーテンを少し開けると、ゴロゴロと音が聞こえ、青空は完全に姿を消していた。黒い雲の間を時々雷と思わしき光がちらつく。
さっきの雷は結構近くに落ちたのだろうか。子供達を大丈夫ですよとあやしながら、後で天気予報を確認しておこうと思った。


それから、子供達が眠る部屋の心地好い空気にうとうとしていると、再び雷が鳴った。ごろごろ、ぴしゃあん、これの繰り返しで、いい加減僕もその場から離れて自分の仕事に戻ろうと立ち上がる。
また雷が鳴った。音が大きいことが、割りと近くで鳴っていることを教えてくれる。外で木が反り返っているところを見ると、風も相当強い様だ。これ以上荒れた天気にならなければいいなぁと思いながらようやく仕事に手をつける。
その時だった。
一際強い光がカーテンに差し込んだと思った刹那、これまで以上に大きい音と、バァン!!という何かが叩きつけられたような音。
近くに落ちたことは明らかで、一体何事かと僕は窓の外を見る。

「……!」

幼稚園のすぐ傍に立っている長寿の木が燃えていた。
風に煽られてごうごうと燃える炎が、周りの木にも移っていく。
この木に雷が落ちたのだと理解した僕は、他の先生に知らせなければと屋内に戻ろうとした。
バキバキ、という不穏な音が耳に届き、走らせようとした足は止まる。振り向いたら、焦げて真っ黒になった大樹はぐらりと支えを無くして、炎を纏ったまま倒れた。
幼稚園に向かって。
目の前の光景に、一気に血の気が引いた。

「――皆さん!!逃げなさい!!早く!!」

お昼寝中の子供達には聞こえていないだろうとは思ったけど、叫ぶのが精一杯だった。








事態は一気に最悪だ。
燃える幼稚園とか、泣き叫ぶ園児達とか、相変わらず鳴り続ける雷だとか。炎の回りが以外にも早く、消防車の到着までに半分は火の海だ。しかも風が強いせいで炎は勢いを増していく。

「おい、テツ!」

声の方向を振り返ると、そこにいたのは幼稚園のすぐ近くにある交番に勤務している昔馴染みの友人の姿だ。

「青峰くん」
「おいおいえらいことになってんじゃねーか…ガキ共は無事か?」
「今、確認してます」

少し怖いイメージを持たれる青峰くんだが、本当は優しいお兄さんで、よく子供達と遊んでくれる。

「て、テツくん!テツくん!!」

慌てたように走ってくるのは桃井先生で、青峰くんの姿を見るなり泣き出してしまった。

「だ、だい、大ちゃあぁぁん!うええぇぇん!!」
「うわっ、さつき?何だ、どうした?」
「どうしました?」
「た、たかしくんがいないの…!あの子、お昼寝の時間いつも勝手に抜け出すから、もしかしたらまだ中に…!」

ガシャン、と幼稚園が崩れる。
あの中に取り残された子供が一人居る。
二人の止める声も聞かず、僕は炎に向かって走り出した。

「危険です!近付かないで!」
「中にまだ一人子供が居るかもしれないんです!助けなくては…!」
「駄目です、危険です!」
「っ子供を見放せと言うんですか!!」

その時、首根っこを掴まれて後ろに引きずり戻される。青峰くんだ。

「落ち着けテツ!今もう一台消防車が来たから、アイツらに任せとけ」
「火が消えるまで?何時になるか判らないのに?あの子は今も僕達に助けを求めているかもしれないんですよ?早く、早く助けなければ、青峰くん、離してください」

僕は、僕達は園児達を守る義務があるのです。守るためにここに居るのです。命を投げ出してでも守らなくてはいけないのです。
半分泣きそうになりながらもがいていたら、不意に後ろから軽い力で頭を叩かれた。
青峰くんかと思ったのに、僕の肩を強く掴んで正面に回ってきたのは全く知らない人だった。
彼の瞳は、背景で燃えることをやめない炎のように真っ赤に輝いていた。

「命を投げ出すとか、簡単に言うんじゃねぇよ。中に居る子供をお前が助けたとして、そこでお前が死んだらどうする?子供には、迎えてくれる奴が必要なんだよ。お前が死んだら、もっと傷付くんだ。大丈夫だ、子供は絶対助けるから。お前はアイツを待っててやれ。そんで思い切り抱き締めてやるのが仕事だ。いいな?」

でも、必死に助けようとした姿はかっこよかったぜ、先生。
赤い目の彼は砂場に取り付けられた水道の蛇口から水を捻り出して、ホースのまま全身に浴びる。そのまま幼稚園に突っ込んでいった。
名前も知らないその人の背中を見送ることしかできなかった僕は、ただぽかんと呆けていた。

「来たのがアイツで良かったな」
「え?」
「絶対助けるから、火神は」

青峰くんから伝えられた火神というのが彼の名前らしい。
未だに燃え続ける火を、消防団が必死に消化活動を続けている。待っているだけなのはもどかしく正直居ても立ってもいられないのだけど、僕は火神さんの言葉を信じようと思えた。
強い瞳に惹かれたのだ。



永遠のような永い時間に思えた中、火の中に黒い影がぼんやりと浮かぶ。
僕の足は勝手に動いていて、子供を抱えた火神さんに駆け寄る。
体格の大きい彼に抱えられた子供の姿はいつもよりも小さく見えて、ぐったりしている体に泣きそうになってしまう。名前を呼び掛けて頬を撫でたら、普段からは考えられないような高すぎる体温で驚いた。
大丈夫だ、ちゃんと生きてる。安心させるような声に顔をあげると、火神さんは目を細めて得意そうに笑っていた。
その笑顔が眩しくて、その姿が輝いて見えて、僕の心臓が高鳴った。

「―――危ない!!」

桃井先生の声が響いたかと思った瞬間、視界が反転する。背中に当たる衝撃に眉をしかめたけど、次にはがしゃん、バキンと次々に何かが壊れる音。幼稚園が崩れたのだ。僕は火神さんに抱えられるように地面に倒されていた。
子供と僕に覆い被さって守るみたいに頭を抱き締められる。火の粉は全部火神さんに降り注ぐ。
先程まで火の中にいた火神さんは火傷しそうなくらい熱かった。








「緑間んとこに連絡しといたぜ。今すぐ手当てしてくれるってよ」
「ありがとうございます、青峰くん」

幸い軽い火傷だけで済んだたかしくんを桃井先生に任せ、僕は園児の親御さんに連絡を入れていた。青峰くんも自分の仕事だということで、緑間くんに連絡を入れた後すぐに幼稚園身辺の見回りに走って行った。
ようやく勢いが消沈した炎は、幼稚園の殆どを灰にしてしまった。それでも子供達が全員無事だったという方が大きかった。

「ありがとうございました」

彼が居なかったら、一つの大切な命が失われていたかもしれない。そう思うと、お礼を幾ら言っても足りなかった。
貴方のお陰でみんな救われました。子供も、僕も。
火神さんは顔を洗う手を止めて僕を見たあと、ちげーよと首を振った。

「あの子が頑張ったから助かったんだ。あんな灼熱地獄の中、体力も持たねーだろうに俺のことを必死に呼んでくれて、そのお陰で見付けられた。アイツのこと、もっと褒めてやってくれよ」

それにアンタも。
火神さんは目を細めて笑った。さっきもこうやって笑っていた。優しい笑みに目が釘付けになる。彼は僕より頭一個分大きかった。だから簡単に僕の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。
僕はそんなことをされる理由がわからなくて、目を丸くしながら彼を見た。

「先生は子供を助けに行こうとしただろ。貧弱そうに見えたけど、全然そうじゃねえんだなって。オレ、アンタを尊敬するよ」

か、と顔が熱くなった。
逞しくて武骨な手のひらが僕をぐりぐりと撫でる。それが驚くほどに恥ずかしくて、僕は返事をすることを忘れていた。
ふ、と手が離れていく。温かい手の感触が頭から消えて、あ、と思う。
火神さんの視線は、見回りから戻ってきていた青峰くんに向けられていて、どうやら二人は知り合いらしかった。手をあげた青峰くんに答えるように同じく手を振って彼に歩み寄る。少しの寂しさを頭に感じながら、僕は火神さんの後ろ姿を見つめていた。
二人が気兼ねなく会話をしているのが羨ましく思えた。勿論青峰くんは友人だから僕だって楽しく話すことができる。だから必然的に僕が羨ましいのは青峰くんが火神さんと仲良く話せていることになる。

(…あ)

彼が帰ってしまう。
慌てて二人に駆け寄って、火神さんともう一度だけ言葉を交わそうと思った。

「あの、」
「ん?」
「今度、改めてお礼がしたいです」
「良いよ別に。当然のことしただけだしな」
「僕の気が収まりません。お名前を教えてもらえますか」

律儀だな、と火神さんは今度は子供みたいに笑った。そんな顔でも笑うんだ。瞬間的に、かわいいなと思ってしまったのは内緒です。

「火神大我!また今度な、黒子先生!」

大きく伝えられた彼の名前と、予想外に呼ばれた僕の名前。
あとに聞いたら青峰くんが教えたらしいのだけど、何であの人が僕の名前を、なんて思えるほどの余裕がなかった。
暗くなった辺りに彼だけが眩しいくらいに煌めいて見えて、まるで太陽みたいだった。
心臓がうるさい。
頭から火神さんの笑顔が離れない。

「…青峰くん」
「あ?」
「恋をしました」
「…は?」

青峰くんは変な顔をしたけど、僕はそれが気にならないくらいに気分が高揚していた。
撫でられた頭を擦りながら、火神大我さん、と彼の名前を繰り返した。


20121104

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