忍者ブログ

[PR]

2026年06月13日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

僕にだって守れる

2011年05月23日

此処は何処だろう。
ぼやける視界の中、キールに届いたのは土の臭いと微かな血の臭い。息を吸おうとしたら、喉と肺が悲鳴を上げるかのようにじりじりと痛んだ。
力が入らない腕で、地面に手を付く。腕もびきりと痛んで、再び地面に倒れこみそうになるが、何とか耐えた。
白い学生服に付いた土埃を手で払う。自身の杖が近くに落ちていて、腕を伸ばしてそれを掴んだ。手が届く範囲にあったことはラッキーだと思った。今の自分は、歩けないくらいに足が震えている。
何故こんな事になっているのか、いつもなら簡単に高速回転する頭が全く回らなかった。
声がうまく出ない喉の奥から、何とか一言搾り出す。

「……ヒー、ル」

彼の周りに光が集い、痛んでいた腕や頭が軽くなる。
喉の焼けるような痛みも消えていて、とりあえずは一安心だと息をついた。
大分冷静になったキールは、初めて自身の周りをしっかりと見回した。
まだ空は明るいのだろうが、深い木々に囲まれていて辺りは暗い。それから、近くにあった大きな木を見上げると、枝が盛大に折れた跡がいくつも残っていた。
目の前は崖。もしかして、僕はここから落ちたのだろうか、と若干納得が出来ない思考を巡る。
どうして僕が落ちたのか、とか、僕一人なのか、とか―――

後ろを振り向いたとき、緑の地面にうつ伏せに横たわる、紅が見えた。

「…っリッド?」

返事はない。動く気配もなく、まるで。
キールはそれ以上考えることをやめ、杖をついて立ち上がる。まだ足の震えは止まらなかったが、そんなことを構っている暇はなかった。
よろよろと覚束ない足取りで、名前を呼んだ少年の近くまで歩く。
歩きながら辺りを見回したが、他の仲間がいなかったことに少しばかり安堵する。どうやら上から落ちたのは自分とリッドだけらしい。
声を掛けながら肩を揺さぶるが、やはり反応はない。少しずつ焦りが生まれてくる。彼の左腕に大きな切り裂き傷があり、もう血は止まっているのだろうが、広い範囲で緑が赤く色づいている。出血が酷かったのは目に見えていた。
普段は(少し悔しいが)頼りになる大きな背中。その背中が、今は動かない。ぞっとした。
もう一度回復術を唱えようとするが、杖を構えた瞬間、酷い疲労を覚える。目の前がぐらつく。
荒く息を吐きながら、もう一度リッドを見据えた。

(僕が、何とかしないと)

ここに居るのがファラならば、自分が傷ついていても疲れていても、きっと僕たちを運んでくれるだろう。
安全な場所に。
キールは体力がない上に力もない。リッドに担がれることはあっても、リッドを担いだことなんてない。
でも、とキールは拳に力を込める。
ぐい、とリッドの腕を自分の肩に回した。だらりとした彼の身体の重みが伝わってくる。ずしりとした重みに、体が斜めに大きく傾く。顔に力を入れて、足を踏ん張らせた。なんとか斜めのまま止まる。
歯を食い縛り過ぎた所為で歯軋りが生まれた。頭の中に浮かんできた弱音を無理矢理押し込めて、漸く足を一歩だけ動かす。どっと汗が吹き出たような感覚だ。
肌から伝わる、冷め過ぎた体温。
腕を掴む手に力を込めた。

「死なせてたまるか」

独り言のように呟く。

「早く目を覚ませよ、馬鹿」

一歩ずつ、確実に進む足。
そのうち彼女達が助けに来てくれるかもしれない。でも、それを待っているのは駄目だ、と思った。
額に浮き出た汗を乱暴に拭いながら、キールはもう一度指に力を込めた。


――――――――

リッドを守るキール、に少しときめきを覚えた。全然守ってないけど
本当はモンスターと戦ってるとき、リッドがキールを守ってその拍子にうっかり崖から転落、って設定だったんだけど、長くなりそうだから削った
何処までも友情なキルリキル萌。

PR
Comment
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Trackback
トラックバックURL: