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2026年06月13日
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Permit for only a short while.
2011年03月29日
漸く部屋に帰ってきたときには、いつも真っ先に目に映る輝く金の髪の姿は無く、ジューダスは少しだけ瞳に落胆の色を落とす。しかしすぐに緩く頭を振ると、彼の居ないこの部屋に用は無いと言わんばかりに、他の者に目もくれず部屋を出て行った。
彼は居ずとも、その兄貴分である銀糸の長身男とふわりとした桃色の少女は滞在していた。戻ってきてすぐ自分たちに背を向けた黒衣の少年に、二人は少しきょとんとしながら目を合わせた。
「なんだあいつ。」「さぁ…?」という短い会話は、ジューダスには届かなかった。
当ても無くふらふらと歩き続ける。彼は何処だろうか。居ないということはそれこそ他のメンバーと共に依頼をこなしに行ってるとしか考えられないのだが、何故だかそれだけで酷い焦燥感に襲われる。
自分の見えていないところで怪我でもしていたらどうしよう、などというらしくない思想に、小さく自嘲気味に笑った。そうだ、僕が心配する程あれは子供ではない。長く共に居る所為か、とうとうロニの過保護癖が此方にまで移ってしまったのか、そう思うと無意識に溜息が出る。
あの金糸を見ないと落ち着かない。遠くからでも良い。帰ってきた彼が元気良く自分に「ただいま!」と笑っている姿を頭に浮かべて、やはりすぐに頭を振ってその姿を消した。
しゃべり掛けなくて良い。此方に意識を向けなくても良い。ただ見守ることができれば。
「ジューダス!」
ふっ、と沈みかけていた思考が浮き上がってくる。
振り向くと、自分とは正反対の、太陽のような輝きが眩しくて目が痛かった。数回だけ瞬きを繰り返して、これは太陽ではない、自身が求めていた金糸。
それも違う。求めていた、その輝きとはまた違う煌き。『彼』とは髪の長さが違う、背丈も年も違う、しかし金の髪と顔立ちはほぼ同じで、まるで兄弟を、親子を思わせるような。
「……、スタン……」
何とか搾り出した言葉は彼の名前だけで、あとは全て喉の奥から出てこなかった。
息が詰まる。ジューダスにとって、スタンの傍に居ることは『彼』の隣に居ることと同じくらいに幸せな事であり、しかし唯一違う所といえば、酷く苦しいという事。『彼』の隣に居るときには感じることなど無かった、苦しみと痛みが同時にやってくる感覚。
そんな感情に小さく舌打ちをしながら、能天気に笑いながらジューダスの傍に歩いてくる金色の足元を見つめる。表情をしっかりと見れないほどに動揺している自分が嫌になった。
「何してるんだ?こんなところで」
「………カイルを……見なかったか」
「カイル?それならライとリオンとさっき出て行ったよ」
リオン。よりによってあの少年と。あのディセンダーは時にしなくても良い余計なことをする。どんな意図があってその二人を連れて行ったのかは知らないが、ジューダスの中で何とも言えない不満が募る。
仮面を被っているから表情は見えないだろうと踏んでいたのだが、スタンは小さく首を傾げ、「ジューダスは」と口を開いた。
「リオンの事が嫌いなのか?」
少しだけ寂しそうな物言いに、漸くジューダスは彼の顔をしっかりと見た。「ジューダスはリオンの話をする時、いつも不機嫌そうになる」、先程の寂しげな声は何処へやら、きょとんとしたような、何となくな思いつきでしゃべったような、そんな表情をしていた。
(この馬鹿がそんなに聡い筈が無い)と思いながらも、ジューダスの心臓はばくばくと音を立てていた。
同時に、そんなにも奴に向かって感情を露わにしているのかと自身を叱責した。
何でもないように、再びスタンからふいと顔を背ける。
「……そんな訳が無いだろう。僕は、あの馬鹿が迷惑を掛けていないか心配なだけだ」
「へぇ。ジューダスって優しいんだな」
優しい?優しいって何だ?
「何故そうなる」
「だって、いっつもカイルの心配してるだろ?カイルがジューダスはすごく良い奴だって言ってたけど、やっぱり本当だったんだな!」
にぱ、と満面の笑顔を向けられ、ジューダスはうろたえる。再び、胸が痛くなる。
やめてくれ、僕にはその笑顔を向けられる資格が無い。
僕は、ただの
「……裏切り者だ」
「ジューダス?」
「僕は裏切り者だ。良い奴なんかじゃない。僕のやっていることはただの償いで、自己満足だ…」
こんなことを言うつもりは無かったのに。自然と口から零れてしまった言葉を今更飲み込めもせず、全て搾り出したあとに後悔と自身への怒りしか生まれなかった。
自分たちの世界のことをあまり口にするなとカイルに言ったのは自分だ。それを自分自身がべらべらと口にするなど、許されないと言うのに。
あいつ等と出会うことさえも、本当は許されない事だと言うのに。
「でもジューダスはカイル達を裏切った訳じゃないんだろ?」
なら大丈夫。ジューダスは悪い奴なんかじゃないよ。
先程の能天気な笑顔ではなく、安心して良いよと言っているような、優しくて綺麗な笑顔。
どうしてそんなことを言うのか、ジューダスには理解ができなかった。どうして少しでも不信感を持ってくれないのか、ジューダスにはそれが苦しかった。
彼の笑顔が、苦しかった。
「…お前は、どの世界でもお前のままなんだな」
ポツリと呟いた後しまったと思ったが、「え?」と聞き返すスタンを見て、聞こえていなかったことに安心する。
彼はこういう人間だったな、小さくそう思った。
スタンがスタンのままで居ること、それが嬉しかった。
胸の痛みが和らいだ。無くなった訳ではない。この胸の痛みは、自分の罪の重さだ。消える筈が無い。
この小さい瞬間だけでも、彼の隣に再び並べるこの幸せの余韻を味わっていたいと思った。
スタンを裏切った自分に、その資格がないと分かっていたけれど。
――――――――
ジュカイと見せかけたジュスタ
彼は居ずとも、その兄貴分である銀糸の長身男とふわりとした桃色の少女は滞在していた。戻ってきてすぐ自分たちに背を向けた黒衣の少年に、二人は少しきょとんとしながら目を合わせた。
「なんだあいつ。」「さぁ…?」という短い会話は、ジューダスには届かなかった。
当ても無くふらふらと歩き続ける。彼は何処だろうか。居ないということはそれこそ他のメンバーと共に依頼をこなしに行ってるとしか考えられないのだが、何故だかそれだけで酷い焦燥感に襲われる。
自分の見えていないところで怪我でもしていたらどうしよう、などというらしくない思想に、小さく自嘲気味に笑った。そうだ、僕が心配する程あれは子供ではない。長く共に居る所為か、とうとうロニの過保護癖が此方にまで移ってしまったのか、そう思うと無意識に溜息が出る。
あの金糸を見ないと落ち着かない。遠くからでも良い。帰ってきた彼が元気良く自分に「ただいま!」と笑っている姿を頭に浮かべて、やはりすぐに頭を振ってその姿を消した。
しゃべり掛けなくて良い。此方に意識を向けなくても良い。ただ見守ることができれば。
「ジューダス!」
ふっ、と沈みかけていた思考が浮き上がってくる。
振り向くと、自分とは正反対の、太陽のような輝きが眩しくて目が痛かった。数回だけ瞬きを繰り返して、これは太陽ではない、自身が求めていた金糸。
それも違う。求めていた、その輝きとはまた違う煌き。『彼』とは髪の長さが違う、背丈も年も違う、しかし金の髪と顔立ちはほぼ同じで、まるで兄弟を、親子を思わせるような。
「……、スタン……」
何とか搾り出した言葉は彼の名前だけで、あとは全て喉の奥から出てこなかった。
息が詰まる。ジューダスにとって、スタンの傍に居ることは『彼』の隣に居ることと同じくらいに幸せな事であり、しかし唯一違う所といえば、酷く苦しいという事。『彼』の隣に居るときには感じることなど無かった、苦しみと痛みが同時にやってくる感覚。
そんな感情に小さく舌打ちをしながら、能天気に笑いながらジューダスの傍に歩いてくる金色の足元を見つめる。表情をしっかりと見れないほどに動揺している自分が嫌になった。
「何してるんだ?こんなところで」
「………カイルを……見なかったか」
「カイル?それならライとリオンとさっき出て行ったよ」
リオン。よりによってあの少年と。あのディセンダーは時にしなくても良い余計なことをする。どんな意図があってその二人を連れて行ったのかは知らないが、ジューダスの中で何とも言えない不満が募る。
仮面を被っているから表情は見えないだろうと踏んでいたのだが、スタンは小さく首を傾げ、「ジューダスは」と口を開いた。
「リオンの事が嫌いなのか?」
少しだけ寂しそうな物言いに、漸くジューダスは彼の顔をしっかりと見た。「ジューダスはリオンの話をする時、いつも不機嫌そうになる」、先程の寂しげな声は何処へやら、きょとんとしたような、何となくな思いつきでしゃべったような、そんな表情をしていた。
(この馬鹿がそんなに聡い筈が無い)と思いながらも、ジューダスの心臓はばくばくと音を立てていた。
同時に、そんなにも奴に向かって感情を露わにしているのかと自身を叱責した。
何でもないように、再びスタンからふいと顔を背ける。
「……そんな訳が無いだろう。僕は、あの馬鹿が迷惑を掛けていないか心配なだけだ」
「へぇ。ジューダスって優しいんだな」
優しい?優しいって何だ?
「何故そうなる」
「だって、いっつもカイルの心配してるだろ?カイルがジューダスはすごく良い奴だって言ってたけど、やっぱり本当だったんだな!」
にぱ、と満面の笑顔を向けられ、ジューダスはうろたえる。再び、胸が痛くなる。
やめてくれ、僕にはその笑顔を向けられる資格が無い。
僕は、ただの
「……裏切り者だ」
「ジューダス?」
「僕は裏切り者だ。良い奴なんかじゃない。僕のやっていることはただの償いで、自己満足だ…」
こんなことを言うつもりは無かったのに。自然と口から零れてしまった言葉を今更飲み込めもせず、全て搾り出したあとに後悔と自身への怒りしか生まれなかった。
自分たちの世界のことをあまり口にするなとカイルに言ったのは自分だ。それを自分自身がべらべらと口にするなど、許されないと言うのに。
あいつ等と出会うことさえも、本当は許されない事だと言うのに。
「でもジューダスはカイル達を裏切った訳じゃないんだろ?」
なら大丈夫。ジューダスは悪い奴なんかじゃないよ。
先程の能天気な笑顔ではなく、安心して良いよと言っているような、優しくて綺麗な笑顔。
どうしてそんなことを言うのか、ジューダスには理解ができなかった。どうして少しでも不信感を持ってくれないのか、ジューダスにはそれが苦しかった。
彼の笑顔が、苦しかった。
「…お前は、どの世界でもお前のままなんだな」
ポツリと呟いた後しまったと思ったが、「え?」と聞き返すスタンを見て、聞こえていなかったことに安心する。
彼はこういう人間だったな、小さくそう思った。
スタンがスタンのままで居ること、それが嬉しかった。
胸の痛みが和らいだ。無くなった訳ではない。この胸の痛みは、自分の罪の重さだ。消える筈が無い。
この小さい瞬間だけでも、彼の隣に再び並べるこの幸せの余韻を味わっていたいと思った。
スタンを裏切った自分に、その資格がないと分かっていたけれど。
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ジュカイと見せかけたジュスタ
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